妖精を隷属した国の末路

小梅カリカリ

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ハーク国

逃亡失敗

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 こっそりとトーク達と訪ねた人達とのやり取り聞いていたデューン。
「ふーん、妖精の力があれば国民は何でもするんだな。これならバイオレットと結婚できそうだけど、キエトがいる限りバイオレットの気持ちはそっちに向いているだろうなあ。何か良い手はないかな。」
 暫くの間考え込むデューン。何か思いついたのか嬉しそうにつぶやいた。
「そうか、キエトを殺してしまえばいいんだ。キエトが死んでショックを受けているバイオレットを慰めて心の隙間に入り込めばいい。結婚してから愛を育てていくっていう事もあるっていうし。
 どうやってキエトを殺そうかなあ。キエトはずっとバイオレットの愛を独占して俺を苦しめた。キエトは両親みたいに一瞬じゃなくて、苦しみながら死んでもらうのが良いな。」

 デューンは早速、キエトの親友を呼び出した。
「ノルン、君はキエトとは幼馴染で親友だよね。両親がいなかったキエトを君達一家は家族として引き取り、一緒に暮らしていた。」
 何を言われるのかと怯えているノルンは、真っ青な顔で頷いている。
「優しい兄は妖精に同情して、今の国の状態に不満を持っている。なんとか妖精を助けようと思っているようなんだよ。
 キエトも兄に賛同して兄達と一緒にこの島を出て外の者に知らせようとしているんじゃないかと私は心配しているんだ。
 この事が外に漏れたら妖精が乗り込んでくるかもしれない。そうしたら、以前のように海は荒れ狂い作物の育ちにくい苦しい暮らしに戻ってしまう。勿論妖精を使用していた事に対する罰もあると思うが、そこは心配しなくていい。皆を騙して俺が勝手にやっていたという覚悟は出来ているからね。
 ただ、皆の幸せを壊すわけにはいかないんだ。私が王として3人の事に対応する前に君からキエトを説得してくれないかな。
 キエトの考えが変われば、バイオレットの考えが変わり、兄の考えも変わるんじゃないかと思うんだ。」
「分かりました。俺、絶対に説得して見せます。だから、キエト達の事は助けてあげて下さい。」
「勿論だよ、私だって自分の家族をこれ以上失いたくないからね。両親を病気で亡くしたばかりだしね。」
 くすくすと笑いだしたデューン。
「じゃ、よろしくね。」
 ノルンを残してデューンは去っていった。

 ノルンはすぐにキエト達のもとへと向かう。
「このままだと皆が危険なんだ。今すぐ島を出た方が良い。港の反対側のあの場所に親父達が船を用意している。俺も見張りがつくと思うからこれくらいしか出来ないけれど、何とか無事に逃げてくれ。」
「ノルン、助けてくれてありがとう。なんてお礼を言ったらいいのか。」
 キエトの言葉に首を振るノルン。
「お礼なんて良いんだ、俺たち一家にとってキエトは大切な家族だ。大切な家族を助けるのは当たり前だよ。王には説得できたと伝えてくる。皆さんのどうかご無事で。」
 分かれの挨拶をするとノルンは帰っていった。3人で話し合い夜見張りの隙をついてキエトとバイオレットが1人づつこっそりと抜けだす事にした。

 夜になり見張りに見つからない様に港へと向かう。最初にキエト、次にバイオレット、トークはカモフラージュの為にも島に残る事にした。
「気を付けて行くんだよ、キエト。合流できたらバイオレットの事を頼む。ドロン国の代表に会って妖精達にこのことを知らせてくれ。」
「はい、お義父さんも気を付けてください。助けが来るまで、どうかご無事で。」
 トークの言葉に決意した顔で分かれの挨拶をしたキエトと悲痛な顔で俯いているバイオレット。

 キエトはこっそりと家を抜け出して音をたてないようにして歩いて行く。気が付いたらいきなり後ろから頭を殴られていた。
「こんばんは、キエト。逃げ出そうとするなんて、しかも私の兄とバイオレットを連れて行こうとするなんて許せないな。
 選びなよ、王家秘伝の毒薬を飲んで逃げようとした兄とバイオレットを見逃してもらうか。3人揃って毒薬を飲んで苦しみながら死ぬか。」

 デューンはキエトに毒薬を差し出した。迷いもせずにキエトは毒薬を掴む。
「必ず2人は助けてくれ。トーク様今までありがとうございました。バイオレットどうか幸せになってくれ。」
「ふん、バイオレットは幸せになるよ。この俺とね。」
 毒薬を飲み苦しみながら死んでいくキエトを、デューンは冷たい目で黙って見つめていた。キエトが死んだ事を確認するとデューンはジャンを呼びに行く。悲しそうな顔をしてジャンを見つめるデューン。
「私が見た時にはもう死んでいたんだ。可哀想に丁重に弔ってあげないとな。バイオレットにはジャンから知らせておいてくれ。」
「分かりました。」
 ジャンは無表情のままキエトを抱えると家に戻っていった。そして葬儀の準備をする。棺に納めるとトーク達の家へと向かった。

 バイオレットは家の周囲に見張りが増えて、家から抜け出せずにいた。
「何かあったのかもしれない、暫く様子を見て無理なら私達は諦めよう。最悪キエトだけでも逃げてくれれば。」
「そうね、お父さん。今一番危険なのはキエトだもの。」
 ドアを叩く音がして開けると、そこには辛そうに顔を歪めたジャンがいる。
「先程、キエトさんが亡くなった。今私の家にいる。」
 崩れ落ちるバイオレットを抱きしめるトーク。
「私のせいだわ、私の夫だったから。あいつ、あいつの事は絶対に。」
 真っ青な顔で泣いているバイオレットを強く抱きしめたトーク。
「バイオレット、早くキエトに会いに行こう。ジャン、葬儀は私達だけでやりたい。」
 頷くジャンに案内されて、2人はジャンの家に向かった。

 2人だけでキエトに会い最後のお別れをすると、ジャンが手伝いに来て3人でキエトを墓地に埋葬する。
 キエトのお墓の前で立ちすくむトークとバイオレット。バイオレットはショック状態なのか青白い顔で涙を流し何も言わずに呆然と立っている。トークは唇を噛み締め震える両手を握りしめていた。
「ご両親に続きキエトさんまで。なんと言ったらいいのか。ピック一家の様子を見に行ったら、彼らも監視されていました。」
「色々とありがとう、ジャン。ピック一家にも迷惑をかけてしまって。」

 その時、見張りから聞いてやってきたのか、島の人達が代表で何人かやってきた。お墓にお花を添えてお悔やみを行った後にキャシーがバイオレットに近づくと声をかけた。
「バイオレットさん、今は辛いと思います。その辛い気持ちをいやす為にもバイオレットさんの事を愛している王と結婚するのが良いんじゃないかと私達思っているの。」
 こんな時にまで、王との結婚を勧める人達。
「そう、それがあなた達の気持ちなのね。あなた達の態度、私は決して忘れないわ。皆の最愛の人が同じような目にあわされた時に同じ事を言って慰めてあげる。」
 バイオレットとトークの鬼のような凄まじい形相を見た皆。それ以上何も言えずに黙って立ち去った。

 ジャンは2人に再度お悔やみの言葉を言った後、自分の気持ちを伝えて帰っていった。
「何かやる時には協力します。どんな事でも。」

 微熱が続いている妖精、魔法を使い続ける為に眠る事も出来ずにどんどん体力を失っている。顔色も悪くやつれていた。

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