妖精を隷属した国の末路

小梅カリカリ

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妖精解放後

マアイ村と牢獄島

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 村長がトーク達を今日使う部屋へ案内してくれる。
「妖精達が家や作業場所を用意してくれました。でも今から暮らす準備となると大変ですからね。今日は我が家に泊まって下さい。
 この後は皆さんの歓迎会を屋敷で行います。時間が来たら迎えに来ますから、それまで部屋でゆっくりしていて下さい。」

 部屋に入りトークはお茶を入れて、バイオレットとのんびりと寛ぐ。
「バイオレット、島から逃げた後もずっと慌ただしくて疲れただろう。キエトを失って辛い中、よく頑張ったね。」
「ありがとう、お父さんも大変だったでしょう。なんとか無事に今後の見通しが立って一安心ね。キエトも一緒に来れたら良かったのに、御爺ちゃんや御婆ちゃんも。」
 悲しげにため息をつくバイオレット。
「そうだね、皆で一緒に来れれば。考えてもどうしようもない事だが・・・・・・。 」

 トークも辛そうにバイオレットを見つめていた。
「だがバイオレット。こんな事をずっと考えていたら、この辛さから抜け出せなくなってしまうよ。」
「そうよね、でもやっぱり考えちゃうの。1人になると色々思いだしちゃって。」

「バイオレット、1出来れば誰かと一緒にいる時間を増やした方が良いかもしれないね。1人で抱え込まないで、一緒に過ごす人に自分の気持ちを話してほしい。
 自分の中だけで気持ちを閉じ込めてしまうと、辛い感情から抜け出せなくなるかもしれないから。相手は私でもこれからできる新しい友人でもいいんだ。誰かに心を開いて話すという事は大切だよ。」
「そうね。今はキエトの事を思い出すと辛いけれど・・・・・・。 
 キエトも私に幸せになって欲しいと思っているだろうし、逆の立場なら私もそう思う。心の中に暗い思いを貯めこんで、自分自身が駄目にならないように気を付けるわ。」

 暫くすると村長が2人を迎えに来た。
「皆新しい村人に早く会いたいらしく、まだお昼前なのに張り切って歓迎会の準備を終わらしてしまったんです。まあ、夜から歓迎会という決まりもないですしね。
 昼食から歓迎会を始めることにしました。料理もお酒も全部村のお店の物で、これが、とても美味しいんです。
 用事のない村人は全員参加してますから、誰か気の合う友人が出来ると思いますよ。立食形式ですし気楽に楽しんで下さいね。」

 笑顔の村長に案内されて広間に入ると大勢の人達が集まっていた。良い匂いのする美味しそうな料理にお酒、綺麗なデザートが机の上に並んでいる。

 村長に紹介されてトークが代表で挨拶を終えると、乾杯の音頭と共に歓迎会が始まった。トーク達は皆料理やお酒を持つと、それぞれ別れて積極的に村人に話しかけに行く。

 トークが村の家具屋の男性と話していると村長が男性2人を連れてきてた。
「トークさん、楽しんでいますか。
 あなたに紹介したい方達がいるんです。この2人は、最近入った新しい村人です。性格には少し不安がありますが情に厚く照れ屋のテッレさんと、頭脳明晰だけど嫌み好きなイヤーミさんです。
 既に村にも溶け込んで、村人からの信頼も厚く頼られています。きっとトークさん達の力にもなってくれるでしょう。」
「何かあればいつでも言ってくれ、出来る限り相談に乗らせてもらうよ。俺はカイ・テッレ。よろしくな。」
「ヤーミです。どうぞよろしく。村長の言った事は気にしないでください。妖精と会えなくなったのをからかったから拗ねているんですよ。」
「くくっ、村長は魔法狂いだからなあ。俺は会えなくなってほっとしているけどな。聞いた所によると【シャイ】の代表達も臨時会議で妖精がもう来ないと聞いて嬉しそうに喜んで帰っていったってそうだぞ。
 獣人も人間も馬鹿な奴が妖精を怒らせて【シャイ】が滅ぼされないかと、日々緊張の連続で大変だったらしいからな。」
「ふん、私のように悲しんでいる者達も沢山いるわ。魔法がもう見れないなんて・・・・・・。 」

 2人の話を聞いて苦い顔をして2人を睨んでいる村長。3人の遠慮のない会話を聞いて、周りにいた村人と一緒にトークも苦笑した。
「トーク・フォレストです。娘もフォレストなのでトークと呼んで下さい。よろしくお願いします。」

 目をキラリと光らせた村長がトークを覗き込んだ。
「そうじゃ、トークさんは魔法に興味がおありですか。」
「ないってさ、そんな事よりトークさんは家具を作るんだってね。」
 村長の質問をバッサリと切って話を変えたテッレ。トークはそんな2人を楽しそうに見ながら質問に答える。
「はい。ずっと独学だったので、これから職人の方に学べる事になって感謝しています。
 私だけでなく他の皆にも相談役を付けて下さって、ありがとうございます。」
「いえいえ。皆さんがこの村で素敵な生活をおくれるように支援するのは、村長の役目ですからね。
 裁縫を希望したバイオレットさんには、若い人達から姐さんと慕われている裁縫師がついてくれるので安心してください。彼女は人生経験も豊富で面倒見のいい人ですから、色々相談にのってくれると思いますよ。」

 トークは楽しそうにしている他の皆の様子を見て、安心した表情になる。

 エレナは村の主婦達との会話が盛り上がっているし、ドロイは料理人と真剣に話している。
 バイオレットは若い人達の中に入り最近の村の流行を教えて貰っていたし、ピック一家は農家や商人達と集まって何か話し込んでいた。ジャン達は老人達と一緒に、小さな子供達と楽しそうに遊んでいる。

 皆が積極的に村人の輪の中に入っていったのが良かったのだろう。互いに沢山話して、すっかり打ち解けられたトーク達と村人達。
 ほろ酔いのエレナと主婦達が一緒に歌い始めると、他の皆がダンスを踊り、子供達はクルクル回ってはしゃいでいる。

 トークは幸せそうにその光景を見つめていた。
「皆楽しそうです、この様子なら村の人達とも上手くやっていけそうですね。私達を受け入れて下さってありがとうございます。」
 トークの言葉を聞いて村長達は優しく微笑んだ。
「私達もトークさん達のような方達が村に入ってくれて嬉しいんですよ。これからは同じ村人として一緒に頑張りましょう。何かあればいつでも相談してくださいね。」

 夕方になり子供達は先に夕食を食べ終えて別室に引き上げると、大人達の宴会は夜に向けてどんどん盛り上がっていった。
 村人となり一緒に盛り上がっているトーク達の表情は明るく希望に満ちていた。

 その頃、牢獄島では夜に向けて準備におわれていた。
「急ごう、暗くなる前に家に帰って支度をしないと。これからは灯りも大切にしないといけない。」

 リーダーとして動いている男性の意見を聞いて、全員協力して急いで夕食の支度を始めていた。
「朝から周囲の状況確認に追われて大変だったわね。」
「雨は止んだのに、海は魔物が暴れているせいで大荒れの状態だわ。時々波がこっちに来ていて作物に海水がかかって最悪よ。」
「ああ、妖精の魔法が消えても枯れなかった植物まで、このままだと枯れてしまうよ。」
「明日は、作物は植え替えて空いている家に運び込もう。」

 自分達が既に犯罪者として島に幽閉される事が決定された等知らない罪人達。
「次にドロン国へ渡れるのは3か月後か、それまで何とか食料が持つと良いんだが。」
「そうね、非常食として保存食を沢山作っておいてよかったわ。」
「トーク様達やデューンはドロン国に逃げたのかしら。」
「多分、トーク様達は海が荒れる前に出て行ったんだろうから、無事にドロン国へ着いていると思う。デューンがどうなったかは知らないがな。俺達を置いて自分だけ逃げるだなんて。」
 皆がデューンへの悪態を口にする。ひとしきり文句を言い終わりスッキリとした表情になる罪人達。

 罪人達は目の前の現実から目をそらしたいのか、ドロン国へ渡った後の事を話す。
「ドロン国へ行ったら、俺達はトーク様達にあって謝罪しないとな。許してもらったら、住む場所も金もないから、トーク様達に頼んで一緒に暮らせばいいよな。」
「そうだな、皆で謝罪して許してもらって、また一緒に頑張っていこう。トーク様達は俺達が行く時にはもう知り合いとかも出来ているだろうし、貯えも増えているだろうから少し援助してもらえそうだね。勿論お金は借りたら返すけれど。」
「仕事を紹介してもらったら、一生懸命働かないと。借りた額より少し多く返した方が良いわね。ドロン国へ行ったら普通の暮らしが出来るように頑張りましょ。
 とにかくこの3か月間を何とか乗り切るわよ。」
「ドロン国に着いたらまずは何かご飯を食べさせてもらわないと。」
「ああ、着いたらまずは食事だ。トーク様達と仲直りの飲み会を開こう。それまでみんなで頑張って乗り切ろう。」
「3か月間の辛抱だ。」

 罪人達は希望を胸に抱き、生き延びる事を誓い合った。
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