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第三章

35.話し合いの果てに ②

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「私のように同性を好きになる人は、相手と恋人になれる確率が少ない。同類を好きになればいいけど、簡単なことではない。ましてや恋人になってセックスするなんて、先の話だ。だから、出会いの場を設けてあげたんだ。お金は紹介料、深い意味はない」
「別に、誰かを紹介するのはいいです。本人たちが承諾してるなら。どうして遠野だったんですか?」
「私が無理矢理させたと思ってる? 違うよ。大稀が自分で選んだ」
「それは、あなたに言われたからじゃないですか」
「私に言われたからだとしても、決めたのは大稀だよ」
 
 らちが明かなくてイライラする。
 
「矢神先生は、大稀としたことないの?」
「だから、オレはそういうんじゃ」
「大稀はすごく綺麗だよ。肌は透き通るように白いし、長い金髪が映えるんだよね。みんなに見てほしいじゃない? 自慢したくなるでしょ?」
「……いや、普通は誰にも見せたくないでしょ。恋人だったんですよね?」
「矢神先生は、独占するタイプか」
 
 ――普通はそうだろう。

「私もいろいろ教えてあげたけど、初めの頃は下手でね。でも経験積んだらすごく気持ちのいいセックスをするようになったよ。みんな喜んでた」

 何を言っても無駄なような気がした。価値観が全く違うのだ。

「とにかく、遠野にはもう関わらないでください」
「私は大稀を愛してるよ。今でも。だから、私の傍に置いておきたい」
「遠野は物じゃない!」
 
 怒りのせいか、身体が熱く感じた。
 依田はクツクツと笑う。
 
「わかってるよ、矢神先生は、大稀が他の男とセックスするのが嫌なんでしょ?」
「……違います」
 
 依田と話していると胸糞悪くなり、呼吸がうまくできないような気がした。
 
「一度やってみるといい。たまらないよ。みんなそう言ってた」

 依田はソファから立ち上がり、矢神の傍に来る。
 片膝をついて距離を縮めてくるから、足を崩して距離を保とうとした。
 
「大稀は矢神先生に好意を持っている。かなり気持ち良くさせてくれるはずだよ」
「だから……」
「まずは咥えてもらったらいいよ。大稀は得意なんだ」
 
 依田はスっと太ももに手を触れてきた。
 咄嗟に立ち上がろうとして、うまく力が入らず、その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。

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