妖精を隷属した国の末路

小梅カリカリ

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ハーク国

妖精解放

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 バイオレットはデューンを迎える準備を始めた。料理を作りワインに毒薬を入れて机に置く。最後にキエトとの結婚指輪を外すと大切そうに握りしめた。
「上手くいくように見守っていてね、キエト。」
 指輪を撫でるとチェーンに通して首にかける。デューンに見えない様にネックレスをポケットに入れた。緊張した顔で椅子に座り、両手を握りしめるとデューンが来るのをじっと待つ。

 ドアを叩く音がしてデューンの声が聞こえる。バイオレットは自分の顔が笑顔になっているのを確認すると、ドアを開けてデューンを迎えいれた。
「こんばんは、バイオレット。」
「こんばんは、デューン。あら、可愛いお花ね。ありがとう。」

 バイオレットが花を受け取る時に、デューンはバイオレットの薬指に指輪がないのを見つけて、嬉しそうに薬指を見つめている。薬指から机の上に視線を移すと、デューンは歓声を上げた。
「凄いな、どれもとても美味しそうだね。バイオレットの料理が食べられるだなんて嬉しいよ。
 これが食事会の料理の候補かな。」
「ええ、まずは前菜から食べてみてね。」

 バイオレットが料理を小皿に取り分けていると、エレナの歌が聞こえてきた。トークはそっとドアの近くに近づいて聞き耳を立てる。

「あら、エレナさんが歌っているわね。相変わらず素敵な歌声ね。」
「そうだね、まるで僕らの事を祝福してくれているみたいだな。」

 盛大な勘違いをしているデューン。バイオレットは笑顔で毒入りワインの瓶を渡すと、デューンが2人のグラスに毒入りワインを注ぐ。
「それじゃあ、まずは乾杯しよう。私とバイオレットの素敵な未来に乾杯。」
「素敵な未来に、乾杯。」

 デューンもバイオレットも微笑むと、毒入りワインを飲みほした。

 家の中から誰かが倒れるような音を聞いて、トークは中に飛び込んだ。苦しそうに顔を歪めているバイオレットに駆け寄って抱き起すと、急いで解毒剤を飲ませる。
「バイオレット、しっかりしろ、大丈夫か。バイオレット・・・・・・。 」

 青白い顔をしたバイオレットが、震えながらトークを見つめている。
「ええ、お父さん。大丈夫よ、ありがとう。」
「良かった、本当に良かった。よく頑張ったな。 」
 トークはバイオレットをそっと抱きしめて、椅子に座らせた。

 その光景を見ていたデューン。苦しいのか顔を歪めながら震える声で問いかけた。
「こ、これは兄さん。ど、どういう。」

 トークは必死で言葉を話しているデューンを、冷たい眼差しで見つめながら言う。
「デューン、選べ。このまま死ぬか、妖精の隷属契約を破棄して解毒剤を飲むのか。」
 唸り声をあげて悔しそうな顔をすると、デューンは呟いた。
「隷属契約を破棄。」

 デューンの言葉を聞いたが、トークは迷うような素振りを見せていて解毒剤をデューンに飲ませない。
 デューンの顔に絶望の表情が浮かび、懇願するような顔になると涙を流しだした。
「ま、まさか。兄さん。」

 デューンが呟いた時、エレナが妖精を抱き抱えて家に飛び込んできた。
「妖精が目を覚ましました。」
「おお、妖精様、隷属契約は解除されましたか。」

 トークとバイオレットが緊張した顔で妖精を見つめていると、妖精は静かに頷いた。
「うん。契約は解除された。私はもう自由になった。」
「良かった、デューンが本当に解除したのか分からなかったから、デューンを殺して契約を解除しようかと思っていたんだよ。」
「お父さん、見張りも見回りも解除されている。今のうちに島から脱出しないと、ジャンさん達もつれてこないと。」
「ジャンさん達はドロイが呼びに行きました。ピック一家の船に乗ってこちらに来ます。私達も港にある船に乗って逃げないと、急ぎましょう。」

 トークはデューンに解毒剤を飲ませると殴って気絶させた。
「拘束している時間はないな。走ろう。」
 トークはバイオレットを抱えると、妖精を抱えているエレナと一緒に走っていく。デューンのお陰で見張り達がいなくなったが、用心しながら港へと向かっていった。

 港にたどり着くと開いている船に乗り込んだトーク達。
「急いで出航の準備をしよう。バイオレットはここにいてくれ、妖精様を頼んだよ。」
 バイオレットを甲板の上に座らせると、エレナが妖精を渡す。2人とも慣れた手つきで出港準備を終える。

 出航準備が終わり落ち着くと、トーク達は改めて妖精に謝罪した。
「酷い目に合わせてしまい申し訳ありませんでした。助け出すのが遅くなって、随分辛い思いをさせてしまいましたね。」

 妖精は優しく微笑むとバイオレットに癒しの魔法をかけてくれた。
「うん、確かに苦しかったけれど、その事はあなた達が気にする事じゃない。妖精を隷属した人間に、普通の人間が勝てないのは分かっている。
 妖精の力と言う魅力に溺れずに、私を助ける為に頑張ってくれてありがとう。
 あなた達の方こそ、大切な人を失って辛い思いをしているでしょう。心からお悔やみを。」

 妖精の言葉に3人とも安堵の表情を浮かべた。
「寛大なお言葉、そしてバイオレットを癒して下さってありがとうございます。」
 バイオレットとエレナもトークと一緒にお礼を言う。

 トークは周囲を見回すと妖精に尋ねた。
「この後はどうすればよろしいでしょうか。もう他の妖精の方には連絡して頂いてますか。」
「うん、もう連絡した。母達がドロン国の港で待っている。あなた達が私を隷属契約から解除してくれたことも伝えてあるから、何も心配いらない。」

 暫くしてドロイやジャン達の乗った船がやってきた。ピック達の船からドロイが移って皆でドロン国へ向かって出航する。
「もう私は魔力を流していないけれど、私達の船は大丈夫。母がちゃんと港まで無事に送ってくれるから。」

 操縦をしていないのに風に乗って、海の上を凄い速さで移動していく2隻の船。
「こんなに早いのに船が全然揺れないし風も感じない、やっぱり魔法は凄いわね。」
 皆、島から脱出できてほっとしたのだろう、互いの無事を喜びあっていた。船が島を離れるにつれて島の周囲の海がどんどん荒れていった。

 島を見ていたトークが叫び声をあげた。
「皆船の中央によって何かに捕まるんだ。海の中に大きな影が見えるぞ、気を付けろ。」
 トークの声を聴いて後ろを振り返ると、海の中に大きな黒いものが見える。それを見ていた妖精が、皆に落ち着くように声をかけた。
「大丈夫、あの魔物はこちらには来れないから。母が結界を張ってくれているから近づけないわ、安心して。」

 妖精の魔法で眠らされていた魔物は、目覚めて嬉しいのか海の中を元気よく泳ぎ回っている。
「なんだか嬉しそうね、こうやって安全な場所で見ていると、なんだか可愛らしい気もするわ。」
「だが、バイオレット。確かアイツは雑食だから我々はあいつにとって餌になるんだよ。私はとてもじゃないが可愛いとは思えない。」
「トーク様、自分が安全な状態なら可愛いと思えるものなんですよ。私も可愛いと思いましたもの。」

 微妙な顔になった男性陣に笑っている女性陣。船は賑やかに話している皆をのせて、無事にドロン国へ到着した。
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