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「失礼します」
「はい、どうぞ」
ドアをノックされて答えると、入室したのは騎士服ではなく、貴族の様相をしたニールであった。
「あれ?ニールさん?」
「はい。私はニール・ブライアン・ドーモンです。王国の第二王子で、あなたの兄上の学友でもあります」
「ええっ!?ニールさんが第二王子殿下だったんですか?」
「はい。お伝えしなくて申し訳ありませんでした。これから経緯を説明させて頂きます」
王国の第一王子である王太子は、外交や国政を担う職務につき、妃には社交の得意なオメガ妃を求めていた。
一方で、第二王子であるニールは、国民の生活を自分の目で見て、騎士として闘う実務にあたる希望があった。
「あなたの兄上とは学園で仲良くさせて頂いていました。私は民の生活を思いやれ、自分で何でも出来て共に旅をしたり、私が騎士として出ていても家庭を守ってくれるたくましく心の優しい方を理想としていました。兄上からあなたの話を聞いて、その私の理想のままだと勝手に想いを募らせていたのです」
殿下の話では、兄の第一王子と共に花嫁選定のためにオメガの令嬢令息と会ってみた。兄は、美しく、嫌味を受け流せるなどの気持ちはしっかりしているが家事などはできないご令嬢と馬が合って妃候補が決まった。外交にも向いていてぴったりだと。
しかし自分は現れた候補者に気持ちが向かず、候補者にラリーが来なかった事から相手を決められなかった。遠征の後に迎えに行って実物と接触することを画策した。
ラリーの兄にはそのむねを伝えたが、ラリーの実家には候補者としてきて欲しい事しか伝えていない。会ってみないとお互いを受け入れられるかどうか分からなかったから、立場を隠して会ってみたかったのだとのこと。
「お会いして、私は憧れていた以上にどんどんあなたを好きになりました。素晴らしく優しい、知識があり、何でも自分でなされ、騎士団の皆ともすぐに打ち解けられた。あなたの可愛らしい外見や微かな薫りも全てが私の理想通りです。あなたは私をどう思われますか?私と一緒になって頂けませんか?あなたの大好きなご家族にも、なるべく今後もお会いになれるように心がけます。お互いに抑制していても私はあなたの薫りがわかりました。とても良い薫りです。きっと運命的な相手だと私は確信しているのです」
「ニール殿下。僕は、初めての旅があなたと一緒で不安が減り、楽しかったです。これからの人生の旅もあなたとなら楽しむことが出来そうです。私もあなたが好きになりました」
「ありがとう、ラリー」
ニールは、ラリーを抱き締めた。ラリーもまた抱き締め返し、気持ちを伝えあった。
「これから家族と会って頂けませんか?堅苦しい席ではなく、あなたの家族のように皆で食卓を囲み、歓談しましょう」
「国王陛下、妃殿下は私がニール殿下のお相手で宜しいのですか?」
「我が家も本人の意思を尊重してくれます。あなたを大歓迎致しますよ」
城の広いダイニングには、大きなテーブルが設えてあった。国王陛下、妃殿下、王太子殿下と婚約者様に並んでニール殿下とラリーも婚約者として着席した。
「今日は私の婚約者となったラリーをご紹介します。友人から聞き及んでずっと片思いしていた方を捕まえました。家族としてこれから仲良くしてください」
「はじめまして。ラリーです。ふつつかものですがどうぞよろしくお願いいたします」
「「おめでとう」」
初めましてのご挨拶が続く。義理姉になる予定の婚約者様は、美しいオメガの方で義理の兄弟になることを大変喜んでくれた。
「皆さんに受け入れて頂いて良かったです」
「こんなにかわいくて素敵なあなたを好きにならない人はいないよ。昔あなたに意地悪した方はきっとあなたが可愛くてやってしまったのでは?」
「そうなのでしょうか」
「そう思う。明日はあなたと兄上が会えるようにします。今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んでね。カモミールティーをまた淹れますか?お湯を持って来よう」
「そんな、殿下自らなさってくださるのですか?」
「もちろん、あなたのためだからだよ」
「お兄様、ニール殿下のことご存知だったんですね?どうして実家にお知らせくださらなかったのですか?」
「私はラリーが実家や領地が好きなことは知っていたよ。離れたがらないことも。だから本人同士が立場を抜きに好きになって、結婚する気持ちになるならそれで良いし、ニール殿下の片思いのままならそれも仕方ないと思っていたんだ」
「そうだったんですね」
「あのように会えてラリーの良いところがさらにわかったから、私はとても感謝している。一度領地のご両親に結婚の許可を得るべくご挨拶に伺って、また王宮に一緒に戻りたいんだ」
「ラリーは、それで良いの?実家にしばらく戻って花嫁になる準備をしても良いんだよ」
「そうですね。僕もしばらく実家にいて色々整える時間が欲しいです。実家の菜園の事や薬草をこちらに持ってくる手配が必要なんです」
「わかった。とりあえず、約束したようにまずは実家への帰り道も私が馬車に同乗してお送りするよ」
「はい、どうぞ」
ドアをノックされて答えると、入室したのは騎士服ではなく、貴族の様相をしたニールであった。
「あれ?ニールさん?」
「はい。私はニール・ブライアン・ドーモンです。王国の第二王子で、あなたの兄上の学友でもあります」
「ええっ!?ニールさんが第二王子殿下だったんですか?」
「はい。お伝えしなくて申し訳ありませんでした。これから経緯を説明させて頂きます」
王国の第一王子である王太子は、外交や国政を担う職務につき、妃には社交の得意なオメガ妃を求めていた。
一方で、第二王子であるニールは、国民の生活を自分の目で見て、騎士として闘う実務にあたる希望があった。
「あなたの兄上とは学園で仲良くさせて頂いていました。私は民の生活を思いやれ、自分で何でも出来て共に旅をしたり、私が騎士として出ていても家庭を守ってくれるたくましく心の優しい方を理想としていました。兄上からあなたの話を聞いて、その私の理想のままだと勝手に想いを募らせていたのです」
殿下の話では、兄の第一王子と共に花嫁選定のためにオメガの令嬢令息と会ってみた。兄は、美しく、嫌味を受け流せるなどの気持ちはしっかりしているが家事などはできないご令嬢と馬が合って妃候補が決まった。外交にも向いていてぴったりだと。
しかし自分は現れた候補者に気持ちが向かず、候補者にラリーが来なかった事から相手を決められなかった。遠征の後に迎えに行って実物と接触することを画策した。
ラリーの兄にはそのむねを伝えたが、ラリーの実家には候補者としてきて欲しい事しか伝えていない。会ってみないとお互いを受け入れられるかどうか分からなかったから、立場を隠して会ってみたかったのだとのこと。
「お会いして、私は憧れていた以上にどんどんあなたを好きになりました。素晴らしく優しい、知識があり、何でも自分でなされ、騎士団の皆ともすぐに打ち解けられた。あなたの可愛らしい外見や微かな薫りも全てが私の理想通りです。あなたは私をどう思われますか?私と一緒になって頂けませんか?あなたの大好きなご家族にも、なるべく今後もお会いになれるように心がけます。お互いに抑制していても私はあなたの薫りがわかりました。とても良い薫りです。きっと運命的な相手だと私は確信しているのです」
「ニール殿下。僕は、初めての旅があなたと一緒で不安が減り、楽しかったです。これからの人生の旅もあなたとなら楽しむことが出来そうです。私もあなたが好きになりました」
「ありがとう、ラリー」
ニールは、ラリーを抱き締めた。ラリーもまた抱き締め返し、気持ちを伝えあった。
「これから家族と会って頂けませんか?堅苦しい席ではなく、あなたの家族のように皆で食卓を囲み、歓談しましょう」
「国王陛下、妃殿下は私がニール殿下のお相手で宜しいのですか?」
「我が家も本人の意思を尊重してくれます。あなたを大歓迎致しますよ」
城の広いダイニングには、大きなテーブルが設えてあった。国王陛下、妃殿下、王太子殿下と婚約者様に並んでニール殿下とラリーも婚約者として着席した。
「今日は私の婚約者となったラリーをご紹介します。友人から聞き及んでずっと片思いしていた方を捕まえました。家族としてこれから仲良くしてください」
「はじめまして。ラリーです。ふつつかものですがどうぞよろしくお願いいたします」
「「おめでとう」」
初めましてのご挨拶が続く。義理姉になる予定の婚約者様は、美しいオメガの方で義理の兄弟になることを大変喜んでくれた。
「皆さんに受け入れて頂いて良かったです」
「こんなにかわいくて素敵なあなたを好きにならない人はいないよ。昔あなたに意地悪した方はきっとあなたが可愛くてやってしまったのでは?」
「そうなのでしょうか」
「そう思う。明日はあなたと兄上が会えるようにします。今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んでね。カモミールティーをまた淹れますか?お湯を持って来よう」
「そんな、殿下自らなさってくださるのですか?」
「もちろん、あなたのためだからだよ」
「お兄様、ニール殿下のことご存知だったんですね?どうして実家にお知らせくださらなかったのですか?」
「私はラリーが実家や領地が好きなことは知っていたよ。離れたがらないことも。だから本人同士が立場を抜きに好きになって、結婚する気持ちになるならそれで良いし、ニール殿下の片思いのままならそれも仕方ないと思っていたんだ」
「そうだったんですね」
「あのように会えてラリーの良いところがさらにわかったから、私はとても感謝している。一度領地のご両親に結婚の許可を得るべくご挨拶に伺って、また王宮に一緒に戻りたいんだ」
「ラリーは、それで良いの?実家にしばらく戻って花嫁になる準備をしても良いんだよ」
「そうですね。僕もしばらく実家にいて色々整える時間が欲しいです。実家の菜園の事や薬草をこちらに持ってくる手配が必要なんです」
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