赤字国家に召喚されたので、まずは売却から始めます──でも断られたので価値を爆上げして帝国に頭を下げさせることにしました【TOP3入り感謝】

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第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する

第二十一節:ヴェステラへの帰路(中編)

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 荷馬車の車輪が、乾いた街道に一定のリズムを刻んでいる。

 頭上には真昼の太陽。時折吹き抜ける風が幌を揺らし、陽射しの熱をやわらげてくれた。

 加賀谷は帆布を持ち上げ、道の先に見える街並みをじっと見つめている。

「……戻ってきたな。自由都市ヴェステラ」

「だいぶ疲れたよ」

 隣で麦藁帽子をかぶったジルが、半分眠たそうな声でそう言った。

「そういえば、別れ際にレオンさんと何を話してたの?」

「え? ああ、……レオンの。投資議会の開拓が順調なんだ。50都市くらいが議会に加わる」

「すごい数だな……。でも、カガヤさん。そもそも何で“ファンド”なんて仕組みを、最初にやろうと思ったの?」

 ジルの問いに、加賀谷は幌の内側へと視線を戻す。

「理由は簡単だよ。金ってのは、信用で動く。でも昔の世界じゃ、信用は“家”とか“血”で担保されてた。貴族とか名家とか、そういう連中な」

「だから相続で受け継がれて、財産も全部身内のもんになって……って感じだよな」

「でもそれじゃ、“挑戦する奴”に金は回らない。だから、血筋じゃなくて“理念”や“企画”に金を投じられるようにした。それがファンドだ」

「つまり……応援したいって思える事業とか人に、投資できる仕組み?俺たちがソーシングの時に出会った人たちに個人単位でも支援できるってこと?」

「そう。そして投資した側には、ちゃんと利益が返ってくる仕組みも用意した。信頼と見返りの循環がなければ、信用は育たないからな」

「そっか……だから“共栄連合”って名前なんだ」

 ジルがぽつりと呟いた。

 加賀谷は少しだけ微笑んで、続ける。

「そして、これからやるのは――もっとでかい。“公開株式制度”ってやつだ」

「聞いたことあるけど、ファンドとどう違うの?」

「ファンドは“まとまった金”を運用する仕組み。だけど株式は、“資本そのもの”を小口に分けて、自由に売り買いできるようにする」

「えっ……じゃあ、誰でもその“株”ってやつを持てるの?」

「ああ。農民でも、異国の商人でも、可能になる。ある企業や都市、あるいは個人の“未来の儲け”を小さく切り分けて、“証”にして売る。それが株だ」

「なるほど……でもそれ、危なくない? 失敗したらお金が消えるんじゃ」

「だからこそ“有限責任”って概念が要る。出資者は、損しても出した金まで。命や家まで持ってかれる心配はない」

「安心してお金を出せる仕組み……か」

「そう。それがあるからこそ、人は挑戦に金を出せる。金は血よりも、夢に集まるようになる」

「すごいな……。血筋じゃなくて、志とか信頼で世界を作り直そうとしてるのか?」

「作り直すというより、“そういう世界”を一つここに置いてやるのさ。そしたら他が勝手に変わる」
 
 ジルは荷馬車の天井を見上げ、しばらく黙っていた。
 やがて、少しだけ照れくさそうに呟く。

「……カガヤさん、やっぱ俺は、インターンに参加してよかったよ」

「そういってくれると救われるよ」 

 馬車の揺れが心地よくなってくる。
 加賀谷は目を閉じながら、こう思った。

 ――礎は撒いた。
 次は、芽吹かせる番だ。

 “未来を分かち合うための資本”を、いまこの地に。



_______________________
★あとがき
株式登場!
共栄連合構想がいよいよ大詰め
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