塔の中の小鳥

アオ

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  殿下の、頭がおかしい。

  そんなこと直接言ってしまうと、処刑されるのであえて頭の中で叫ばせてもらう。
  
  おかしい。

  普通、名前で呼ぶようには言わせない。王族たるもの、身内以外には名前で呼ばせるべきではない。

  それは世間離れした私でさえ知っている一般常識である。
 
  100歩譲って弟のレオには許したとしよう。だって、あんなに可愛らしい天使みたいな弟ですもの。

  心を許してしまうのはわかる。

  私もなんでも許してしまうもの。

  私は関係ないでしょう?

  体鍛えすぎて、頭まで筋肉になってしまったのかな。

  うん、きっとそうに違いない。




 「お嬢様、聞いてます? あなたはとんでもないことばかりしてること、頭でわかってますか?」

  


 耳にキーンとする程大きな声で、ビーが怒鳴っている。

 両腰に手を当てて仁王立ちしてる・・・・。やばい・・・。これは、真剣に怒ってる顔だわ。


 「ご、ごめんなさい・・・」

 「ごめんなさいという言葉はもう聞き飽きましたよ。

  そんなことは3歳児でも言えます。お嬢様は何歳になられました?」

 「20歳?」

 「そうですね、20歳にもなられて他の貴族の方ならばもうお嫁に行ってもおかしくない年齢です。

 なのにお嬢様ときたらいつまでたっても外にも出ず、出たかと思ったら馬に蹴られそうになったり、

 殿下に抱えられて帰ってこられたり、頭に鳥の羽つけて帰ってこられたり。

 どうしたら貴族らしく生活していただけるんでしょうかね!!

 せめて、せめて女性らしくしていただくことはできないんでしょうか?」


 おお、声の高さというか、空気が凍りついてる。

 こんな時のビーはジョンよりも数段恐ろしい。

 なのでひたすらごめんなさいというしない。これは長年の経験から学んだもの。

 「すみません・・・・」


 この説教は1時間以上は続いた。

 でもこのおかげで殿下と顔を合わせることなく過ごせた。

 さっきは、あんなこと言われどうすればいいかわからず下を向いて固まっていた。

 ベッドに居なかった私を探しにきてくれたビーが私たちを見つけ、真っ青になりながらも

 殿下に許可を得て下がらせてくれた。

 ビーが来てくれなかったらずっと固まっていた自信がある。だって、あんな時にどう答えればいいのか、

 あいにく私にはわからなかった。

 今まで読んだ書物には書いてなかった。

 




 朝食をとる時間には私の心はボロボロの雑巾のようにダメージを受けていた。

 流石に朝食中はお小言がなくとても静かだった。静かすぎて、胃が痛くなりそう・・・。

 だって、殿下が真正面にとても綺麗な仕草で朝食を取られてるんですもの。

 私のテーブルマナーは多分大丈夫と思う。思うけど、緊張しすぎて段々と合ってるんだか、合ってないんだかも

 不安になってくる。

 ああ、早くこの時間がすぎて欲しい!!

 新鮮で予想通りの濃縮されたオレンジなのに、味がわからなくなってしまっていた。

 私の動きが止まった瞬間、
 
 「きちんと食べないとまた倒れる。大体、君は細すぎる。これじゃあ、倒れるのは当たり前だ。

  これ以上、迷惑皆に迷惑かけたくなければちゃんと食べなさい」

 と、言われてしまった。

 「はい、申し訳ありません」
 
 もう、謝るしかない。確かに今まで食事も取らず本ばかり読んでいたし、

 皆が注意してくれていたのに聞き流してしまっていた。

 これからは、自分で自己管理しないと皆のことを守ることすら出来ない。

 父の後を継いだというのにこんな基本なことも出来ていなかった自分が情けない。
 
 静かだから胃が痛いとか、それどころじゃないのだ。

 20歳にもなって何やってんだろ。

 両目を閉じて大きく息を鼻から吸って深呼吸した。

 余計なことを考える暇はない。私は私が今やれることをきちんと進んでいかなければ。

 朝のデザートをよく噛み、味わい、殿下がいることでできることを考えた。
 
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