普通の女子高生が異世界に行っても魔法は使えませんがたくましく生きます。

アオ

文字の大きさ
59 / 66
4章

17

しおりを挟む




 私は産まれた時から左手に不思議な痣があった。

 双子として産まれた片割れには何もなかったのに。

 その痣はだんだん濃くなり魔方陣が描かれているとわかった両親は私を売った。

 東の魔女に。

 



 「リリ、何してんだい。早くしな!」

 あれはまだ6歳の頃。まだ空も暗いうちから叩き起こされ家の水汲みから一日が始まる。

 東の魔女はギスギスといった表現が合う、キーキー声で叫ぶ骨ばった老女だった。

 常に片手には曲がった腰を支える杖を持っており、それは武器ではないかといつも思っていた。

 家の事はすべて幼い私に押し付けた。

 何がなんだかわからない私は杖が怖くて言うとおりにしていた。

 どのくらいの距離か今となってはわからないが、何十分もかけて大きな桶に川から水を汲んでこぼさないように

 注意しながら家の水ツボに入れる。

 それを数回繰り返した後に、朝食を東の魔女に作り食べている間に私は洗濯をする。

 それが終わって私の朝食となる。

 朝食といってもたった一つのパンとわずかな野菜スープのみ。

 少しの時間で少しの朝食をとった後、家の掃除をし今度は昼食を作る。

 でもそれは苦でもなんでもなかった。

 本当の地獄はそれからだった。

 暗い暗い地下牢のような部屋で魔法の勉強という名のいじめが始まる。

 自分がなぜ魔法の勉強をしなければわからない頃からそれは始まっていた。

 魔法の内容はいろいろな種類があり、

 特に攻撃系の魔法、光を使った攻撃魔法は私にとって恐怖でしかなかった。

 「なぜ、こんなこともできないの!」

 「こんなんじゃ西の魔女に負けちまうよ!」

 髪を振り乱しながらキーキー声で杖を振りかざして私を打つ。

 まともに光を出す方法すら教えてもらえない私は杖をうけるか、

 光の攻撃をまともに受けるかどちらかだった。

 光の攻撃は体の芯まで傷みが響く。
 
 なぜ、私はここに連れてこられたの?

 なぜ、西の魔女に負けてはだめなの?

 あったこともない、どんな人間かもわからない相手にどうしてそこまで敵対心があるのか。

 疑問と傷は日に日に増えるばかりだった。

 つらい・・・。誰か私を助けて。

 そう訴えてもだれも助けてくれるわけでもなく、

 ただ夜、自分の寒いベッドに戻ったときにうずくまって声を殺しながら

 しくしくと泣くことしかできなかった。

 


 


 数年後、徐々に魔法も覚え生活も楽になってきた。

 家事も魔法で出来るようになり、私の中で少し余裕が出てきたある日、
 
 自分が東の魔女の後継者というのがわかった時点で家族について聞いてみた。

 「お前は、私に売られたんだよ。それはそれは高くね。ふふっ。

 それとお前は双子でね。

 かたわらは、西の魔女に弟子入りしたってさ。

 よっぽど家族はお前のことが嫌いなんだなぁ」


 家族にも見捨てられたの? 私は。

 しかも、たった一人の姉妹は敵対しているところにいる。

 信じたくない気持ちで覚えたての魔法を使い、今の家族を覗き込んだ。

 両親はすでに死んでお墓が寂しく映し出された。


 そして、たった一人の姉妹は。




 とても楽しそうに人と戯れていた。






 どうして?

 


 こんなに私は辛いのに?






 こんなに私は寂しかったのに?




 貴方は私と同じ顔でそんなに楽しそうなの?





 たくさんの人に囲まれているの?

   






 涙を流しながら自分の手を眺め、運命を呪った。

 どうして私なのか。

 私が東の魔女をしなければいけないのか。

 泣きながら左手の魔方陣から出てくる虹を見つめた。

 






 それからの私はただ人形のように働いた。感情があると辛いだけ。ひたすら感情を殺した。

 数年働いて気付いたら東の魔女の後を継ぎ、スターター国の王宮で働くことになる。

 ここでの仕事は、国王の都合のいい人形を作り出すことだった。

 占いをし、少しでも自分の都合の悪いことをしようとする人間がいれば、
 
 そのものの心を吸い取り、それを鏡に封印し、国王の思いのままに操れるように

 新しい人格を植えつける。
 
 「リリ、お前は実にいい魔女だな」

 国王はいつも私にそういった。

 いい魔女?都合のいい魔女でしょ?

 軽蔑していても笑顔で「ありがとう」とだけ返した。

 そんな私をじっと見ていた人物がいた。

 国王の第一王子アラン王子だった。

 まるで何もかも見透かすような綺麗な目で私を見ていた。
 
 国王の数名いる子息の中で、唯一まともな人間。

 そんな人物に見つめられるとどうしていいのかわからなくなる。

 見つめられているとわかっていても知らない振りしてアラン王子の横を通り過ぎようとしたとき、

 「あなたの目って笑っているようで寂しい目してるんだね。まるで自分自身が人形のようだ」

 と、悲しそうな目で見つめながら私に言った。
 
 そして彼は去っていった。

 

 初めてだった。

 本当に初めてだった。

 この王宮に来てたくさんの人とであったのに、私の心の奥底を口にした人は。

 私はアラン王子が去って行った後姿をいつまでも見つめていた。
 
 なぜか左手を胸で握り締めたまま。

 

 その後、何度もアラン王子に会うことはあっても話す機会はなかった。

 遠くからアラン王子を見つめることしか出来なかった私は、

 あれ以来彼と話すことが出来なかった。

 話すことができないなら、せめて彼の姿だけでも。

 そう思い、彼の今の姿を鏡で映し出した。


 彼はとても楽しそうに笑っていた。そしてその隣には私とそっくりな女性がならんでいた。




 どうして?





 どうしてあなたは私の幸せばかりうばっていくの?

 あなたは私にないものずべてを手に入れてるじゃないの。

 なのにどうしてアラン王子まで奪っていくの?

 私はやっぱり一人でいなければいけないの?

 この先も一人でいなきゃいけないの?







 もういやだ。

 こんな世界、壊れてしまえ。






 なくなってしまえ―――――――。





 







 

 













しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※表紙はAIにより作成したものです。 ※小説内容にはAI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処理中です...