Smile

アオ

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1章

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 さすがに長時間バックに制服を入れてると、しわになっていた。
 というか、私が気を失ってから実質何時間ぐらい経ってるんかな。
 しわを伸ばしながら鏡の前で立ってみる。うーん、スカートのプリーツがヨレってる。
 私の学校はセーラー服。昔ながらのセーラー服が可愛くて大好きなんだ。
 セーラー服は紺色だけど、リボンのところだけが白。
 スカートはプリーツスカートで襞が多くてこれがシワになったらとってもテンションが下がる。
 シワになり難い生地だからいいのだけど大丈夫かなぁと
 後ろを向いてお尻あたりをチェックする。
 靴下は校章が入った紺色のハイソックス。
 そして、白のスニーカー。これがいつもの私。
 やっぱり制服が一番落ち着くな。
 髪をポニーテールにして最後にもう一度全体をチェックした。
 
 その時、扉のほうからノックの音がした。
 「どーぞ?」
 こんな時どうすればいいのかわからないので自分で扉を開ける。
 すると、ととてもかわいらしいめがねをかけて、黒い服に白いフリルの付いたエプロンを着たメイドさんらしき人が立っている。
「失礼します。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
 にこやかに言われたのでつられてニコニコしてしまった。
 歳は私より少し上かな。だけどフレンドリーな笑顔を見たらつられてニコニコしてしまう。
 威圧感がある王様とは全く違った。
 「ど、どうぞ」
 ドアを大きく広げ、中へ招いた。
 部屋に入り私に向かって大きくお辞儀をしハキハキした口調で挨拶した。
 「はじめまして、ヒナタさま。わたくし、ニコと申しまして、
 本日付よりヒナタ様専属のメイドとなりました。
 どうぞ、何なりとご用件をもうしつけくださいませ」
 せ、専属・・・。専属って・・・。
 「はじめまして、菊池ひなたといいます。
 ええと、そんなメイドさんつけてもらうほどの人間じゃないのですが。
 ううん、困ったなぁ。私、今までも一人で身の回りのことやってきたんで
 メイドさん付いてもらわなくても大丈夫というか申し訳ないんですけど」
 そう話すと彼女はとてもびっくりした表情になった。
 「ああ、貴方がいやだとかそんなんじゃなくって
 いままでそんな習慣がなかったから。
 ほら、着替えもひとりで出来たでしょう?」
 制服のスカートを持ってくるりと回り制服を見せた。
 「それに掃除も洗濯も自分でできるんですよ。
 食事も一通り作れますし場所さえ教えていただいたらお手間とらせません!!」
 ニコはかなり驚いた。
 異世界からきたというこの少女。
 予言の少女と言われ国王からの説明が行き届いてないとはいえ、
 奢る様子もなく、自分のことは自分で出来るという。
 メイドである自分に対しても丁寧な言葉であり、
 想像していた少女とあまりにもかけ離れていた。
 
 ニコが黙ってマジマジとひなたを見つめはじめた為、
 ひなたは相手が怒ったと勘違いをし、
 パニックになりどんどんわけわからない言い訳をし始めた。
 「それにね、今まで部活でもまだ高校二年生だから先輩の世話をしたり
 学級委員では小間使いのようにこき使われ、
 人の世話ばっかりしてたからそっちのほうが楽なの。
 誰かにお世話してもらうことに慣れてないのよ。
 だから、ね。ごめんなさいね。」
 と、そこまで話したところでニコはひなたのことがすっかり気に入ってしまった。
 今の話で人が良すぎるとわかってしまったのだ。
 「でも、それでは私は職を失ってしまいます。
 どうか、ご慈悲を。」
 ウルウルと瞳に涙がたまりながらも自分よりも10センチほど小さな少女が上目遣いで訴えてくる。
 どうすればいいのか。すごく困った。こんな可愛らしい少女を職なしにはできない。
 かと言って人を使うことには慣れてないし・・・。
 あ!そうだ!
 「じゃあ、私の教育係は?もしくはお話し相手。
 ここの世界のことはよくわからないから。年も近いみたいだし。
 私、17歳なんです。あなたは幾つですか?」
 「わたくしも17歳です。いっしょでございますね。」
 「同じ歳なの?こっちに来てのはじめての友達になってくれる?
 私の教育係、兼お友達。それならうれしいなぁ。」
 ニコはひなたのとんでもない発案にびっくりした。
 そもそも、教育係は別に付くことは知っていた。
 あの国王ならば彼女がこの世界で困らないように細かく手配することはわかっていた。
 「そ、それは・・・」
 「ねね、決まり。メイドじゃなくて教育係兼おともだち。
 だから、敬語はなしね。人前はあなたの立場があるから
 敬語でもしょうがないけど。なるべくなら普通に話してほしいな。
 言葉遣いに気を使わないで話せる人がいるとそれだけでも助かるの。お願い!!」
 ひなたは両手を合わせて拝むように頭を下げた。
 その姿を眺めニコはしばらく悩んだ挙句、
 「わかった。よろしくね」
 と言ってしまった。あまりにも長い間、頭を下げられ言わざる得なかった。
 ニコの敬語を使わない言葉で、満面の笑みを浮かべひなたは万歳をした。
 「よかった~。私、どうしようかとあわてちゃったよ~」
 「じゃあ、衣装は着替えたようだし・・・・。って、ひなたその格好で行くつもり??」
 ニコは改めてひなたの服を見回した。
 実は国王からドレスが用意され、自分の後ろのキャスターに持ってきていたのだった。
 それを知らないひなたは制服をぐるりと見渡した。

 しわもさっきよりはましだし、
 スカート丈も膝よりほんの少し短いだけで太もも出すほど短いわけでもないし、
 ハイソックスは汚れてないし、
 スニーカーも洗ったばっかできれいだし。
 「え?だめ?一応制服だから正装に近いものだしいいかなって思ったんだけど」
 「あのね、この国ではあまり女性は足を出さないのよ。
 メイドとか商人は仕事上ふくらはぎまでの長さだけど大体は足が隠れるのね。
 あなたの足は綺麗だから出してもいいと思うけど、男性が目のやり場に困ると思う。
 びっくりされると思うけどいいの?」

 確かにニコのスカートはふくらはぎまでの長さだった。
 ドレスは正直着る勇気がなかった。
 人生の中でドレスなんて着た事もないし、
 自分に合うとは到底思えなかった。

 「でも、ヒラヒラのドレスを着る勇気はないよ。いいよ、どうせ馴れてるし。
 国王になんか言われたら考える。秩序を乱すな~とかはしたない~とか」
 ニコは国王がどんな態度を示すのか、読めなかった。
 しかし、ひなたの言う通り彼女の世界での正装ならば一度これで会うのもいいのではないかと判断した。
 ニコは一度、ひなたの周りをチェックし、向き直ってニッコリと微笑んだ。


 「わかった。じゃあ、陛下のところへ案内するわ」
 

  

  

 
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