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Side 和
しおりを挟む彼女を見かけたのは本当に偶然だった。
双子の弟が「one」というアイドルグループに入って10年。
今まで一度もライブなんか行ったことないけど記念だからと家族で見に行くことになった。
「あれ?相葉先生?」
ライブは大成功で成長した姿を感動しながら帰るその時相葉先生と小さな女の子が手をつなぎながら
大興奮で喋っていたのが前方に見えた。
ニコニコでスキップでもしそうな勢いだ。
しかもいつも一つに結んでいる髪はさらさらになびかせて
指に絡ませたらどんなにきもちいいだろうか。
それに普段は黒のスーツばかりだったの言うのにあんな白のかわいらしいワンピースを着るなんて
想いもよらなかった。
そのせいか、いつもよりずっとやわらかく見える。
今までの相葉先生のイメージと言えば無機質というか
白衣のせいか白い感じだったが今はまさしくピンクだろう。
自分よりも年上の彼女がかわいいと思ってしまった。
その感情にびくりとする。
今まで女性をそんなふうに思ったことがなかったのだ。
弟の瞬のことで近寄ってきたり、まあ顔目的で近寄ったり計算高いというイメージでしかない。
うんざりしているところもあった。
正直人間不信かつうかバカにしていたところもあったし。
だけど高校時代に会えた恩師のおかげで人に対する考え方がかわり性格も丸くなってきた。
そんな先生に憧れ自分も教師を目指し生徒はかわいいと思えるけど
どうも仕事以上にのめり込んだ女性はいなかった。
だから相葉先生を見てドキドキするほどかわいいと思ってしまった自分がなんだか恥ずかしかった。
そう思っていたのにもかかわらず声をかけようか迷ったが
弟のことが内緒でこの場にいる説明をするわけにもいかないからそのままにしていた。
それにしても一緒にいたのは娘さんかな?
相葉先生にそっくりな笑顔だったからきっとそうだろう。
だけどたしか独身って聞いたような。
ということはたった一人で子供を育ててるのか。
「和にぃ、どうしたの?」
甥の誠が隣で手をひいた。
「ごめんごめん。帰ろうか」
促されてそのままにしたけど俺の心の中に彼女の笑顔は住み着いてしまった。
これは一目惚れか?
いやもともと知っている人に対しては一目惚れなんか言わないか。
ただあまりにも学校と表現が違いすぎて深く心に刻み込まれてしまったのだ。
あの笑顔をそばで見たい。
その思いだけが俺を動かし始めることになった。
数ヵ月後。
「入江先生、部活は?」
「あー、試合終わったばっかりで今日は休みです」
「じゃあ、たまには早くに帰ったらいかがですか?」
「相葉先生と一緒に帰りたいんです。ここで待ってますから」
「入江先生。また冷やかされますよ?」
「いいんじゃないんですか?俺達ラブラブなんだもん」
あー、今ため息ついた。そして睨んだね。
でも俺は知ってんだ。
俺に背中を向けた後、鼻歌を歌いながらお気に入りの紅茶を入れてくれることを。
素直にうれしいといわないところがなんだか彼女らしい。
そしてその鼻歌が瞬の歌だってことも。
かわいいなぁ、もう。
笑顔にしたいと思っててもなかなか見せてくれないけど、
彼女の鼻歌が聴けるならそれでいいかな。
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旦那さんの浮気&不倫相手と事故死という過去があるヒロインが健気で可愛い。
男女問わず生徒たちにも好かれてるし、入江先生とのその後も続編もあると嬉しいです(#^.^#)
にのさん
感想ありがとうございます。
ヒロインの性格は毎回悩むところですが
卑屈にはならず強い女性が好きなのでこうなってしまいました。
今回初めての子持ちヒロインなので反応が怖かったですが
感想いただいてとても嬉しかったです。
続編も小出しに出来たらと思っております。