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第5章 鳥籠の少女
8、鳥籠の少女は孤独
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新しい中学校へ進学した春。
私は自分の知人のいないこの地へ引っ越してきた。
本当の本当に新しい世界の始まりだった。
数百人の同い年の子が学校にいるのに、誰1人知らない顔というのはとても変な感覚だ。
自分の教室にいても、既にいくつかの友達グループが出来上がっていた。
元の学校の同級生な人ばかりなんだろうな。
男子は男子、女子は女子。
そんな風に別れていた。
「居場所がない……」
私の席の目の前で女子グループで4人ほど集まっていた。
輪の中に入れてと言えれば良いのだけれど、彼女らはちょっと化粧が濃い感じがしたり、言葉遣いが男っぽくて私と話が合いそうにないグループだ。
目を付けられたらパシりとかにされるのも嫌なので廊下に出た。
「…………はぁ。ちょっとハードモード過ぎるって」
家族の事情とはいえ、巻き込まれた娘は全部の人間関係をリセットされた。
6年間ずっと仲良く笑っていた子らは、全員違う学校なのだから。
「憂鬱……」
ぼーっとクラス前の教室に佇む。
人並みをそのまま眺めて人間観察みたいになる。
クラスに馴染むまで3ヶ月くらい掛かりそう……。
そんな風に悩んでいると3人組になった1つのグループが目に入る。
「それでな理沙がな!」
「それでね理沙ちゃんがね!」
「……あぁ、うん……」
中性的な感じの男の子。
背が低くて、髪を2つに結った女の子。
面倒そうではあるけど返事をしている目付きの悪い男の子。
彼らが私の目を引く。
なんで彼らが目を引いたのかというと、男女混合で歩いていたからだった。
他のグループは同性同士の集団だったので、なお目を引く。
良いなぁ、私も男の子とそんな風に混ざって行動してみたい。
男女に混ざってなんかをするというのに強い憧れがあった。
だから、一緒に歩いている背の低い女の子が羨ましかった。
目元の黒子とか可愛いし、もしかしてどっちかと付き合っていたりするのかな?とか無粋な推測をする。
しかも、『理沙』という女子っぽい名前も彼らから出てきた。
あのグループには他にも女の子がいるっぽい。
私の憧れを実現していた人達だった。
「新しい出会いにワクワクするな!」
「わたしは秀頼君の出会いだけでもう満足です」
そう言って2人は教室に入っていく。
しかし、目付きの悪い気だるげな男子は私の方に振り向いた。
「おはよう!」
う、うわわわっ!?
不意打ち気味にその人は私に挨拶をしてくれた。
突然で、心臓はばくばくだったけど出せる声を振り絞る。
「お、おはようございます!」
今日、はじめて自分の声を第3者に向けた。
変な声になっていないかなど、恥ずかしさが過る。
「俺の名前、明智秀頼って言います。よろしくね」
「は、はい!私の名前は宮村永遠です。永遠と書いて『トワ』です。明智さん、よろしくお願いいたします」
明智さんは優しい顔を浮かべて自己紹介をしてきたので、私も明智さんに知ってもらうために自分の名前を教える。
よく『エイエン』と間違われるので覚えてもらえる様に『トワ』であるとアピールする。
「俺の名前は明智光秀と豊臣秀頼が混ざったみたいな変わった名前だからさ。ちょっと宮村さんと親近感あるね」
おちゃらけたみたいに笑う明智さんに、私も釣られて笑う。
明智さんはとても話しやすくて、良い人だなと心を開き始めた。
「ふふっ、面白い人ですねっ!明智さんもこちらのクラスですか?」
「そうだよ。ということは宮村さんも?」
「はい、一緒のクラスです。明智さんみたいな人と同じクラスで私も嬉しいです!」
良かった!
明智さんとは同じクラスになれたら良いなと思っていたけど本当に同じなんて。
「そっかそっか。気軽に話しかけてくれると俺も嬉しいよ」
「はい!わかりました!」
「じゃあ俺、友達待たせてるから。ここで」
「はい。話しかけてくれてありがとうございました」
親しみやすくて格好良いなぁ。
目付きの悪さ以外は、かなり私のタイプ。
でも、私と話している時は目付きの悪さは気にならなかったなぁ……。
これからの学校生活が、俄然楽しみになってきた!
教室を覗くと明智さんが「悪い、悪い」と謝っている。
「あれ?秀頼、お前どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょっとUFO見付けて」
「えぇ!?凄い!それだったらわたしたちも呼んでよ!」
「UFOって何色だっ!?」
「…………ブラウン?」
明智さんが友達の元で変な言い訳をしているのが面白くて笑ってしまう。
時間差で教室に入ると、明智さんも気付いて目が合う。
良い印象を持たせたいな、と思い微笑みを返す。
「ブラウンって何色だっ!?」
「茶色」
仲良さそうに話す明智君に目を奪われる。
あんな風に私とも会話をして欲しいな。
それを一緒に笑う女の子。
あの輪に入りたかった。
うーん……。
いきなり明智さんと話すのはハードルが高い。
そっちの男の子も、男子女子関係なく話してくれそうだけど、明智さんよりもハードルが高い。
そうなると……、あの女の子に認知されるといけるかな?
名前は、佐々木絵美さんらしい。
よし、私も勇気を出して佐々木さんと友達になってみよう!
私は自分の知人のいないこの地へ引っ越してきた。
本当の本当に新しい世界の始まりだった。
数百人の同い年の子が学校にいるのに、誰1人知らない顔というのはとても変な感覚だ。
自分の教室にいても、既にいくつかの友達グループが出来上がっていた。
元の学校の同級生な人ばかりなんだろうな。
男子は男子、女子は女子。
そんな風に別れていた。
「居場所がない……」
私の席の目の前で女子グループで4人ほど集まっていた。
輪の中に入れてと言えれば良いのだけれど、彼女らはちょっと化粧が濃い感じがしたり、言葉遣いが男っぽくて私と話が合いそうにないグループだ。
目を付けられたらパシりとかにされるのも嫌なので廊下に出た。
「…………はぁ。ちょっとハードモード過ぎるって」
家族の事情とはいえ、巻き込まれた娘は全部の人間関係をリセットされた。
6年間ずっと仲良く笑っていた子らは、全員違う学校なのだから。
「憂鬱……」
ぼーっとクラス前の教室に佇む。
人並みをそのまま眺めて人間観察みたいになる。
クラスに馴染むまで3ヶ月くらい掛かりそう……。
そんな風に悩んでいると3人組になった1つのグループが目に入る。
「それでな理沙がな!」
「それでね理沙ちゃんがね!」
「……あぁ、うん……」
中性的な感じの男の子。
背が低くて、髪を2つに結った女の子。
面倒そうではあるけど返事をしている目付きの悪い男の子。
彼らが私の目を引く。
なんで彼らが目を引いたのかというと、男女混合で歩いていたからだった。
他のグループは同性同士の集団だったので、なお目を引く。
良いなぁ、私も男の子とそんな風に混ざって行動してみたい。
男女に混ざってなんかをするというのに強い憧れがあった。
だから、一緒に歩いている背の低い女の子が羨ましかった。
目元の黒子とか可愛いし、もしかしてどっちかと付き合っていたりするのかな?とか無粋な推測をする。
しかも、『理沙』という女子っぽい名前も彼らから出てきた。
あのグループには他にも女の子がいるっぽい。
私の憧れを実現していた人達だった。
「新しい出会いにワクワクするな!」
「わたしは秀頼君の出会いだけでもう満足です」
そう言って2人は教室に入っていく。
しかし、目付きの悪い気だるげな男子は私の方に振り向いた。
「おはよう!」
う、うわわわっ!?
不意打ち気味にその人は私に挨拶をしてくれた。
突然で、心臓はばくばくだったけど出せる声を振り絞る。
「お、おはようございます!」
今日、はじめて自分の声を第3者に向けた。
変な声になっていないかなど、恥ずかしさが過る。
「俺の名前、明智秀頼って言います。よろしくね」
「は、はい!私の名前は宮村永遠です。永遠と書いて『トワ』です。明智さん、よろしくお願いいたします」
明智さんは優しい顔を浮かべて自己紹介をしてきたので、私も明智さんに知ってもらうために自分の名前を教える。
よく『エイエン』と間違われるので覚えてもらえる様に『トワ』であるとアピールする。
「俺の名前は明智光秀と豊臣秀頼が混ざったみたいな変わった名前だからさ。ちょっと宮村さんと親近感あるね」
おちゃらけたみたいに笑う明智さんに、私も釣られて笑う。
明智さんはとても話しやすくて、良い人だなと心を開き始めた。
「ふふっ、面白い人ですねっ!明智さんもこちらのクラスですか?」
「そうだよ。ということは宮村さんも?」
「はい、一緒のクラスです。明智さんみたいな人と同じクラスで私も嬉しいです!」
良かった!
明智さんとは同じクラスになれたら良いなと思っていたけど本当に同じなんて。
「そっかそっか。気軽に話しかけてくれると俺も嬉しいよ」
「はい!わかりました!」
「じゃあ俺、友達待たせてるから。ここで」
「はい。話しかけてくれてありがとうございました」
親しみやすくて格好良いなぁ。
目付きの悪さ以外は、かなり私のタイプ。
でも、私と話している時は目付きの悪さは気にならなかったなぁ……。
これからの学校生活が、俄然楽しみになってきた!
教室を覗くと明智さんが「悪い、悪い」と謝っている。
「あれ?秀頼、お前どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょっとUFO見付けて」
「えぇ!?凄い!それだったらわたしたちも呼んでよ!」
「UFOって何色だっ!?」
「…………ブラウン?」
明智さんが友達の元で変な言い訳をしているのが面白くて笑ってしまう。
時間差で教室に入ると、明智さんも気付いて目が合う。
良い印象を持たせたいな、と思い微笑みを返す。
「ブラウンって何色だっ!?」
「茶色」
仲良さそうに話す明智君に目を奪われる。
あんな風に私とも会話をして欲しいな。
それを一緒に笑う女の子。
あの輪に入りたかった。
うーん……。
いきなり明智さんと話すのはハードルが高い。
そっちの男の子も、男子女子関係なく話してくれそうだけど、明智さんよりもハードルが高い。
そうなると……、あの女の子に認知されるといけるかな?
名前は、佐々木絵美さんらしい。
よし、私も勇気を出して佐々木さんと友達になってみよう!
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