奴隷の国

猫人鳥

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第1章

1 後悔

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 あの時、結界から外に出なければ、きっと今頃、こんなことにはなっていなかったんだんだろう。
 そんな今更な後悔を今日も繰り返す。

 私が生まれたのは魔神種まじんしゅのみが暮らす魔神種の国。
 森に囲まれた、自然が豊かで平和な国だった。
 何故国がそこまで平和だったのかといえば、国を守る結界があったからだ。

 国と森との間に1つ目の結界。
 それは森に住む魔物達から国を守る結界だ。
 そして2つ目は、その魔物の住む森ごとを覆う、外からの魔神種以外の侵入を一切遮断するための強力な結界。
 維持するのにも膨大な魔力を消費するため、国では定期的に魔力を回収する日等も存在した。
 とはいえ私達魔神種は魔力量が多い為、回収されて困るわけでもなかった。

 そんな平和な国で生まれた私は、100年に1人の逸材だと言われる程に魔法を覚えるのが得意だった。
 3歳の頃には魔法を自在に操れるようになり、5歳の頃に高等魔法も覚え、大人顔負けとまで言われた。
 7歳になった時は、森に魔物を狩りに行く討伐隊に入れてもらえる位に認められていた。

 討伐隊は1つ目の結界を出た先の森で、森の代表的な魔物のボーアを食料用として狩り、国に害を為しそうな危険な魔物を倒し、国の安全を守るのが仕事だ。
 しかし決して2つ目の結界を出ることはない。
 私は討伐隊として何度も森へ行き、2つ目の結界を見ていた。
 あの外へ行ってみたいという思いもあった。

 結界を出ること自体は何も難しくはない。
 簡単に出る事ができる。
 だからこそ大人達は子供に、絶対に結界の外に出てはいけないと、これでもかという程に言い聞かせて育てる。

 私達が結界を出てはいけない理由、それは外には他種族が存在しているからだ。
 この世界には"人"と分類される、7種類の種族が存在している。
 魔神種、天喰種てんくうしゅ溟海種めいかいしゅ地霊種ちれいしゅ妖精種ようせいしゅ龍幻種りゅうげんしゅと、人類種じんるいしゅだ。
 中でも人類種は本当に危険で、ハンターと呼ばれる者達が常に他種族を狩っているという。
 人類種に捕まった他種族は、人類種に逆らうことはできず、奴隷として人類種に従って生きていく事しか許されない。

 そんな他種族、主に人類種と関わらない為に、自分達を守る為に結界が存在していることは知っていた。
 知ってはいたが、疑問だった。
 何故魔力量も膨大で、他種族には使えないような高等魔法も使える私達魔神種が、魔力量も少なく、大した魔法も使えない人類種にビクビク怯えながら結界内の国で暮らしているのかが。

 加えていえば、外の世界に興味があった。
 特に本で読んだことのある海を見たかった。
 魔神種の国では本来、そういった外の世界に興味が湧いてしまいそうな物は排除されているが、不必要に勉強熱心だった私は、図書館で見つけた古い本等も読んでいた為、海という存在を知ってしまっていたんだ。

 海とはとても美しい水溜まりの様なもので、そこには森とも違う独自の魔物も存在しているという。
 特にキングフッシュという魔物はとても美味しいらしい。
 普段からボーアばかりを食べている私には、フッシュを食べてみたいという憧れもあった。

 あれは私が10歳になった誕生日の事だ。
 私は結界から外に出た。
 外に出たのはただの好奇心だった。
 結界の外の世界が見てみたいという、ただの好奇心。
 さらに言えば10歳になった事で、もう十分に一人前だ、という愚かなテンションのままだった。

 ずっと決めていた。
 何度も考えた完璧な計画、10歳の記念に海を見たら帰るつもりだった。
 フッシュを食べたいという思いもありはしたが、今日は家で誕生日パーティーだからと、お母さんが豪華な料理を作ってくれていたので、本当に海だけ見たら帰るつもりだった。

 そんな私の野望は果たされる事なく、ハンターに見つかってしまった。
 私は子供過ぎた。
 周りから優秀だ、天才だと言われ、傲っていた。
 自分の魔法があれば、例え人類種のハンターに襲われたって返り討ちにできると思っていた。

 魔神種の私にとって魔法が全てだった。
 でも人類種にとっては違った。
 魔法が全てではなかった……

 ハンター達は特別な道具を持っていた。
 マジックキャンセラーと呼ばれる魔法取り消し技術。
 これが魔神種の皆が人類種を恐れる理由だったのだと、魔法も使えず無力となった私は理解した。

 魔法が使えなくなった私を捕まえる事なんて、赤子の手を捻るより簡単だっただろう。
 本当に愚かだった。
 あの時の事を何度後悔しても、何もかもがもうすべて遅いというのに……

 今日はやけにあの日を思い出してしまう。
 おそらくはさっき外から聞こえた声が、今日の日付を言ったせいだろう。
 今日は5月1日、私の誕生日だ。
 だからこそ改めて思う……あれからもう、6年も経ったのかと。
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