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4章
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しおりを挟むだんだん、体が重く感じる。
深い海の底に沈んでいくようで、
深い森に迷い込んだようで。
自分がどこにいるのか、
自分が何をしたかったのか、
だんだん忘れていきそうで。
そんな自分が、歯がゆくて仕方がなかった。
「まだ特定できないのですか?」
イライラした口調で、ロンは医者に問い詰める。
「申し訳ありません。私どもが見たことない症状でして・・・」
数名の医者は青い顔をして答える。
「この国のものでない可能性が高いです。
そうなった場合、他国に協力を求めたほうが・・」
「もうすでにやってます!!」
ダンっと机をたたいてロンは怒りを露にした。
自分が出来る事はすべてやった。
手を尽くした。
だけど、誰一人この毒に関しての知識がないのだ。
「もういいです、下がってください」
医師たちを下がらせ、窓際に立つ。
ヒナタが具合悪くなって一週間経つ。
徐々に体力が弱ってきて、今はベッドから起き上がるのがやっとのほどだった。
毒に関しての医学書をいろいろな国から集めても
ヒナタが犯されてるのは毒であることまではわかるが、その治療法などは記されてないのだ。
ニコはニコで、魔法書をかなり調べているが、これといって成果はなかった。
「くそっ」
そういって窓をたたく。
焦ってはダメだとわかっているが、こうも足も手も出ないとなると、
自分が情けなくて、悔しい。
こんなことをしてる時間もヒナタは弱っているのに。
自分が代われるものならかわりたい。
どうにかならないのか。
ロンの焦っている気持ちをよく知っているロールはなんともいえない表情で
ただひたすら自分の主を見つめていた。
『ヒナタ、大丈夫?』
ペロペロと私を舐めて起こすカイ。
もう、お昼なのね。
カイはこうやって毎日私を起こしてくれる。
「うん、大丈夫」
起きなきゃと思っても体がうまく動かない。
体だけじゃなく、頭もだんだん鈍くなってるような気がする。
考えなきゃって思うと眠くなってしまう。
自分がなくなりそうで、不安になる。
側にいたニコが心配そうに私を支えてくれた。
「ヒナタ、眠い?」
うん、と、うなずく。
体が思うように動かないに加え眠たくなってしまっていくので、
常にぼーっとしてしまう。
ニコの声もだんだん遠くになっている。
私を再び寝かせてそっと頭を撫でてくれる感触が気持ちいい。
「ヒナタ、もう少しの辛抱だからね。もう少しでわかりそうなんだ」
わかり・・・そう?
「だから、ヒナタ。自分を忘れないでね。
私たちのこと、忘れないでね」
忘れ・・・ないよ。
頑張るから・・・。
そう誓いながらも私はまた深い眠りについた。
ロンとアランは時間がある限り二人で書物室に篭りヒナタの体の毒物を探るべく調べていた。
アランもヒナタのことが心配で、自分が力になれることがあれば協力する、
自分が持っているものは知識だけだからとロンに言ってきたのだった。
ロンはヒナタがいなくなって得するのはスターター国以外考えられなかった。
だから、この国からの毒を徹底的に調べた。
アラン王子も協力して数日徹夜もしたが、何一つわからなかった。
しかし、ロンはひとつだけ引っかかっていることがあった。
「なあ、アラン。あの国で一番毒物に詳しいのは誰だ?」
数日の間で、この二人はあっという間に仲良くなり、言葉も砕けた口調になっていた。
性格はまったく違うが、なぜか気が合うのだ。
「誰だと思う?」
「もしかして、東の魔女?」
「アタリ」
やっぱりか。
「じゃあ、新しく調合することは?」
「あ~、ヤツなら出来るよ。つうか、得意だよそこらへんは」
新しく調合したものならどんなに調べてもわからないはずだ。
でも。
「ヒナタが戻って来てからここの警備は一層厳しくしている。
食べ物や、身の回りのものも。
なのに、どうやって毒物をヒナタだけに与えることができるのか」
そう、毒見とまではいかないがニコとカイが必ず確認している。
弱っていてもヒナタだけが口にしているもの、
体に取り入れているもの・・・・・。
それさえわかれば。
「身の回りのものは全部確認したんだよね。石鹸とか化粧品とか」
アランの質問にうなずいた。
もともと化粧はしないのでほとんど使っていない。
石鹸も確認したが何もなかった。
「だいたいカイがいるのに・・・・」
あの野獣はかなり頭がいい。
そして、どの動物よりもヒナタを守ることに徹底し、
心配しているのが手に取るようにわかる。
だから信頼できる。
そんなカイが24時間見張って守っているのだ、普通の状態よりよっぽど安全なのだ。
「動物までもかいくぐって侵入できるとはありえない」
アランも同じ考えだろう、そうつぶやいた。
「かといって間者はいない」
人間関係も徹底的に調べた。
安全な人間しか身の回りには置いていない。
「しいていえば、僕が一番怪しいだろうけどさ」
くすっと笑いながらアランがつぶやく。
ロンにとってそれもありえなかった。
黒の血判のせいでアランの感情が少しわかるようになっている。
アランは本気でヒナタを心配して解決法を探している。
そのため、夜もあまり寝ず、少し体調を崩しているくらいだ。
しかし、城の者はそんな事は知らない。
あくまでも「スターター国の第一王子」なのだ。
直接アランになにか言ってくる者はいないが、遠巻きにヒソヒソと
陰湿なうわさを流れていることも、多分彼も知っているだろう。
「アランのためにも早く解決しないとな」
にっこり笑ってロンは言った。
「ロンってほんといい男だよねぇ~。
僕、女だったら絶対惚れるよ~」
ガバッとそういって抱きついてきた。
「わ、わ。やめろって」
そんな趣味はないぞと慌てて離そうとするもなかなか離れてくれず。
「陛下!もしかしたら・・・・」
慌ててノックをすることを忘れて部屋に入ってきたロールがドアのところで立ち止まってしまった。
「これは・・ちがうぞ!こいつが!」
真っ赤になりながらロンはアランを引っぺがした。
「・・・・。お邪魔・・・でしたか?」
「だから違うって!」
必死になって否定しても顔が赤いままではあまり説得力がなく。
ロールは冷ややかな目でロンを見た。
「まあ、その事は後ほど。それよりも、もしかしたら毒がどこから入ったのかわかるかもしれません」
その言葉に、ロンもアランも思わず立ち上がってしまった。
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