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第一章
21.モテ期到来?予期せぬ恋の罠 ③
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「矢神クン、考えてくれた?」
女性ならものすごく有難かった。まずはお互いを知るために、デートの一回や二回してもいいと思ったに違いない。
何て答えればいいのかわからなかったが、誤魔化すのも悪いと思い、はっきりと言うことにする。
「えっと……お断り、させていただきます」
申し訳ないというように頭を下げると、杏は少し黙った後、矛先を遠野に向けた。
「あっ! 大ちゃん、アタシが男だって言ったわね!」
「うそついても仕方がないじゃないですか」
「いいじゃない、ちょっとのウソくらい。矢神クン、男はダメなの?」
「え……まあ……」
「ああ、残念。こんなカワイイ子なかなかいないのに~」
悔しそうな顔をして、しょんぼりとした。その姿は女性そのものだった。
そして、可愛いというのは果たして男性にとって褒め言葉なのか、矢神は少しの間悩んでいた。
「じゃあ、気を取り直して注文を聞くわ。あ、それと、これはアタシの奢りね」
カウンターにあった一つの瓶を持って来て、テーブルの上にどんと置いた。
「杏さん、これは?」
「前に大ちゃんが飲みたいって言ってた幻の日本酒よ。せっかく仕入れたのに全然店に来ないんだもの。やっと飲めるわね」
「あ、オレ、お酒は……」
断わろうと思ったのに、杏は瓶を矢神の方へと近づけながら身を寄せてくる。
「アタシの奢りなんだから、一杯くらいいいでしょ? 車なの?」
「いえ……」
「ならいいじゃない。飲んで、飲んで。アタシも飲むから」
「杏さんが飲みたいだけじゃないですか……」
遠野の言葉に、何が悪いと言わんばかりに両手を腰に当て、胸を張って言う。
「そうよ。食事はどうする? 日本酒に合うもの適当に作ろうか」
「矢神さん、それでもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
ほとんど店主の杏のペースだったから、何を言っても無駄なような気がして素直に従うことを決めた。
「よーし! ちゃっちゃっと作ってくるから、日本酒飲んで待っててね」
気を良くした杏は矢神に向かってウインクをした後、軽やかな足取りで鼻歌交じりに裏へと戻っていった。
女性ならものすごく有難かった。まずはお互いを知るために、デートの一回や二回してもいいと思ったに違いない。
何て答えればいいのかわからなかったが、誤魔化すのも悪いと思い、はっきりと言うことにする。
「えっと……お断り、させていただきます」
申し訳ないというように頭を下げると、杏は少し黙った後、矛先を遠野に向けた。
「あっ! 大ちゃん、アタシが男だって言ったわね!」
「うそついても仕方がないじゃないですか」
「いいじゃない、ちょっとのウソくらい。矢神クン、男はダメなの?」
「え……まあ……」
「ああ、残念。こんなカワイイ子なかなかいないのに~」
悔しそうな顔をして、しょんぼりとした。その姿は女性そのものだった。
そして、可愛いというのは果たして男性にとって褒め言葉なのか、矢神は少しの間悩んでいた。
「じゃあ、気を取り直して注文を聞くわ。あ、それと、これはアタシの奢りね」
カウンターにあった一つの瓶を持って来て、テーブルの上にどんと置いた。
「杏さん、これは?」
「前に大ちゃんが飲みたいって言ってた幻の日本酒よ。せっかく仕入れたのに全然店に来ないんだもの。やっと飲めるわね」
「あ、オレ、お酒は……」
断わろうと思ったのに、杏は瓶を矢神の方へと近づけながら身を寄せてくる。
「アタシの奢りなんだから、一杯くらいいいでしょ? 車なの?」
「いえ……」
「ならいいじゃない。飲んで、飲んで。アタシも飲むから」
「杏さんが飲みたいだけじゃないですか……」
遠野の言葉に、何が悪いと言わんばかりに両手を腰に当て、胸を張って言う。
「そうよ。食事はどうする? 日本酒に合うもの適当に作ろうか」
「矢神さん、それでもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
ほとんど店主の杏のペースだったから、何を言っても無駄なような気がして素直に従うことを決めた。
「よーし! ちゃっちゃっと作ってくるから、日本酒飲んで待っててね」
気を良くした杏は矢神に向かってウインクをした後、軽やかな足取りで鼻歌交じりに裏へと戻っていった。
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