塔の中の小鳥

アオ

文字の大きさ
5 / 16

4

しおりを挟む
 朝は苦手だ。大体、夜に本を読むのが一番楽しい。
 蝋燭がゆらゆら揺れる元でソファーに座りお気に入りのクッションを抱えて
音もなくひっそりと読む時間が何よりも好きだ。

 なのに、こんな朝早くから私はなにしてるんだろうか。

 「あー、何やってんだよ!そんなんじゃ日が暮れちゃうよ」

 おかみさんが私の手元からパン生地を取り上げた。
 
 「ほら、ここはもっと力入れてこねないと」

 私も同じようにしてるつもりなんだけどうまくいかない。

 そう、私は何をやってもうまくいかないのだ。



 
 「ケイティーお嬢様、お帰りなさいませ」
 ジョンが無表情で出迎えた。
 「ただいま・・・」
 あまりにも疲れすぎてそう答えるので精一杯だった。

 この家の財産が殆どないと聞いてから私は領土の管理と同時に収入を得るために
働きに出ることにした。最初、ジョンがすごい勢いで止めたけどじゃあ収集得るためにどうすんのさって話になって
ジョンも働きに出るとか言ってたけど私がジョンに働いてもらって家にいるのっておかしいじゃない?
数ヶ月後は色々と計画したことが実になって収集を得ることができても
それまでの生活がままならない。
まして私だけじゃないく弟もいるから食べ物だけは確保しないと。

 ということでとりあえずすぐに収入を得られる村の仕事についてみた。

 私の素性はもちろん隠した。
もともと殆ど外に出たことなかったから誰も私のことを知らない。
父の葬式の時は黒いベールをしてたので顔も見られてない。

 人と話すことが苦手なのであまり人と関わることがない仕事を探した。


 最初は農業の手伝いをした。
 言われることを淡々とすれば話すこともしなくていいしそんなに難しいことはないかなって思っていた。
 家の中ばかりにいた私には力仕事は向いておらすすぐにクビになった。

 次は針仕事の手伝い。
 ドレスの注文を受けてお針子さんの指示どうりに縫うだけならできるかなって思ってたらこれまた考えが甘かった。今まで刺繍もろくにやったことなかった私は針を手にさしてばかりいて生地が血だらけになると言ってクビになった。

 その次はパン屋さん。仕事帰りに余ったパンをもらえるかな・・・なんて甘い考えが悪かった。
 あんなに重労働とは。


 ここまで来て、私はなんて無力なんだってしみじみ思ってしまった。
 今まで、何も考えずただ本を読んでばかりでなんの努力もしてこなかったのだ。
 正確にいうと伯爵家ゆえに何もしなくても生活できると思っていた。

 それなのにどんどん父の状況が悪くなり自分なりに何か力になればいいと思い色々やって見たが全て遅かったのだ。

 体の疲労感が深まると自分の思考も悪い方へ悪い方へといってしまう。
 ベッドにうつ伏せの状態で倒れケイティーはため息をついた。

 ドアの外からコンコンと控えめな音がした。

 「どうぞ~」
 枕に顔を当てたまま返事をするとクスクスと笑いながら誰かが入って来た。

 「さっすがお嬢様、過去最短時間でクビですか?」
 笑いを我慢しながら侍女のビーが入って来た。ビーは唯一残ってくれた侍女なんだけど全く侍女らしくない。
 そもそも私もお嬢様らしくないけどさ。

 「そうだよ。だってうまく捏ねることも均等の大きさに形成していくこともできないんだもん」
 
 力仕事ばかりでない。私はどうやら致命的に不器用だったらしい。

 「不器用なのはお針子さんの時にわかったと思うんですがね」

 そう言いながらビーは紅茶を入れてくれた。
 その匂いは私の大好きな紅茶だった。口では意地悪だけど行動は優しいお姉さんなんだよね。
 わかってる。わかってるんだけど・・・・

 「だからって笑わなくてもいいじゃない!!!」
 そう言って枕を投げたらヒョイっと避けて大爆笑になった。
 「だって・・・だって・・・あまりにも!!」
 
 涙を拭きながら大爆笑してる。ひどいや・・・。

 「大体、お嬢様には無理なんですよ。今まで本しか読んでなかったじゃないですか。頭はいいのに・・・すごく抜けてるというか、アホっていうか・・・」

 主人にアホって言えるのって彼女しかいないと思う。
 いや、アホなのはもういやってほどわかってるから追い討ちかけないで欲しいのに。

 「こら、たとえ真実でもご主人様に対してアホとはなんだ。アホとは」
 入り口からジョンが冷たい視線を私たちに向けながら言った。
 真実って・・・真実って・・・・。

 「これでさすがにお嬢様が自分で働くってことが無理なのがわかったと思います。
 どうかこれに懲りて働くのをおやめください」
 
 「でもさ、辞めろって言ったってこの先どうすればいいのよ。私は弟も育てなきゃいけないし、あなたたちにもお給料を払わなければいけないし。この前のことが成功したとしても収入に繋げるのはだいぶ先だし・・・・」

 そう、私はこのまま出来ないままじゃダメなんだ。
 今まで好きなことに逃げてばかりいたからこれからは頑張らないと。

 「そのことですが先ほど報告がありましてわずかながら収穫できたそうです」
 
 ジョンが珍しくにっこり笑っている。
 
 「ほんと!!本当に!!」
 
 自分がやったことで成功したのが初めてだった。やっぱり書物の通りだったのね。私がやったことは無駄じゃなかった。
 ここの土地にあった植物というはちゃんとあったんだ。







 少し光が見えてきたことに自然と唇がほころんだ。

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...