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第一章
37、熱いお誘いに蕩ける約束
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冬が近付きここ数日でぐっと冷え込んできたクルゼは、朝でも重い雲に覆われている日が増えた。
微かな朝日の届く寝室のベッドの上、ルートヴィッヒの温かい腕の中で目を覚ましたエレオノーラ。
北の寒さにまだ慣れない自分は、こうして毎晩ルートヴィッヒが抱きしめてくれていなかったら、寒くて眠れないかもしれない。
「ルド、おはようございます」
後ろから抱きしめられて姿は見えないけれど、なんとなくルートヴィッヒはもう起きていると思った。
「おはよう、エル」
うなじに朝の挨拶のキスをされると、エレオノーラの肩がビクッと揺れた。
「相変わらず初々しいな、エルは」
ルートヴィッヒはエレオノーラの左耳を後ろから甘く食んだ。
「ひゃっ──」
思わず色気の無い声が出てしまうエレオノーラ。
「ルド、朝からからかわないで下さいっ」
エレオノーラはルートヴィッヒの方へくるりと身体を返すと抗議した。
ルートヴィッヒの口角はいたずらに成功した少年のように上がっている。
「それに、エル"は"って、何だか今までのルドの恋人と比べられているみたいで、ちょっとイヤです……」
「すまない、そういうつもりで言ったわけでは無かった。大体、朝まで一緒に女性と過ごしたことは無いし、これまで恋人と呼べるような間柄の女性は居ない」
「──私こそごめんなさい、つまらない焼きもちを焼きました……」
エレオノーラが謝ると、ルートヴィッヒの均整の取れた顔が近付いてきて、その小さな唇を塞いだ。
「んんっ……ルド……っ」
突然濃厚なキスを始めたルートヴィッヒは、エレオノーラの細い腰をさらに密着させるように自分の方へ引き寄せると、絡めていたエレオノーラの舌をキュッと吸い上げた。
エレオノーラは、腿の内側から中心部に掛けて圧迫されているような高まりを感じる。
「──っん……な……んで……」
ルートヴィッヒの唇も舌も、自分を抱きしめる腕も、何もかもがいつもより熱くて、流されて蕩けそうになる。
(朝からこんなキスをして、もっとして欲しいなんて思ってしまうなんて……)
そろそろこのキスから解放されないと、その先を求めてどんどん乱れてしまいそうで怖い。
ルートヴィッヒから教えられて、この身体は快楽に甘く蕩ける快感を知ってしまった。
エレオノーラが甘い疼きに陥落しかけたところでルートヴィッヒが「エル、今夜は必ず早く帰るから、待っててくれるか?」と突然にキスを中断して耳許で囁いた。
口付けで濡れたルートヴィッヒの唇が自分の耳をかすめ、身体の奥をキュンと切なくさせるような掠れた低い声で言われると、エレオノーラの心も身体も蕩けてうまく言葉をまとめられない。
(ううん、でもちゃんと言葉でお伝えしなきゃ。いつまでも子供じみたことをしていては、折角ルドが心を寄せてくれているのに、愛想を尽かされちゃうわ……)
「今晩、お待ちしております。もしお帰りが遅くなられてもきっと起きていますから、私をルドのものにして下さいね……?」
そう言ってぎゅっとルートヴィッヒに自分から抱きついた。
もう少し色っぽい言い方は出来ないものかと自分を責める。
しばらくしても何も言ってくれないので、ルートヴィッヒの顔を見上げようとした瞬間。
(え、ルドのが……)
無言のままのルートヴィッヒのものがどんどんと硬さと熱を増して、密着していたエレオノーラのお腹にめり込みそうになる。
今度こそ本当にどうしたらいいのか分からなくなるエレオノーラ。
「──今のはエルが悪い。いや、悪くはないが、エルのせいだな」
ルートヴィッヒが苦笑混じりに呟いた。
「これ以上エルと一緒にいると、我慢できずにエルを抱いてしまう。今日は仕事を早く終わらせるために朝食も昼食も執務室で取るから、また夕食の時に会おう」
まだ動揺して思考が停止しているエレオノーラの頬に優しくキスをすると、ルートヴィッヒは着替えに向かった。
ルートヴィッヒが居なくなった寝室で、放心状態とパニックが同時に訪れた。
気持ちを落ち着けようと、ベッドでクッションをぎゅっと抱え込む。
数日前、バレエ鑑賞の帰りにルートヴィッヒが告白をしてくれて、その数日後には月のものも終わって、そろそろかなと思っていた。
思ってはいたし、ルートヴィッヒと夫婦として結ばれたいとも思っているけれど、いざ「はい、今夜ですよ」となると、緊張して居ても立ってもいられない。
「そうだ、こんな時はお姉様達のあれを……!」
エレオノーラはベッドを飛び出てガウンを羽織ると、二人の姉から結婚が決まった時に渡された『指南書』を化粧箱から取り出した。
以前読んだのは結婚式の前日。
その時も内容の過激さに赤面したが、ルートヴィッヒとあんなことやこんなこともあった後に読むと比べ物にならない程にリアルに色々と解ってしまう。
所々、姉達の手書きのアドバイスまでつけ加えられているが、とてもそこまで出来そうにない。
(と、とにかく、今夜は初めてなのだから、ルートヴィッヒ様にお任せすれば良いのよね。頑張れ、私……!)
微かな朝日の届く寝室のベッドの上、ルートヴィッヒの温かい腕の中で目を覚ましたエレオノーラ。
北の寒さにまだ慣れない自分は、こうして毎晩ルートヴィッヒが抱きしめてくれていなかったら、寒くて眠れないかもしれない。
「ルド、おはようございます」
後ろから抱きしめられて姿は見えないけれど、なんとなくルートヴィッヒはもう起きていると思った。
「おはよう、エル」
うなじに朝の挨拶のキスをされると、エレオノーラの肩がビクッと揺れた。
「相変わらず初々しいな、エルは」
ルートヴィッヒはエレオノーラの左耳を後ろから甘く食んだ。
「ひゃっ──」
思わず色気の無い声が出てしまうエレオノーラ。
「ルド、朝からからかわないで下さいっ」
エレオノーラはルートヴィッヒの方へくるりと身体を返すと抗議した。
ルートヴィッヒの口角はいたずらに成功した少年のように上がっている。
「それに、エル"は"って、何だか今までのルドの恋人と比べられているみたいで、ちょっとイヤです……」
「すまない、そういうつもりで言ったわけでは無かった。大体、朝まで一緒に女性と過ごしたことは無いし、これまで恋人と呼べるような間柄の女性は居ない」
「──私こそごめんなさい、つまらない焼きもちを焼きました……」
エレオノーラが謝ると、ルートヴィッヒの均整の取れた顔が近付いてきて、その小さな唇を塞いだ。
「んんっ……ルド……っ」
突然濃厚なキスを始めたルートヴィッヒは、エレオノーラの細い腰をさらに密着させるように自分の方へ引き寄せると、絡めていたエレオノーラの舌をキュッと吸い上げた。
エレオノーラは、腿の内側から中心部に掛けて圧迫されているような高まりを感じる。
「──っん……な……んで……」
ルートヴィッヒの唇も舌も、自分を抱きしめる腕も、何もかもがいつもより熱くて、流されて蕩けそうになる。
(朝からこんなキスをして、もっとして欲しいなんて思ってしまうなんて……)
そろそろこのキスから解放されないと、その先を求めてどんどん乱れてしまいそうで怖い。
ルートヴィッヒから教えられて、この身体は快楽に甘く蕩ける快感を知ってしまった。
エレオノーラが甘い疼きに陥落しかけたところでルートヴィッヒが「エル、今夜は必ず早く帰るから、待っててくれるか?」と突然にキスを中断して耳許で囁いた。
口付けで濡れたルートヴィッヒの唇が自分の耳をかすめ、身体の奥をキュンと切なくさせるような掠れた低い声で言われると、エレオノーラの心も身体も蕩けてうまく言葉をまとめられない。
(ううん、でもちゃんと言葉でお伝えしなきゃ。いつまでも子供じみたことをしていては、折角ルドが心を寄せてくれているのに、愛想を尽かされちゃうわ……)
「今晩、お待ちしております。もしお帰りが遅くなられてもきっと起きていますから、私をルドのものにして下さいね……?」
そう言ってぎゅっとルートヴィッヒに自分から抱きついた。
もう少し色っぽい言い方は出来ないものかと自分を責める。
しばらくしても何も言ってくれないので、ルートヴィッヒの顔を見上げようとした瞬間。
(え、ルドのが……)
無言のままのルートヴィッヒのものがどんどんと硬さと熱を増して、密着していたエレオノーラのお腹にめり込みそうになる。
今度こそ本当にどうしたらいいのか分からなくなるエレオノーラ。
「──今のはエルが悪い。いや、悪くはないが、エルのせいだな」
ルートヴィッヒが苦笑混じりに呟いた。
「これ以上エルと一緒にいると、我慢できずにエルを抱いてしまう。今日は仕事を早く終わらせるために朝食も昼食も執務室で取るから、また夕食の時に会おう」
まだ動揺して思考が停止しているエレオノーラの頬に優しくキスをすると、ルートヴィッヒは着替えに向かった。
ルートヴィッヒが居なくなった寝室で、放心状態とパニックが同時に訪れた。
気持ちを落ち着けようと、ベッドでクッションをぎゅっと抱え込む。
数日前、バレエ鑑賞の帰りにルートヴィッヒが告白をしてくれて、その数日後には月のものも終わって、そろそろかなと思っていた。
思ってはいたし、ルートヴィッヒと夫婦として結ばれたいとも思っているけれど、いざ「はい、今夜ですよ」となると、緊張して居ても立ってもいられない。
「そうだ、こんな時はお姉様達のあれを……!」
エレオノーラはベッドを飛び出てガウンを羽織ると、二人の姉から結婚が決まった時に渡された『指南書』を化粧箱から取り出した。
以前読んだのは結婚式の前日。
その時も内容の過激さに赤面したが、ルートヴィッヒとあんなことやこんなこともあった後に読むと比べ物にならない程にリアルに色々と解ってしまう。
所々、姉達の手書きのアドバイスまでつけ加えられているが、とてもそこまで出来そうにない。
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