無彩色の空の下で

みらる

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市役所

ゼウス(1)

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翌朝、透は疲れの取れていない体を起こし部屋を出た。
大広間に行くと昨日の宴会の残骸が余韻を醸し出していた。

透は外に出ると大きく深呼吸をした。
日の出と共に暖かい空気が透を照らした。

「童よ、お主は朝が早いのう」
後ろから坂本龍馬の声がした。
坂本龍馬は袖に手を入れながら近づいてくる。
「無彩色に入ってからあまり眠れてなくて__。」
「そうかそうか、わしも同じものよのう。」
「龍馬さんもですか?」
「今の情勢はどうしても好かん。童よ、その兄者を助けられたとして、次にお主は何を望む」
「平和__。ですかね。」
「ほほう。太平の世か、それはええのう。」

そんな話をしているうちに3人がテントから出てきた。
「おはよう。みんな支度は出来ているわ」
華奏が近づきながら言った。
テントの横でナナが手を振っている。
テントの方に向かうとポセイドンが言った。
「透君。忘れ物は無いかね」
透が頷くとポセイドンが杖を一振りした。
するとテントは杖の中にシュルシュルと戻っていった。

「次は何処に向かうんだ?」
「中央の方へ行ってみます。厄介なヤツもいますし、ヘラの宝石もありますので」
坂本龍馬に聞かれるとポセイドンが答えた。

みんなが坂本龍馬にお別れのあいさつをした。
「龍馬さん。本当にありがとうございました」
すると坂本龍馬は透の肩をポンと叩きこう言った。
「さっきの話、お主に任せたよ」
そう言うと坂本龍馬は照れ臭そうに笑った。

みんなが宙に浮く中、透は後ろ髪を引かれるように出遅れながら詠唱した。

12 色 の バ タ フ ラ イ神のイタズラ

透は地面を蹴ってみんなに追いつく様に空を飛んだ。

坂本龍馬はみんなが見えなくなるまで大きく手を振り続けた。


坂本龍馬と別れてから30分程飛行した頃だろうか、ポセイドンの合図で地上に降りる事になった。

「ここからは人目に付きやすい、歩いて行こう」
透はまだ慣れていないのか、両足でしゃがみ込むように着地した。
「何故歩いて行くんですか?」
「ここは無彩色の中心地だ、それだけ人が多い。」
一行が歩き進めるとちらほらと人気が出てきた。
「透君。無彩色には約9万人の人が生活している。そのうち空を飛べるのはどのくらいだと思う?」
「えーと、半分くらいですかね」
「否、1割にも満たないのだよ。それだけスカイの補助宝石や華奏君の様な鳥型のアニマライズの宝石は高値で取引されている。もちろん12の宝石はさらに高値だ。空を飛んで見せたら盗んで下さいと言っているものじゃないか」

「なるほど、そういう事だったんですね」
10分程歩くと透にも見覚えのある建物が見えてきた。
「市役所?」
「そうよ。実際の世界では市役所がある場所だわ」
少し興奮した様子で華奏が答えた。

「よし、中に入ろう」
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