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1章
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しおりを挟むいつも夢の中で私を呼ぶ声がする。
それはとても暖かく
とても切なく、
とてもいとしい声。
その声を聞くとじんわりと心の中が暖かくなっていた。
両親の声でもない、
友達の声でもない。
その声はだんだんと大きくなり
いつしか私の心に住み着いた。
この人の顔を見てみたい。
この人の笑顔を見てみたい。
なんとなく、本当になんとなくだけどそう思いながら目が覚めるようになって数ヶ月経っていた。
「メーン!!」
スパンと音を立て思いっきり竹刀を振った。相手の頭に綺麗に入ったのが感触でわかる。
バッと三人の審判が赤旗を上げる。
「メンあり、勝負あり!!」
主審の声が、体育館に響き渡った。
それと同時に大きな歓声が聞こえる。面を被っていいてもその声が大きく聞こえる。
両目をつぶって勝利を噛み締めた。
勝った。私、勝ったんだ!!
はやる気持ちを抑え、お互いに礼を、審判に礼を神棚に礼をして私は監督と部員の下に駆け寄った。
「ひなた~~!!おめでとう!!」
「おつかれさま!!」
「優勝だ!!」
ぞれぞればらばらなことを言ってみんなが私の頭を面の上からバシバシとたたく。
叩かれたことで目の上に溜まっていた汗が目に入りむちゃくちゃ目にしみた。
「ありがと~うれしいよぅ、勝てたよぅ~」
にへらっっと笑いながら友だちに抱きついた。
抱きつきながら私は涙がじんわり出てきた。監督なんか、号泣していた。体は熊のように大きいけど、
目はタレ目な監督はみんなにパンダ先生と呼ばれ親しまれていた。
パンダ監督は練習中は鬼のように厳しいけど努力していることはちゃんとみていてくれる。
監督に恵まれたなってパンダの瞳から溢れる涙をみながらしみじみ思った。
私、菊池 ひなた(きくち ひなた)17歳。
この度、剣道でインターハイ個人戦の部で優勝しました。
ここまでそりゃー血の出る稽古をしましたよ。
女捨ててたところもあり。
周りの友だちは次々と彼氏を作り高校生活をエンジョイしてた時、
臭い防具を着て朝から晩まで毎日稽古を頑張りましたとも。
冬なんか年越し稽古とか、夜中ぶっ通しで先生に稽古してもらったり
夏は合宿や合同練習を積極的に組んでもらった。
自分の動きもビデオに撮って型を見直したり、
友達に分析してもらったり、出来ることはなんでも頑張った。
でもそんな生活はいやじゃなかった。
心と体を磨ける武道は私にとってかけがえの無いものだった。
父は剣道の監督、母は合気道の監督だった両親のもと、
私は当たり前のように武道をたしなんで育ったから。
その両親も数年前、交通事故に巻き込まれ他界。
今は親戚のおじさんに保証人になってもらい学校の寮に入っている。
だから家族というものは私にない。
家族を失った私にとって武道場は家と同じ空間になった。
武道場で頑張れば頑張るほど両親がほめてくれそうで。
両親の笑顔がみれそうで。
だからみんなとは少し違った生活になってしまっても
私はなんとも思わなかった。
ここにくれば両親と繋がっていられると安心していた。
そう、あの世界に行くまでは。
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