奴隷の国

猫人鳥

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第1章

2 稀少

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 ハンターに捕まった私は、重く分厚い腕輪をはめられ、檻へと入れられた。
 その腕輪には私の力を吸い取る力でもあるようで、体中の力がどんどん抜けていってしまった。
 魔法も使えない上に力も入らない……
 気持ちの悪い感覚に耐えながら、ただただハンター達を見ている事しかできなかった。
 何も出来ない今の状況では、逃げ出すことなんて絶対に出来ないのだと分からざるを得なかった。

 そんな中でも唯一の救いは、ハンター達に私が迷子だと思ってもらえた事だ。
 そのお陰で、何処から来たのか? 魔神種の国はどこにあるのか? 等と言った質問には、全て分からないと返すだけで済んだ。
 自分のただの好奇心という愚かな行いで、魔神種の皆を巻き込むなんて絶対に嫌だったから、それだけは救いだった。

 ハンター達の話では、魔神種は滅多に捕まえられないらしい。
 だから魔神種はレア種族として扱われ、買い取り価格も高いのだという。
 思わぬところでレアな私を捕まえられた事を、ハンター達はとても喜んでいた。

 その後、ハンターから奴隷商へと売られ、見せ物となった。
 奴隷商達が定めた私の売値は、金貨1000枚。
 見ていく客はいるものの、誰も買おうとはしない。
 いくらレアな魔神種だとはいえ、高額な上に幼い10歳の子供。
 おまけに放っておけばすぐに死ぬ程度に弱っていた為、誰も買おうとまでは思わなかったのだろう。

 いかに金持ち達とはいえ、金貨1000枚も払って手に入れた玩具がすぐに壊れてしまったのでは面白くない。
 だから私は、他の奴隷達が買われていく中、ずっと売れ残ってしまっていた。

 それ故に、奴隷商達は新しい売り方を考えた。
 それがレンタル……売値の10分の1である、金貨100枚で1ヶ月貸し出すという売り方だ。
 何に使ってもいいが、必ず生きた状態で帰すことが条件だった。
 もちろん死んだ場合は買い取りと、賠償金を払ってもらうことを約束して。

 これがかなりの好評だった。
 私は売れない日はないと言えるほどに、レンタルをされる事になった。
 時には実験、時には愛玩、使用用途は様々だったが、私は奴隷として沢山の人類種達に使われてきた。
 中には私を気に入り、何度かリピートしてレンタルする金持ちもいた。
 そんな日々を繰り返し、6年の月日が経ったんだ。

 私を売っている奴隷商達は、色んな国を渡り歩いている。
 同じ国に何度か行くこともあるけど、ずっと同じ場所に居座ったりはせず、定期的に移動している。
 私はいつも檻に入れられて、"物"のように移動させられる。
 それも当然だ。
 この奴隷商達にとって私はただの商品、"物"なんだから。

 外からは檻が見えないように布で覆われているけど、今はたまたま檻を覆う生地が少し破れていて、外の様子が見えた。
 檻越しの隙間から見えるその景色は、初めて見る町並みだった。
 また新しい国に来たんだろう。

 人の多い、広場のような場所で止まった。
 そして奴隷商達は、檻をさらけ出し、

「ご通行中の皆様、少し足を止めて見ていって下さい!」
「本日の目玉商品ですよー!」
「なんとっ! 魔神種の娘だー!」

と、演説をし始めた。

 人類種達には奴隷というものが当たり前に存在している。
 他種族だけではなく、同じ人類種同士でも、犯罪を犯したものや借金が貯まりすぎたもの達が売られている。
 町の広場で普通に売っているのが当たり前なので、誰もが平然としている。
 魔神種の私には何度見ても理解できない光景だ。

「えぇ! 魔神種!? 初めて見た」
「こりゃ珍しい」
「本当に角が生えてるんだな」
「赤紫の髪に赤い瞳か。それにこの容姿とは……魔神種なんて初めて見たけど、皆こんなんなのかねぇ」

 客達は私に興味津々だ。
 私達魔神種は人類種と違い、頭に角が生えている。
 それが珍しいのだろう。
 もう見慣れた反応だ。

「ご覧いただいた通り容姿も整っておりますので、愛玩用にも丁度いいですよー」
「この魔神種の娘、金貨1000枚でどうだー? 誰か買う人はいないかー?」
「金貨1000枚だって?」
「誰が払えるんだよ」
「お貴族様くらいだろうさ」
「貴族でも買わんだろ」
「余程金に余裕のある貴族か、コレクターしか買わないでしょうね」
「まあ、レアなもんを見れただけ楽しかったがな」

 金額を聞いて白けたと言わんばかりに、呆れた態度で悪態をつく人類種達。
 それでも私を見るのをやめないとは……
 白けたのなら帰ればいいものを。
 まぁこれももう、見慣れた反応だけど……

「まぁまぁ、お客様方。金貨1000枚をいきなり払うってのも気が引けるのは我々も承知の上ですよ。なので、レンタルという……」

 いつものようにレンタルの説明をしようとする奴隷商。
 けれど突然、

「私が買うわ!」

と、奴隷商の声をかき消すように、凛々しく、淡々とした声が広場に響いた。
 
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