のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま

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「そこに座ってくれる?」

 買った物をキッチンに置いて、手を洗ったりして、コートをハンガーに掛けてくれた。それからリビングに案内されたのだが、黒い革張りのソファーセットは座面が広く、クッション性がとても良い。

「すごい部屋だねえ」

「お待たせ」

 食事をお皿に移し替えて、運んで来てくれた。そして、ワイングラスが二つと、赤ワイン。
 あれ?飲むの?そうしたら、僕は電車で帰れる場所なのかな?ここが何処なのか不明だ。

「高輪、ここ、何処辺り?帰り、どの路線から帰れるかがわかんないんだけど?」
「うん。まあ、後で説明するけど、そこの左に小さく見えるのが東京タワーだ」
「あ、赤い塔が見えた!わ、都会だ」

「それはさておき、食べながら話そう。乾杯」

 赤ワインのグラスを高輪が掲げたので、軽く合わせて一口飲んだ。

「美味しい!このワイン」
「うん。良いやつ出したよ」
「温度も飲み頃だ。ワインセラー有るの?」
「ああ。キッチンのあれがワインセラーだよ」

 大きな冷蔵庫の隣に、硝子戸のついた冷蔵庫のようなもの。ワインがたくさん寝かせた状態で収納されている。

「凄くない?こんなとこに住んでたんだね」
「まあ。親のだよ。自分の力では無いから。食べよう?」
「うん」

 さすがデパ地下、美味しい。ワインにも合う。

「さっきの話の前に告白。品川拓海さん、あなたが好きです。番って、結婚してください」
「え…」
「ずっと好きだった。段々距離を縮めていくつもりだった。でも、C社の御曹司に目をつけられてしまったと知って、焦ったんだ」
「高輪…。ずっとって?僕なんか、普通で、何処にでもいるようなのに」

「そんな事ないよ。オメガで旧帝大卒、仕事が出来て優秀で、優しく可愛くて、俺の運命。気付いてなかっただろうけど」
「運命?」
「以前からアルファ用の抑制剤を飲んでる。良く効くんだ。オメガのフェロモンがわからないくらいに。それでも品川のフェロモンは直ぐに運命だとわかった。品川も抑制剤飲んでるから、互いにフェロモン放出量も感度もだいぶ低い筈だ」
「そうだったんだ…僕、品川のフェロモンわかってたよ。マフラー借りたときとかも、ふわって香って来てた」

「わかってくれてたんだね。嬉しい。品川、大学の時夏休みにインターンをしたよね?」
「うん。あの時も祖母の所に短期滞在して、うちの会社でインターンした」
「その時に期間が少しだけ被ったんだ。話せなかったけれど、運命だと認識した。その後、エントリーシートは数社出したね?」
「うん」
「うちの実家の会社にも出ていた。君の名前や経歴、学んで来たことを知れた」
「え?え?何処の会社?」
「わが社の提携先、高輪商事」
「ええ!?大きな会社だよね?」
「まあまあ」
「そうなんだ。そしたらいずれ実家の会社に入るの?」
「そう。今は他社で勉強中だ。社長や経営陣はもちろん了解している。品川が入社して俺の担当になったのは、俺がそう頼んだからだ。君をいずれ妻としたいと」
「ええ?っと、社長にそう言ったの?」
「ああ。ごめん。並木さんはご存知無かったようだけど、俺が君を好きな事は察していたから。さっきはただ謝られただけ。それとC社は社長が父と知り合いなんだ。君を食事に連れていかないからって契約しないなんて事は言わせない」

「そっか...何か、びっくりし過ぎて」

 高輪が僕の両手を取って、真剣な顔をした。

「拓海。愛しています。結婚してください。だめかな?俺の事、好きじゃない?」
「…好き。でも、自信がないよ。資産家のお嬢様でもないし」
「拓海。好きだ。運命とか何とかより、仕事で一緒にいたらもっともっと好きになった。君以上に好きな人なんて出来ない。ずっと追いかけていたんだ」
「うん。ありがとう。僕も高輪が好きになっていた。ドキドキしてたよ」
「拓海!」

 高輪が、僕を抱き締めた。それだけでもドキドキするのに、彼の長い指が僕の顎に触れて、顔がどんどん近くなって、目を閉じたら柔らかな唇が重なりあった。

「好き」

 好きだ。わかっていた。でも、気付いたら傷つくと思っていたんだ。

「僕も、響矢って、呼んで良い?」
「拓海。ありがとう。嬉しい」
「響矢。好きだよ」

 ぎゅっと抱き締めあったら、身体がホカホカと温まり、どんどん熱くなってきた。

「あ、あ...」

 運命の相手と思いを通じ合わせてキスして抱き締めあったのだ。発情期が予定より早まってもおかしくない。

「う、良い香りだ…可愛い。発情期に入ったんだね?」
「響矢、響矢、早く。したい、抱いて...」
「拓海、愛してる。良い?」
「うん、はやく。もっと抱きしめて」

 響矢が僕を抱き上げて、寝室に運ぶ。キングサイズのベッドが僕の背を受け止めた。

「あ、お婆ちゃん。連絡。心配させちゃう…」
「うん。電話しよう」

 寝室に固定電話の子機があった。それを使って、響矢は僕が何も言わないのに電話を掛けている。

「でんわ、ばんごう?」
「知ってるよ。発情期だって説明しておくね」
「おばあちゃん、しってる?」
「ああ。告白すること、受け入れて貰えたら番や結婚のこと、実家のことも。つい最近ご両親にもお婆様にもご挨拶して、お願いをした」
「そ、なの?いつの、ま、に…」

 熱くなって、言葉もうまく出て来ない。でもこの優秀な営業社員は、僕の知らないうちに両親と祖母から結婚の了承を得ていたようだ。

 帰らない僕を祖母が心配しなければ良い。もう大丈夫だ。任せてしまおう。僕の運命の番に。


「好き、愛してる」

 響矢は、とても丁寧に僕を扱ってくれた。怖がらせないよう、少しずつ。熱い身体同士を触れ合わせる。

「きす、して」
「うん」

 唇が触れ、口の中の粘膜を探られる。甘い唾液。互いの起立がもう大きくなって、触れ合っていた。
 全身を触り、気持ち良いところを見つけようと動く綺麗な長い指。後ろから液が出ているのがわかって、1本ずつ差し入れては、前の膨らみを甘く刺激する。

「もう、きて」
「ああ。かわいい。拓海。好き」

「いくよ。いいこだ。拓海。ネックガード、外してくれるね」
「うん、はずす。かんで」

 カチリとネックガードのロックを外した。ベッドに無機質な帯が音もなく落ちた。
 響矢は、それを遠くに放ると僕をうつ伏せにした。後ろから、響矢の大きな起立が中を侵略する。

「あ、あ」
「大丈夫?」
「きもち、いい」
「うん。良いね」

 すべて納め、しばらく待ってくれてから動き出す。こんなに気持ちの良いものだとは知らなかった。相性がいいからなのか。

「噛むよ」
「う、あ」

 牙がたてられ、目がチカチカとする。気持ちの良い高みから降りてこられない。長い放出の間、響矢はずっと僕を抱きしめていた。


 年度末の同期会が予定された。まだ忘年会から3ヶ月であるが、転勤するもの、転職するものが居て、会えなくなるからと。

「「「おめでとう」」」
「ありがとう。会社は去るが、結婚式には来てくれよ」
「ああ。是非。お前らやっとくっついたか」
「インターンの時からだから、随分長かったなあ。良かったな」
「今後は提携先企業として、宜しくな」

 同期会は、この春から実家に戻る高輪響矢と番になって結婚する品川拓海を祝う会と化していた。

「ちょっと、俺、北海道転勤なんだけど。皆別れを惜しんでくれよ」
「そうだな。高輪は都内にいるもんな」
「北海道頑張れよ、旨いもの食って、彼女でも作れ」
「ああ。頑張るよ」
「品川とは会えなくなるな」
「そうだな。家庭に入るんだろ?」

「もしかしたら、子育てが落ち着いたら働くかも知れないけど?」
「まあ、高輪が囲って出しそうに無いよな?」
「番ったから、少しは余裕出たけど、C社みたいのがいるから、外は危険だ」
「同期会の時は連絡するよ。二人で来たら?」
「ありがとう、それは良いな」

「皆、お世話になりました。元気で頑張ってね」
「品川こそ、頑張れよ」

 主婦業を頑張るということなのだろうか。どうやら響矢は家政婦さんを頼んでくれるみたいなのだけど?

「ありがとう」


 3月の温かくなってきた夜空の下を数人の会社員が赤ら顔で話しながら歩いていた。

「あれはがっちり、囲われそうだな」
「ああ。やっと叶ったんだもんな」
「幸せそうで良かったよ」
「俺もかわいい彼女欲しい」
「奥さん欲しい」
「いいなあ、高輪…」
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