妖精を隷属した国の末路

小梅カリカリ

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妖精解放後

妖精の見守り

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 牢獄島監視隊が、空に浮かび罪人達を見つめている。
「毎日飽きもせず争いばかりだったね、罪人達は。」
「争う相手も殺してしまったし、この後はどうするんだろうね。」

 牢獄島の木々は枯れ葉てどの家も程んど崩れ落ちていた。10名ほどの若い男性が集まっているが、顔色も悪く痩せていてボロボロ服から出ている肌はどこも傷だらけだ。

「食料はどの位ある、崩れていない家で育てている作物の様子はどうだ。」
「人数が減った分年内はもちそうだけど、皆体調が悪い。体もだるいし熱がある感じがする。寝込んでしまった奴もいるな。」
「食べ物が少ないから栄養が取れないんだよ。薬もないし仕方がないよ。」

「やっぱり、あの時争いを止めていたら。」
「半年過ぎても島から出られなくて、不安や絶望的な空気が島に漂っていたからな。争いに発展するのは止められなかった。」
「纏め役達を彼奴らが殺してからは本当に最悪だったな。」
「争いに巻き込まれた時の傷が原因で亡くなった人達も多かったな。食糧不足の栄養失調では老人や女子供が・・・・・・。 」

 話している男性達も傷が痛いのか、辛そうな顔をしている。
「俺達もいつまで持つか分からない。同じ国民同士で殺し合う事になるなんて。デューンから妖精を取り上げてさえいたら、こんな事にならなかったのに。」
「デューンのせいで俺達全員がこんな酷い目に合うなんて。悪いのはあいつだけだ。」
「波が収まってくれたらな。なんとか俺達だけでも助かりたい。」
 最後の言葉に全員で海を見つめて頷いた。

 話を聞いている妖精達
「ふーん。自分達だけ助かりたいってね。それ、無理。」
「もうずぐ一年かあ。そういえば、トーク様とバイオレットちゃん雑貨店を開店するんだってね。」
「そうなの、なかなか可愛い服や小物があったわよ。2人とも師匠について頑張っていたしね。
 お店が開いたらこっそり買いに行く予定よ。楽しみだなあ。」
「エレナさんが言ってたけれど、最近バイオレットちゃん師匠の姉貴のお陰か自然に笑顔が出るようになったんだって。良かったよねえ。」
「ああその話、妖精国でも話題になってた。皆喜んでたね。」

「ねえ、こいつら全員死んだら島は消して魔物は国に連れて帰ろうよ。」
「それいいね。私皆の許可を取りに行ってくるわ。」

 許可を取ってきた妖精が喜びながら帰ってくる。
「許可、取れたよーって・・・・・・。 なんて事なの、一番最後、大事な所を見逃しちゃった。」

 悲しそうに顔を歪めた妖精に、他の妖精達が慌てて集まってきて慰める。
「がっかりしないで、私達もまさかあの後すぐに全員死ぬだなんて思わなかったもの。」
「そうだよ、元気を出して。」

 妖精達が見つめている牢獄島は、どす黒い炎で燃えている。
「病気で寝ていた罪人が、いきなり笑いながら彼方此方を燃やしだしたんだよ。最後1人で死ぬのは嫌だって全員道連れ。」
「そんな結末って・・・・・・。 」
「なんだかねえ、って感じよね。」
「ここにはもう用はないよ。全て見届けたし島を消してしまおう。最後はロレーヌよろしくね。」

 妖精達が魔物を周囲の海水と一緒に包み込む。ロレーヌが水色の小石程の小さな球体を出すと、球体は牢獄島の中央に沈み込み、牢獄島はぽろぽろと海の中に崩れ落ちていった。

「帰りましょう、今夜は監視終了のお疲れさま会です。ご馳走とお酒の準備をしなければ。」
「ご馳走。シェフによる香辛料タップリのお肉に魚。美味しい果物やデザートもいっぱい」
「お酒は、色々な種類の果実酒がたっぷりあるからね。楽しみだな。」
 ロレーヌ達は急いで国に帰っていった。

 嵐が消えたのを見た漁師達が兵士に知らせに行く。兵士が船を出してみると島は消えていた。
「大変です、嵐が収まったと思ったら、島が消えていました。」

 慌てた様子で兵士がマッキンに知らせに来た。休暇で彼女とデート中のマッキンは、デートを中断して兵士と一緒に急いで城へ向かう。
「ついに嵐に耐え切れなくなって島が沈んでしまったのか。島のあった付近に、誰か人はいたのか。」
「いえ、人どころか何もありません。」
「そうか、先にハーク国からドロン国へ移住してきた者達に知らせないといけないな。念の為暫く周辺を確認してくれ。」
 城に戻るとマッキンはマアイ村に手紙を出した。

 マアイ村の村長はマッキンからの緊急と書かれた手紙を読むとトークを呼び出した。村長から手紙を受け取り、読んでいるトーク。
「そうでしたか、牢獄島が消滅・・・・・・。 彼らは全員死んだのでしょうね。
 皆に知らせてきます。これで私の心にも、区切りがつきました。」

 木々の間からその様子をじっと見つめていた妖精。トークをつけ、バイオレット達に牢獄島が消滅した事を話している様子を見ながらメモを取る。

 トーク達が揃って墓地に報告に行き、牢獄島の罪人達にも供養の言葉を述べるのを見るとメモを取る妖精。トーク達が解散して家に帰るのを見届けて、隣に現れた妖精と見守りを交代しメモを手に姿を消した。

 沢山の珍しい果物やワイン、香辛料を聞かせて焼いたお肉と魚、ふわふわのパン。
 料理の腕を存分に振るった妖精シェフ達の美味しそうな料理を囲み、妖精達がお疲れさま会という名の飲み会をしている。

 妖精たちは口々に今回の牢獄島の事を話している。
「我慢して食料を分け合えば生き残れたはずだったのに、なんで争うんだろうね。一度贅沢を体験しちゃったから我慢が出来なくなったのかなあ。」
「一度誰かを犠牲にして幸せを掴んだ者達は、同じ事を繰り返すんじゃないの。
 自分の幸せの為に他人を襲って食料を奪っても仕方がない。自分は悪くないと思ってしまうんだろうね。我慢して協力なんて出来ないのよ。」
「生き残った作物を屋内に入れて育てだした時は、なかなかやるなと思ったんだけどね。リーダー達も、年単位で食料を分配できるようにって方針を変えてたしね。」
「あれは良い案だったと思うわ。あのままリーダー達が殺されなければ、厳しい環境でも生きていけたんじゃないかな。」

「そもそも。以前の状態に戻っただけなんでしょう。トークさん達がいなくなった分人数は減ってるのに。」
「うーん。何だか彼らは人っていうより獣だね。理性が消えて欲望だけ。」
「いやいや、獣は利口だからね。協力し合う事もあるからね。」
「結局自分の首を絞める事になったわね。」
「自分達で自滅していっちゃたよね。」

 妖精達が牢獄島の感想を言っている間を、トーク達の見守り隊妖精がメモを渡しながら報告してまわっている。

 その様子を眺めながらロレーヌは妖精達の輪の中に入っていった。
「ロレーヌ、監視隊お疲れ様。」
「ありがとうございます。きちんとやり返す事が出来て、私嬉しい。」

 えへへと笑うロレーヌの可愛らしさに、妖精達も笑顔になってロレーヌの事を褒めている。

 トーク達の様子を報告していた妖精がロレーヌに話しかけた。
「トーク様達は、罪人達への供養の言葉も言っていたんだよ。
 あんな状況でもロレーヌを助けようとするくらいだからね。公正で優しい人達なんだろうね。」

 隣で聞いていた妖精が頷いて同意した。
「これからも私達が皆を見守ってあげないとね。クインさんは村長や商人達のいるマアイ村に、トークさん達を上手く移住させられてよかったよね。一ヵ所で見守るほうが私達も楽。」
「うんうん。人間達の事も観察できるし、見守りは楽しいね。」

 妖精達の言葉に笑顔で頷いたロレーヌ。
「トーク様達も幸せそうだしね。トーク様達の事も村長も商人達も、皆が充実した素敵な人生を送れるように見守ってあげなくちゃ。私達が最後の時までちゃんと見守るよ。受けた恩も仇も、全てきちんと返すのが私達妖精だからね。」
 話を聞いているバード達が拍手をしてくれる。ロレーヌは誇らしげに笑っていた。
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