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軟禁期間と処置
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香西先生side
「まずは、点滴を抜去した理由を聞きましょうか。」
「……っ…なんで香西先生まで知ってんだよ。」
「常に情報共有をしてますから。暴れるほど点滴が嫌になった理由はなんです?」
何を言おうか迷っているのか視線を彷徨わせる柊。
「言いたい事が纏まってなくても構いませんよ?思っている事があるなら吐き出した方が気持ちが軽くなると思いますよ。」
「……昨日、女性ホルモンの点滴って聞いて、そんで…今朝、胸がチクチクする感じ……なんか違和感があって、俺…男なのに体が変わっていくみたいで、怖くなって……。」
なるほど…。
胸に違和感を感じるほどの効果が出ていたんですね。
「柊は、以前からふたなりの妊娠に消極的ですよね。これは国が定めた制度ですので、何を言おうとも義務で、あなたに拒否権はありません。……ですが、本当に妊娠を拒絶するのであれば抜け道がない訳ではないです。」
「……え?」
驚いたような顔をした柊が、ようやく私と目を合わせた。
この話をふたなり治験棟の職員である私が話すのはどうかと迷いはしたが、柊が今後の治療に対する意識が少しでも変わる事を期待して話すことにした。
「それは、不妊症です。」
「…ふにん…しょう。」
聞き慣れない言葉を確かめるように繰り返す。
「どんなに治療しても妊娠する事ができない状態を指します。」
「それって…病気って事…?」
「そうです。不妊の原因は様々で、卵巣に卵がなかったり、卵は沢山あるのに排卵…上手く育たずに卵巣から出て来られなかったり、そもそも子宮に異常がある場合など。」
「俺もそうなればここから抜け出せるって事?」
「……どんな手を尽くしても妊娠しなかったふたなりは、35歳を最後に退所できます。」
「……それまでずっとココ?」
「そうなりますね。国が定めた年齢の上限が35歳です。それまではココで暮らし続けないといけません。もし柊が妊娠を望まないにしても積極的に治療を受け妊娠出産を終えれば、早くて5年で退所できます。約20年と5年…柊は、どちらを選びますか?」
「……早くて……5年…。」
5年は20年に比べてずっと短い。
だが、若くして子供を産むことはそれなりのリスクを伴う。
両極端な選択肢を突きつけたと思うが、不妊症であっても35歳まで、今と変わらずに毎日治療をし続けなければいけない。
残酷だがこれが現実だ。
「……5年の内に妊娠出産すれば、晴れて自由の身。」
産んだ子供は、必ずしも産んだふたなりが育てないといけない訳ではない。
国が、次の子孫繁栄の為にきっちり育てて、またふたなり治験棟に入所させる。
だが多くのふたなりは、妊娠すると母性が強くなり子を手放す事を恐れる傾向にある。
柊がどちらに転ぶかは分からないが、早く退所したいと積極的に治療に臨んでくれれば何も問題はないだろう。
子を産んだふたなりは、国から生涯の生活を保証され、2人3人と産めば待遇される。
そのため一度退所したふたなりも次の妊娠の為に自ら入所する者も少なくはない。
「少しは治療に前向きに慣れそうですか?」
「……気持ちは軽くなったけど、それとこれとは別…。治療が嫌な気持ちは変わらない。」
「そうですか…。とりあえず導尿処置をしますね。……暴れられると困るので抑制帯は着けさせてくださいね。」
柊side
香西先生が抜け道があるとか言うから、期待したのに…結局は早く妊娠出産した方が身のためっていう話しでガッカリした。
処置の為に布団をどかされ、四肢と腰をベッドに抑制帯で固定された。
「ズボンと下着を脱がせますね。」
ベッドに固定したまま香西先生は、器用にズボンとパンツをふくらはぎの辺りまでずり下ろした。
「待って!…なんの処置すんの!」
「導尿と言って、膀胱までこのカテーテルを通しておしっこを出す処置をします。多少の違和感はあると思いますが、この部屋で過ごしている間は着けててください。」
「過ごしてる間って、いつまでこの部屋に閉じ込めとく気なんだよ。」
「それは東郷先生に相談ですね。明後日の午後にオーガズム時の膣圧測定はこの部屋でするので、そのつもりで。」
「……??……よく分かんねぇけど、かってにスケジュール組まれてんの?」
「みんな既に終わった検査です。カテーテル入れますね。」
話しながらも陰茎の包皮を剥かれ、尿道口を消毒され、潤滑ジェルのついたカテーテルを手にした香西先生は、スッと尿道にカテーテルを沈めていった。
「……ッ、痛ってぇ!……なんか熱っ…。」
「尿道を通る時は痛いかもしれませんね。後は留置したら終わりますから、我慢してください。」
太ももにテープで、陰茎から伸びたカテーテルを固定して、パンツとズボンを履かせて抑制帯を解いてくれた。
「……すっげぇトイレ行きてぇ…。」
「まだ入れたばかりですから、尿意を感じると思いますけど、カテーテルに着いているストッパーは、3時間毎に先生が排尿させに来るので触らないように。」
「は?…先生に毎回おしっこさせてもらうのかよ?!」
この部屋に来てから何度屈辱に合わされてるのか…。
げっそりした気分で、処置道具を持って部屋を出て行く香西先生を見送った。
「まずは、点滴を抜去した理由を聞きましょうか。」
「……っ…なんで香西先生まで知ってんだよ。」
「常に情報共有をしてますから。暴れるほど点滴が嫌になった理由はなんです?」
何を言おうか迷っているのか視線を彷徨わせる柊。
「言いたい事が纏まってなくても構いませんよ?思っている事があるなら吐き出した方が気持ちが軽くなると思いますよ。」
「……昨日、女性ホルモンの点滴って聞いて、そんで…今朝、胸がチクチクする感じ……なんか違和感があって、俺…男なのに体が変わっていくみたいで、怖くなって……。」
なるほど…。
胸に違和感を感じるほどの効果が出ていたんですね。
「柊は、以前からふたなりの妊娠に消極的ですよね。これは国が定めた制度ですので、何を言おうとも義務で、あなたに拒否権はありません。……ですが、本当に妊娠を拒絶するのであれば抜け道がない訳ではないです。」
「……え?」
驚いたような顔をした柊が、ようやく私と目を合わせた。
この話をふたなり治験棟の職員である私が話すのはどうかと迷いはしたが、柊が今後の治療に対する意識が少しでも変わる事を期待して話すことにした。
「それは、不妊症です。」
「…ふにん…しょう。」
聞き慣れない言葉を確かめるように繰り返す。
「どんなに治療しても妊娠する事ができない状態を指します。」
「それって…病気って事…?」
「そうです。不妊の原因は様々で、卵巣に卵がなかったり、卵は沢山あるのに排卵…上手く育たずに卵巣から出て来られなかったり、そもそも子宮に異常がある場合など。」
「俺もそうなればここから抜け出せるって事?」
「……どんな手を尽くしても妊娠しなかったふたなりは、35歳を最後に退所できます。」
「……それまでずっとココ?」
「そうなりますね。国が定めた年齢の上限が35歳です。それまではココで暮らし続けないといけません。もし柊が妊娠を望まないにしても積極的に治療を受け妊娠出産を終えれば、早くて5年で退所できます。約20年と5年…柊は、どちらを選びますか?」
「……早くて……5年…。」
5年は20年に比べてずっと短い。
だが、若くして子供を産むことはそれなりのリスクを伴う。
両極端な選択肢を突きつけたと思うが、不妊症であっても35歳まで、今と変わらずに毎日治療をし続けなければいけない。
残酷だがこれが現実だ。
「……5年の内に妊娠出産すれば、晴れて自由の身。」
産んだ子供は、必ずしも産んだふたなりが育てないといけない訳ではない。
国が、次の子孫繁栄の為にきっちり育てて、またふたなり治験棟に入所させる。
だが多くのふたなりは、妊娠すると母性が強くなり子を手放す事を恐れる傾向にある。
柊がどちらに転ぶかは分からないが、早く退所したいと積極的に治療に臨んでくれれば何も問題はないだろう。
子を産んだふたなりは、国から生涯の生活を保証され、2人3人と産めば待遇される。
そのため一度退所したふたなりも次の妊娠の為に自ら入所する者も少なくはない。
「少しは治療に前向きに慣れそうですか?」
「……気持ちは軽くなったけど、それとこれとは別…。治療が嫌な気持ちは変わらない。」
「そうですか…。とりあえず導尿処置をしますね。……暴れられると困るので抑制帯は着けさせてくださいね。」
柊side
香西先生が抜け道があるとか言うから、期待したのに…結局は早く妊娠出産した方が身のためっていう話しでガッカリした。
処置の為に布団をどかされ、四肢と腰をベッドに抑制帯で固定された。
「ズボンと下着を脱がせますね。」
ベッドに固定したまま香西先生は、器用にズボンとパンツをふくらはぎの辺りまでずり下ろした。
「待って!…なんの処置すんの!」
「導尿と言って、膀胱までこのカテーテルを通しておしっこを出す処置をします。多少の違和感はあると思いますが、この部屋で過ごしている間は着けててください。」
「過ごしてる間って、いつまでこの部屋に閉じ込めとく気なんだよ。」
「それは東郷先生に相談ですね。明後日の午後にオーガズム時の膣圧測定はこの部屋でするので、そのつもりで。」
「……??……よく分かんねぇけど、かってにスケジュール組まれてんの?」
「みんな既に終わった検査です。カテーテル入れますね。」
話しながらも陰茎の包皮を剥かれ、尿道口を消毒され、潤滑ジェルのついたカテーテルを手にした香西先生は、スッと尿道にカテーテルを沈めていった。
「……ッ、痛ってぇ!……なんか熱っ…。」
「尿道を通る時は痛いかもしれませんね。後は留置したら終わりますから、我慢してください。」
太ももにテープで、陰茎から伸びたカテーテルを固定して、パンツとズボンを履かせて抑制帯を解いてくれた。
「……すっげぇトイレ行きてぇ…。」
「まだ入れたばかりですから、尿意を感じると思いますけど、カテーテルに着いているストッパーは、3時間毎に先生が排尿させに来るので触らないように。」
「は?…先生に毎回おしっこさせてもらうのかよ?!」
この部屋に来てから何度屈辱に合わされてるのか…。
げっそりした気分で、処置道具を持って部屋を出て行く香西先生を見送った。
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