普通の女子高生が異世界に行っても魔法は使えませんがたくましく生きます。

アオ

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4章

13

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 私が眠ると名前を呼ぶ声がする・・・・・・。

 それはとても暖かく、

 とても切なく、

 とてもいとしい声。

 

 この声。

 どこかで聞いた気がする。

 この声。

 とても愛おしかった気がする。

 でも・・・・・。












 ロンは、カイとともに暗く威厳のある城の入り口に立っていた。

 先頭を切っていったアラン王子のおかげで誰もいなかった。
 
 皆、床の上で倒れていた。

 城内であるというのに人数が少なかったことは今のこの国の現状を物語っている。

 「カイ」

 倒れていた数人をカイの背中に乗せていく。幸い、血も流れておらず気絶だけさせられているようだ。

 さすがだな・・・。

 普段はヘラヘラしているようだが剣術の腕は長けているらしい。

 最後の一人を乗せてロンはカイとともに親衛隊の部屋へと向った。

 親衛隊の部屋といってもそこで寝泊りしているわけではなく食事をするのにあてがわれており、

 テーブルと椅子がただ並べられており食堂のようなものだった。
 
 あるテーブルを囲んで男達が話し込んでいた。

 「あの少女、大丈夫かなぁ」

 「魔女が連れて行ったから、命は大丈夫だろうけど。

 でも、多分あの少女じゃなくなってしまうだろうな」

 「あの子ならこの世界、変えられると思ったのに」

 男達はそれぞれため息をついた。同じ国の城で働く人間だからこそ、リリの怖さを知っているのだった。
 
 コンコン。

 ノックをする音がした。
 
 親衛隊の部屋は出入り自由になっているため今までだれもノックをしたことが無い。

 男達が顔を見合わせ、一番体格のいい男が声を上げた。

 「どうぞ」

 すると、ドアをゆっくりと開けながら入ってきた男に一同呆然とする。

 その男はスルリと中に入ると、後ろにいた野獣に声をかけ並んで立った。

 そして黒いフードと口の布を外し銀髪と青い瞳を見た瞬間、男達は凍りついた。

 思いもがけない人物の出現で瞬きをすることを忘れ、

 野獣の背に、自分たちの仲間が乗っていることにはまだ気付いていない。

 「親衛隊の方ですね。あなた達と話し合いに来ました。

 フォレット国、国王ロナルド・ブレギュラー・13世です」

 ニコリと微笑むその姿は、眩しく銀髪もキラキラと輝いている。

 「あ・・・の・・・・・。本物・・・ですよね」

 「はい」

 ほとんどのものがありえない!!と心の中で叫んだ。

 普通、国王自ら動くことはない。
 
 まして、敵国に乗り込むなんて。

 王族の変わりはいないし、指揮を執る者として先頭に立つこと自体やってはいけないことと

 誰もがわかっていた。

 それに、周りのものが止めるだろう。

 「どうして国王自らこんなところへ」
 
 「それよりもこの方達をお返ししようと思いまして。カイ」

 呼ばれたカイは、背中に乗せていたものたちをそっと下ろした。

 それを見てあわててみなが集まる。

 「命に別状はありません。ただ、気絶しているだけだと思います」
 
 ズルズルと引きづられて床に並べられる。

 「連れてきてくださってありがとうございます」

 一番年長らしい男が近寄ってきた。
 
 「ロナルド国王、どうして・・・・」

 「あなた達と話し合うためです。彼らはついでに」

 親衛隊たちはロンの言葉に戸惑ってばかりだった。

 「戦争を止めませんか?」








 



 時をおなじく。

 「ルル、国王に会ったらどうするつもり?殺すの?」

 長い長い廊下を走りながらアラン王子はルルに訊ねる。

 その質問に対し、ルルはカチンと来て立ち止まった。

 「ちょっと、アラン。あんた、私がそんな人間だと思ってるの?」

 怒りを露にしてアラン王子に詰め寄る。
 
 「そんなことしたら国王と同じじゃないの。

 ばっかじゃないの?

 私は、殺すために動くんじゃないわ。国を変えるために動いているの。

 無駄な殺生ばかりしているこの国を変えるためにね」

 かりにも自分の国の第一王子だが、ルルは気にもしていなかった。

 王族にとても敬意をはらおうとは思っていなかったのだ。

 そんなルルにアラン王子はうれしく思った。

 やっぱり彼女しかいない。

 「うん。ごめんね。ちょっと確認したかっただけなんだ」

 そういって目の前の大きなドアをバンと開く。

 そこには、一部の貴族達、重臣達、そして中央に国王が座っていた。

 みな、一斉に二人を見た。

 ルルの手をぎゅっと一瞬だけ握るとアラン王子は一歩前にでてこう言った。

 「みなさん、お久しぶりです。そして父上、ただいま戻りました」

 王子らしい威厳のある態度で真っ赤な絨毯を颯爽と歩く。

 移動のために軽装であったがアランの威厳は損なわれなかった。

 貴族、重臣達は絨毯の横に並びアラン王子が歩く前にあわてて膝を着き頭を下げる。

 ルルは、その後をついていくべきかどうか迷ったが

 立ち止まったアラン王子に手を差し伸べられ前を進むことに心を決める。

 国王の前に立ち止まり飄々とした表情で見上げる。

 国王は数段階段の上にある大きな大きな椅子にどっかりと座っている。

 その椅子は、細かく金の細工がなされており、

 クッションのところは赤いビロードのような生地を使っていかにも成金趣味の国王が好みそうなものだ。

 あいかわらず趣味が悪い・・・・。

 相変わらずの国王にアラン王子はクスッと笑った。

 「父上、そろそろ限界でしょう?」
 
 周りの人間達がザワリっとした。

 それもそうだろう、誘拐されたと思われていた第一王子が帰ってきたかと思えば

 国王に信じられない発言をする。

 だれもが気がふれたのではないかと思っていた。
 
 アラン王子はまったく周りに目もくれずに続けた。
 
 「もうそろそろご自分のやっていることが無意味だと気付いてもらえませんか?」

 アラン王子の一言にも表情一つ変えない。

 「しかもあなたの親衛隊ならびに兵士達はまもなくフォレット国によって落ちます。

 あなたは何の力も無い。それでもまだあがきますか?」

 「ふ、そんな事はあるまい。親衛隊や兵士達はフォレット国の何倍いると思っているんだ。
 
 そうやすやすと落ちてたまるか!」

 国王の声は部屋中に響いた。

 だれもが恐ろしくて震えてしまった。ただ、アラン王子とルルをのぞいて。

 今まで黙っていたルルが国王を睨みながら叫んだ。

 「無理やり戦争させて、無駄死にさせて、兵士達が何も思わないとおもってるわけ?

 ばっかじゃないの?」

 ルルの発言に一同びっくりし、呆然となる。

 いきなり王子と現れたこの美女は、見かけと違いかなりの毒舌らしく、まだまだ続いた。

 「自分はふんぞり返って何もしないで。どんどん、国民を苦しめることばかりして、
 
 そんなんでみんながあなたに忠誓を誓うと思う?ありえないでしょう。
 
 あなたを恐れることがあっても敬うしないわ。

 フォレット国はね、ちゃんと国民を、人を大事にする国なの。

 だから、小さくてもちゃんと人が生き生きして繁栄していく国なの。

 それを無理やり横取りしたってね、あなたならすぐにあの国を滅ぼしてしまうわ。

 だって、国をうまくさせられないくらいにバカなんですもの!!」

 国王を何度もバカ扱いするのは打ち首も仕方が無い。

 国王がどんなに怒っているのか空気で読める。

 だが、顔を見ることが出来ないと皆が下を向いたままだった。

 しかし、突然大笑いしたものがいた。アラン王子だった。

 「さすが、ルル。こんな場所で国王をバカ扱いできるのは君ぐらいだよ」

 おなかを抱えて涙を拭きながらルルを見つめる。

 「だから、愛してるよ。結婚しよう」

 こんな場所で、こんな場面で何を言ってるんだとおもっても、

 ルルにとっては日常だったらしく、

 「冗談。勘弁して」

 とさらりとかわしていた。

 「おまえら・・・・」

 怒りのあまりに声がでなかった国王が低い低い声で唸るようにして告げる。

 「その娘も、お前も打ち首だ。いや、それだけでは気が済まん。

 だれか、刀をもってこい!!」

 立ち上がって叫んでも誰も来ない。

 何も持っていない国王はただ怒りを握りこぶしで表し振り回しているだけだった。

 「おい!!なにやってる!!」

 後ろを見ながら何度も叫ぶ。だが、誰の姿も無かった。

 そういえば、見張りもいなかったな。とアラン王子が思い浮かべたその時。
 








 「残念ながら、親衛隊の皆さんはもう無駄な殺しはしません」

 ドアの方では親衛隊を後ろにロンがカイとともににこやかに立っていた。

 





 

 

 
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