2 / 66
1章
2
しおりを挟む個人戦が終わり、へとへとになった体を休めるために更衣室でボーっとベンチに座り込む。
かなり長い時間一人でぼーっとしていた為、
いつの間にか他校の生徒も自分の学校のメンバーも誰もいなくなっていた。
さっきまで、あんなに騒がしかったのになぁ。
しんみり周りを見渡す。
おわったなぁ。相手の人大きかったなぁ。
そう、私は身長が155センチしかない。もう、ちびっこいと言われるのは慣れている。
いいのよ、小さくったって優勝はできるのよ!!
となぜか握りこぶしを握って力を入れてると親友の奈美が更衣室に入ってきた。
「お疲れ~。ってあんた何やってんの。まだ力有り余ってんの。あんなに延長繰り返したくせに」
といいながら私の横に座りながらポカリをくれた。
「ありがとう」
苦笑いしながら受け取り一気にポカリを飲み干した。
「か~、一仕事の後はうまいね~」
「あんた、いったいいくつよ」
奈美に横目で呆れられた。
ひどいなぁ。花の17歳に向かって。ぶちぶちぶち。
「ひどいって思うならそのおっさん臭さなおしなさい。
だいたい、見かけは優等生みたいなくせに、蓋をあければただのおっさんだもんね、ひなたって」
まだまだ奈美の攻撃が続く。
「う、おっさんて、おっさんって。ちょっと世間より大人なだけじゃないの」
両手で顔を隠して泣きまねをしてみる。
「そんな風にしてるとたくさん男寄ってくるのにねぇ。
見た目はいまどき珍しい腰まで長い黒髪のストレート、くりくりした大きな目、
マスカラてんこ盛りのような睫毛、
グロスをつけてるかのようなプッくりとした唇、
剣道で室内にこもりっきりのため色白、
しかもどんなに食べても太らない体質ときた。
成績も悪くないし。なのに彼氏が出来ないのはそのギャップの差だね。
残念ながら剣道部員から全生徒に知れ渡っている、あなたが残念なオヤジ少女であることを」
ちょっと、親友さん。ほめてるんだか、けなしてるんだか。
「いいのよ、私には日本の男は合わないのよ。きっと白馬に乗った王子様が迎えに来てるれるのよ」
私は両手を大きく広げ、空を仰ぐ。そしていつもの口癖。
「また、始まった。ま、現実問題王子様よりも顧問と監督ががそろそろ痺れを切らして迎えに来そうだから
早く着替えなさいな」
そう言って手をひらひらしながら更衣室を出て行った。
ううん、つれないねぇ。もうちょっと私の夢物語に付き合ってよ。
ぶつぶつ言いながら部活のみんなでそろえたジャージに着替えた。制服は・・・しわくちゃになるけど、
もうめんどくさい。表彰式も終わったし、自転車で帰るならジャージでいいや。
表彰式も無事終え、トロフィーと賞状は顧問が預かってもらった。一度、校長に報告がてら見せなきゃいけないらしい。私は荷物が少なくなるのでラッキーとお願いした。
それから部員は解散となり私は防具と竹刀を担いで奈美と自転車で家まで帰ることにした。
いつもなら寮に戻る前にちょと小腹が空いたからとファーストフードに寄るのだけど、
今日はそんな気分というか、珍しく気力がなかった。
優勝の打ち上げは後日ということで自宅通いの奈美と途中で別れて自分の寮に向かった。
トロフィーが帰ってきたら一日部活を休んで両親のお墓まいりに行こう、そこで報告しよう。
そんなことを考えながら自転車を大きく漕いだ。
そこを曲がれば寮が見えてくる。と、いうところで
「ドォ~~ン!!!!」
大きな爆発音が後ろから聞こえ、大きな風が私を自転車ごと押したと
感じた瞬間。
痛みも物が飛んできた様子もないのに、ふっと気を失ってしまった。
くんくんくんっっ。
何か、匂いを嗅がれているような鼻息が聞こえる。
う~ん。
ぺちぺちぺち。
小さな物が私に頬を叩いてるんだか、引っ掻いてるんだか変な感触がする。
もちっと寝かせてくれよ、今日は疲れたんだから。
もぞもぞもぞもぞ。
耳あたりから冷たい何かがあたり、グイグイ押してくる。
くすぐったいなぁ。
ふんふんふんふん。
・・・・・。
ぱちっと音がしたように目が覚めた。
・・・・・・。
いろんな動物(らしきもの)が私を囲んでいる。
はいっ?動物?
がばっと上半身を起こして周りを見渡す。
知ってる動物と微妙に違う。違うけど、一体何匹いるの?10匹ぐらいはいる?なにこの動物、みたことない。
けど人間でもないと思う。
自分を確かめてみる。ジャージ姿のままだ。腕にはちゃんと部員みんなで考えた言葉が刻まれてる。
横には剣道の竹刀とスポーツバックと自転車が転がっている。
とりあえず、動物(らしきもの)に声をかけてみよう。
「こ、こんにちは。」
「・・・・・・(返答なし)」
だよなぁ。通じるわけ無いか。はぁ。とぐったりと首がうなだれた。
『お姉ちゃんは誰?なんでこんなところで寝てるの?』
ウサギらしきものが私に向かって声をかけてきた。ウサギらしきというのはウサギみたいに耳は長いのに
体はどうみても犬っぽい。がっつりして筋肉質ぽい。
夢をみてるんだ。そうだ。インターハイで頑張りすぎて
疲れが溜まって寝てるんだ、そうに違いない。
もう一度寝たら自分のベッドの上。
『ねえ、なんでそんなへんな格好してるの?』
今度は、犬らしきものが声をかけてきた。犬らしきっていうのは顔は犬っぽいけど
大きさが犬じゃない。ネズミだ。尻尾が、やたらとふさふさして長い。
夢じゃないらしい。
帰り道に爆破かなんかに巻きこまれて
死んだのかしら?と思い脈を取ってみるけどちゃんと脈はある。
冷静に冷静に冷静に考えよう。
こんなときは目をつぶって10回深呼吸をして。
ゆっくり見渡してみる。
どうみても日本じゃない。どっちかというと西洋みたい。
私は違う世界に来たんだろうか。
しかも、ジャージで。真っ赤な真っ赤なジャージ。せめて制服で来たかった。
スポーツバックの中に入ってるけどさ。多分、しわくちゃになってると思われる。
まあ、そんなことどうでもいい。
私は元の世界に戻れるのか。
ここには人間はいるのか。
知りたいことは沢山ある。
「私は菊池 ひなたっていうの。何で寝てるかといわれても
私も気づいたらココにいたからよくわかんないの。
へんな格好って言ったけど私みたいな人間が近くにいるの?」
動物らしきものに聞いてみた。
すると、
『ここから歩いて5時間ぐらい南にいくと王宮があるよ。そこには
沢山の術者とかいるから。おねえちゃんとはちょっと違う格好してるよ』
ということは人間がいるのね。
術者ってなに?魔法使いみたいなもんでしょうか。某有名魔法使い物語みたいなのとか。
しかも王宮って。
「ここの人間はみんな貴方たちと話せるの?」
『ううん。おねえちゃんが初めて。まさか僕たちの言葉が通じるとは思わなかったよ』
なんて、メルヘンな世界にきたのだろうか。
私にとってはコミュニケーションが取れるというのは都合の良いというか、便利というか。
とりわけこの子たちと言葉が通じるだけでもなんとかやっていけそう。
4
あなたにおすすめの小説
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※表紙はAIにより作成したものです。
※小説内容にはAI不使用です。
※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる