43 / 66
4章
1
しおりを挟むヒナタ・・・。
もう時間が来ている。
ヒナタ・・・・。
もうそこまできてるよ・・・。
優しく私に誰かがささやく。
体が重い。
鉛のように体が重い。
久しぶりに懐かしい夢を見たような気がするのに。
「ヒナタ、おはよう」
いつものように、ニコが私のお世話をしに来た。
西の魔女であることは周りには秘密なので、そのままメイドを続けていた。
「おはよう・・・」
片手で頭を押さえつつもゆっくりと起きあがる。
「ヒナタ、顔色悪いよ。大丈夫?」
私の様子がいつもと違うことに気がついてすぐに近寄ってくる。
「う・・・ん。多分、大丈夫じゃない」
起き上がっていたのにバタリと後ろに倒れてまた寝てしまった。
熱があるだろうな、これは。体温計なんかないけど今までの経験上そう感じた。
ニコは私の額に手を当て、
「やだ、熱いじゃないの。どこか、苦しい?」
心配そうに覗き込んできた。
「苦しくはないけど・・・・。だるいかな」
喉も鼻も大丈夫。風邪っぽくはない。ただ、体が重く沈み込んでしまう。
「今、お医者様呼んでくるね」
パタパタと慌ててニコは部屋を出た。
ベッドの足元にいたカイが心配して覗き込む。
『大丈夫?』
にっこりと笑いかえすだけで精一杯だった。
そして私はまた深い眠りについた。
冷たいものが額に当たる。
とても気持ちいい。
うっすらと目を開けるとロンが見えた。
「ロン」
声を出そうと思っても掠れてしまい思うように声が出なかった。
「ヒナタ、無理しなくてもいいよ」
私のベッドの脇に腰をかけた状態で優しく私に話しかけながら髪を撫でた。
「疲れからくる熱だろうって。だからゆっくりお休み」
疲れか・・・。
確かに、こっちに来て突っ走ってたな。
人質も取り返して帰ってきてから一週間たって、気が緩んじゃったんだね。
「ごめんね、ヒナタ。いっぱい無理させたね」
ロンが、申し訳なさそうに謝る。
「こっちの世界に馴れてないうちからいろんなことさせちゃって。
疲れもたまるよな。気付いてあげれなくて、ごめん」
そんな、ロンのせいじゃないのに。
首をぶんぶんと横に振った。
「ヒナタがよくなるまで看病するから」
なんて事をこの人は言うんだろう。
「そんなこと許されるはずがないじゃない」
「大丈夫、仕事はこの部屋でも出来る。
それよりもヒナタの側にいたいんだ」
病気の時って気弱になるから、誰かが側にいてほしいって誰もが思う。
両親が死んでから病気になっても一人でいたから、こうやって側にいてくれる人がいると、
涙がでそうなくらいうれしい。
というか、自然と涙が流れてしまった。
「よしよし、いっぱい泣いていいよ?」
そんな私の頭を撫でながらロンは優しく言った。
悲しいわけじゃないのにどうして涙がでるんだろう。
両手で顔を隠しながら泣いてしまった。
その間、ロンはずっと私の頭を撫でてくれた。
そしていつの間にかまた眠ってしまった。
夜になり、ニコは夕食を手にヒナタの部屋を訪れた。
「ヒナタはどうですか?」
ニコがそっと部屋に入ってくる。
「熱は少し下がったと思う」
ヒナタの横に椅子を持ってきて、仕事をしているロンは、
いつもよりも険しい表情をしていた。
「どうされたのですか?」
「ちょっと気になることがあってね」
「気になること・・・・ですか?」
うなずいたロンはニコの今見ていた資料を渡した。
医師の受診後、中毒症状が見られた。
実はヒナタに毒が盛られていたのだ。
しかも、致死量ではなく、ほんのわずか。
「少しずつ・・・・ということですか?」
急に殺すのではなく、少しずつ少しずつ体を弱らせるということだろう。
「ヒナタはもちろん気付いていない。
カイ、ちょっといいかな?」
ロンとベッドを挟んで反対側にいたカイは、
しぶしぶと言った様子でロンの元にいく。
「多分、君が一番鼻が聞くと思うんだ。オレが、犯人を見つけるまで
注意してほしい。たのむ」
じっとロンの目を見ていたカイはわかったというようにうなずいた。
「ニコ、この事はヒナタに気付かれないように」
「承知しました。」
ヒナタはこの事を気付く様子もなく、ぐっすりと眠っていた。
「誰がこんなことを・・・。かわいそう」
そうつぶやいたニコとともに悔しそうにヒナタをロンが見つめる。
予言の少女などをしなかったらこんなことにはならなかったのに。
オレがもっとしっかりしていたら。
彼女の周りにもっと気を配っていたら。
後悔ばかりが湧き上がってくる。
だが、今は後悔している場合じゃない。
一日も一時間でも早く犯人を探し出し、ヒナタを助けないといけない。
そう、強く強く心に誓った。
2
あなたにおすすめの小説
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※表紙はAIにより作成したものです。
※小説内容にはAI不使用です。
※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる