ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

文字の大きさ
52 / 136
第5章 鳥籠の少女

9、鳥籠の少女の歪な友人関係

しおりを挟む
数日間、どうやって佐々木さんに話掛けようか迷った。
それとなく、教室に居る彼らを追うと、明智さんと佐々木さんの距離が近く見える。
付き合っているのかな……?

いや、別に私の目的は明智さんと付き合うことではなく、この教室の明智さんらの輪に入りたいのが目的だ。

まずは、佐々木さんから認知されるのが大事だ。  

「佐々木さん!」
「えっ!?は、はい!?」

勇気を出して、横にいた彼女へと話しかけると、急に驚かせたのか、声が上ずっていた。

「み、宮村さん……?」
「あっ、私のこと知っていたんですね!嬉しいですっ!」

佐々木さんの手を握る。
小さくて可愛い手だ。
明智さん関係なく、佐々木さんとも仲良くなりたいと思った。

「あ、……あのっ!?友達になってくださいっ!」
「え……?」
「佐々木さん、めっちゃ可愛いですっ!」

私の気持ちを伝えた。
この学校で1番最初の友達になって欲しい、そんな願いを込めて佐々木に伝えた。

「うわぁ、嬉しいなぁ!佐々木さんなんて呼ばず名前で呼んでください!」
「そ、そうですか……?じゃ、じゃあ絵美、私も永遠って呼んでください」
「はい、永遠!よろしくお願いいたします!困ったことがあったらなんでも相談してくださいっ!」

距離感の詰め方が異次元の速さだった。
流石、男女混合グループに所属をしているとこれくらいが当然なのかもしれない。

「秀頼くーん、わたし永遠と仲良くなりました!」
「おー、あっそ」
「もう!秀頼君、興味無さすぎじゃない!?」

クラスメートの十文字さんと談笑していたのを邪魔されたからか、明智さんは絵美に塩対応をしていた。
でも、その対応が距離感の近さを感じる。

「ちょっと絵美は騒がしい奴だけど、宮村さんよろしくね!」
「は、はいっ!」

ニコッと笑い明智さんは私に笑いかける。

「ぶーっ。秀頼君、永遠に気がある」
「なんだ?嫉妬かお前?可愛いなぁ」
「エヘヘー」

明智さんが絵美の頭を撫でる。
それを感じる絵美が幸せそうに顔を赤くする。
どんな気持ちなのかな?
私も明智さんに頭を撫でて欲しいなと、ちょっと絵美に嫉妬した。

「コイツら良い奴だからな、宮村もすぐ仲良くなれるぞ」
「じゅ、十文字さんもよろしくお願いいたします!」
「OK!よろしくなー」

勇気を出して絵美に話しかけたら、一気に私の友達が増えたみたいで学校生活が楽しくなってきた。
ようやく、つまらなかった学校生活にも色が出てきた。

「よーし、永遠!今日は、違うクラスの子も紹介するよ!」
「え?き、緊張するな……」
「大丈夫、大丈夫!全員女の子同士だから!」

そして絵美に連れられて違うクラスの教室にお邪魔させてもらった。
軽く説明を受けると、十文字さんの妹さんと女の子全員大好きな女の子という説明を受ける。

「理沙ちゃーん、円ちゃーん、来たよー」
「絵美さん、待ってました」
「おっ!?こっちの子が永遠ちゃんか!良い胸してますな!ゴチになります」
「こらこら」

緑髪の女の子を黒髪の女の子が制止する。
黒髪の女の子は確かに雰囲気とか顔付きが十文字さんに似ていた。
中性的な顔をしているので似ている兄妹だと思った。

「私が十文字理沙です。兄さんから話は聞いてますよ。理沙って呼んでください」
「そんで、理沙と絵美の姉の津軽円です。気軽にお姉ちゃんって呼んでください」
「はいっ!私は、宮村永遠です!呼び捨てで呼んでもらってかまわないです!理沙と円ですね、よろしくお願いいたします!」
「お姉ちゃんって呼んで!」
「この人は無視で大丈夫です」

理沙のフォローにあははと笑う。
学校に馴染めなかった私が、ちょっと勇気を振り絞ったらこんなに友達が増えて楽しくなってきた。

「…………」

その近くを1人の女の子が無言で歩いていた。
ボッチで歩く彼女と自分を重ねてしまう。
可哀想だし、ちょっと声を掛けてみようかな。

「ねぇ、ちょっと良いかしら?」
「は、は、……はいっ!?」

目が一瞬合ったので、その隙に軽く声を掛けると彼女はこちらに顔を向ける。
髪にコーヒーカップの付いた特徴的なヘアゴムが目に付いた。
とても慌てだす彼女に親近感が沸く。
ボッチ仲間も作れそう。

「こんにちは」
「……こんにちは」
「あなたは……」

何か声を掛けようとした時、彼女は大きく目を見開きすぐに顔を反らした。

「すみません、失礼します」

明らかな拒絶の言葉だった。
何に対してそこまで怯えているのか全然わからなかった。

「…………」
「絵美?」

絵美がちょっと黙ってその女の子が去るのを見届けている。
少し雰囲気がいつもと違う気がするけど、知り合いなのかな?

「あの子は一体?」

そう思っていたけど、絵美は去っていく彼女の名前を尋ねた。
なんだ知らない人か。
私と同じでただ驚いて固まっただけかもしれない。

「あぁ、彼女は谷川咲夜さんですね」
「可愛いんだけど、ちょっと近寄りがたくてね。自ら臨んでボッチしてるみたいだからさ」
「遠慮しちゃいますよね……。あんなに拒絶されたら次誘うのも躊躇しちゃいます」

理沙と円がその谷川さんについて説明をする。

「ふーん……」

なんとなく、絵美の口からは興味の無さそうなトゲのある言い方が気になった。
しかし、すぐに明るく微笑んだ。

「せっかく永遠も仲間に増えたことですし、プールですよ!プール!水着を買いに行きましょう!」
「み、水着!?買おう、お姉さんが全員ぶん水着買ってあげる!」
「兄さんと明智君のぶんも買うんですか?」
「買うわけねーだろ」

絵美の提案に、円と理沙も乗り気だった。
しかも、明智さんと十文字さんの参加も勝手に決められているみたいだった。

「じゃあじゃあ、プール行くのが7月のどっかと仮定して。来月のどっかくらいに水着新調だーっ!」

リア充グループの会議は一瞬だった。
私も混ざって良いのか考えていると「当然、永遠も強制参加です!」と絵美から笑顔で言い切られた。

「よっしゃ、円ハーレム出動するっ!」
「しないしない」

絵美の突っ込みに理沙がクスクス笑い、私も一緒に釣られて笑う。
まだこの中学校に入学して数ヶ月なのに、もう前の学校より今の環境の方が大好きになっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...