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第1部 目指せゲームオーバー!
第9話 違う、そうじゃない
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お荷物呼ばわりされて勇者パーティーを追放された。
そのフレーズで上がりに上がったテンションのままに、オレは少女に向けて言った。
「なぁ! オレらこれから旅するんだけど、仲間になってくれよ! すっげー心強いから!!」
「えっ!? その……いいんですか? わたし、お荷物って言われたんですけど……」
「もちろん!」
他のメンバーの意見も聞かずに即答すると、天の声がやや引いたような声音で話しかけてきた。
「え、何? 急にどうしたの?」
「お荷物呼ばわりされて勇者パーティーを追放された……間違いない。これは『追放系』だぁ──!!」
追放系。
それは、異世界転生に並ぶファンタジー系フィクションのド定番。
無能で傲慢な勇者に追放された実力者が新天地で無双するという、もはや擦られに擦られまくったあのパターンだ。
そして追放系の主人公は、戦闘で役に立たないと切り捨てられるが、逆にそれ以外の能力に秀でていることが多い。
リフレは直接前線に出るタイプではなくサポーター──後方支援系だ。これは期待できる!!
なんてテンションの上がりまくったオレの胸中を知る由もない少女は、戸惑うようにドルーオに視線を向けた。
「好きにするといい。無論、仲間になるなら俺も歓迎する」
温かい笑みを浮かべて、元魔王は優しく言った。
ドルーオの言葉にホッと息を吐くと、少女は2人に向き直り、頭を下げた。
「わたし、リフレっていいます。至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いします」
ガイド役に、元魔王に、勇者パーティーを追放された少女。
なんとも素晴らしい布陣だ。
魔王に殺されに行く旅路が、より盤石なものになった。
「それにしても災難続きだな」
労うようなドルーオの言葉に、リフレは疲れたような顔で頷いた。
「はい……勇者パーティーの皆さん、瘴気で満たされてるダンジョンにも『いつも行ってるから余裕』って言って、何も準備しないまま突入して……」
そこで、オレの口から「ん?」と間抜けな声が漏れた。
不意に嫌な予感がした。
気のせいであることを祈りながら、そのまま聞き耳を立てる。
「そんなことしたの? 人族が瘴気を生身で浴びるとか、文字通りの自殺行為でしょ」
「でも、どれだけ言っても聞く耳も持ってもらえず……結局、突入から2分でパーティー全員が移動すらギリギリなくらい衰弱してしまい……」
「当然だ。人族が瘴気の中で活動するなら、聖族の加護を受ける必要があるからな。生還できただけ幸運だ」
「多分、前任のサポーターさんが何かしらの措置を施していたんだと思いますけど……何をどうしていたか、わたしにはさっぱりで……」
3人の会話をそこまで聞いて、オレはおずおずと手を挙げた。
大至急確認しなくてはいけない事案が発生していた。
「えっと、それってもしかして……元々勇者パーティーにはサポーターがいて、その人がいなくなったから後釜でリフレが入ったっていう、そんな感じ……?」
「……? はい、そんな感じですが……」
そっちかぁぁぁぁ!! 『実は有能なのに無能呼ばわりされたヤツが追放された後に加入した普通のヤツ』の方かぁぁあああっ!!
追放系ファンタジーには、ほぼほぼ決まりきった流れがある。
メンバーの1人(仮にAと呼称)が、お荷物呼ばわりされ勇者パーティーを追放される。
その後、新天地へと移ったAの真の実力が明らかになり、無双する。
その頃勇者パーティーは、Aの後釜(仮にBと呼称)と一緒に冒険に出る。
しかし、実は有能なAが普通の実力のBに変わったため、いつものパフォーマンスを発揮できずに敗走・崩壊する。
その過程でBは『な、なに言ってるんだ? そんなことできるわけないだろう……!?』とか『これを1人で……? それが本当なら、前任者はいったい何者なんだ……!?』とか、そういうリアクションをする。
ここまでがテンプレだ。
まぁ要するに、リフレはA側ではなくB側だったのである。
それに気付いた瞬間──リフレには申し訳ないが──こう叫びたくなった。
『違う、そうじゃない』
早とちりとは言え、元の期待が大きかった分よけいに泣きそうだ。
ガックリと項垂れていると、声が降ってきた。
「……カイト、どうしたのだ?」
「……何してんの?」
「え……?」
顔を上げると、3人が心配そうな顔でこちらを見ていた。
どうやら顔か声に出てしまっていたらしい。恥ずかしい。
「あっ、いや、なっ、なんでもないデス……」
大丈夫、落ち着け。
この場合、逆に言えばリフレの実力は一般的なサポーター相当なのが保証されてるんだ。
追放された主人公の後釜は、秀でた能力こそないが、少なくとも一般的な一人前ではある。
新加入であるBの実力が一般的な冒険者相当でなければ、前任者であるAがいかにヤバかったかが表現できないからだ。
ならばリフレも、サポーターとしてこのパーティーの生命線になってくれるはずだ。
ガチ無能ってことはないはずだ、ウン。
などと自分に言い聞かせても、やはりショックはなかなか抜けなかった。
(つづく)
そのフレーズで上がりに上がったテンションのままに、オレは少女に向けて言った。
「なぁ! オレらこれから旅するんだけど、仲間になってくれよ! すっげー心強いから!!」
「えっ!? その……いいんですか? わたし、お荷物って言われたんですけど……」
「もちろん!」
他のメンバーの意見も聞かずに即答すると、天の声がやや引いたような声音で話しかけてきた。
「え、何? 急にどうしたの?」
「お荷物呼ばわりされて勇者パーティーを追放された……間違いない。これは『追放系』だぁ──!!」
追放系。
それは、異世界転生に並ぶファンタジー系フィクションのド定番。
無能で傲慢な勇者に追放された実力者が新天地で無双するという、もはや擦られに擦られまくったあのパターンだ。
そして追放系の主人公は、戦闘で役に立たないと切り捨てられるが、逆にそれ以外の能力に秀でていることが多い。
リフレは直接前線に出るタイプではなくサポーター──後方支援系だ。これは期待できる!!
なんてテンションの上がりまくったオレの胸中を知る由もない少女は、戸惑うようにドルーオに視線を向けた。
「好きにするといい。無論、仲間になるなら俺も歓迎する」
温かい笑みを浮かべて、元魔王は優しく言った。
ドルーオの言葉にホッと息を吐くと、少女は2人に向き直り、頭を下げた。
「わたし、リフレっていいます。至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いします」
ガイド役に、元魔王に、勇者パーティーを追放された少女。
なんとも素晴らしい布陣だ。
魔王に殺されに行く旅路が、より盤石なものになった。
「それにしても災難続きだな」
労うようなドルーオの言葉に、リフレは疲れたような顔で頷いた。
「はい……勇者パーティーの皆さん、瘴気で満たされてるダンジョンにも『いつも行ってるから余裕』って言って、何も準備しないまま突入して……」
そこで、オレの口から「ん?」と間抜けな声が漏れた。
不意に嫌な予感がした。
気のせいであることを祈りながら、そのまま聞き耳を立てる。
「そんなことしたの? 人族が瘴気を生身で浴びるとか、文字通りの自殺行為でしょ」
「でも、どれだけ言っても聞く耳も持ってもらえず……結局、突入から2分でパーティー全員が移動すらギリギリなくらい衰弱してしまい……」
「当然だ。人族が瘴気の中で活動するなら、聖族の加護を受ける必要があるからな。生還できただけ幸運だ」
「多分、前任のサポーターさんが何かしらの措置を施していたんだと思いますけど……何をどうしていたか、わたしにはさっぱりで……」
3人の会話をそこまで聞いて、オレはおずおずと手を挙げた。
大至急確認しなくてはいけない事案が発生していた。
「えっと、それってもしかして……元々勇者パーティーにはサポーターがいて、その人がいなくなったから後釜でリフレが入ったっていう、そんな感じ……?」
「……? はい、そんな感じですが……」
そっちかぁぁぁぁ!! 『実は有能なのに無能呼ばわりされたヤツが追放された後に加入した普通のヤツ』の方かぁぁあああっ!!
追放系ファンタジーには、ほぼほぼ決まりきった流れがある。
メンバーの1人(仮にAと呼称)が、お荷物呼ばわりされ勇者パーティーを追放される。
その後、新天地へと移ったAの真の実力が明らかになり、無双する。
その頃勇者パーティーは、Aの後釜(仮にBと呼称)と一緒に冒険に出る。
しかし、実は有能なAが普通の実力のBに変わったため、いつものパフォーマンスを発揮できずに敗走・崩壊する。
その過程でBは『な、なに言ってるんだ? そんなことできるわけないだろう……!?』とか『これを1人で……? それが本当なら、前任者はいったい何者なんだ……!?』とか、そういうリアクションをする。
ここまでがテンプレだ。
まぁ要するに、リフレはA側ではなくB側だったのである。
それに気付いた瞬間──リフレには申し訳ないが──こう叫びたくなった。
『違う、そうじゃない』
早とちりとは言え、元の期待が大きかった分よけいに泣きそうだ。
ガックリと項垂れていると、声が降ってきた。
「……カイト、どうしたのだ?」
「……何してんの?」
「え……?」
顔を上げると、3人が心配そうな顔でこちらを見ていた。
どうやら顔か声に出てしまっていたらしい。恥ずかしい。
「あっ、いや、なっ、なんでもないデス……」
大丈夫、落ち着け。
この場合、逆に言えばリフレの実力は一般的なサポーター相当なのが保証されてるんだ。
追放された主人公の後釜は、秀でた能力こそないが、少なくとも一般的な一人前ではある。
新加入であるBの実力が一般的な冒険者相当でなければ、前任者であるAがいかにヤバかったかが表現できないからだ。
ならばリフレも、サポーターとしてこのパーティーの生命線になってくれるはずだ。
ガチ無能ってことはないはずだ、ウン。
などと自分に言い聞かせても、やはりショックはなかなか抜けなかった。
(つづく)
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