ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

14、悲劇の夢

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絵美と永遠ちゃんの邂逅したその日の放課後。
緊急事態として、俺は津軽円を例の川原へ呼び寄せていた。

アクシデントと言ったら、『アクシデント』という言葉に驚き、彼女が横文字NGということを知った俺だが、そこは本題ではない。

議題は絵美らの原作の記憶問題である。
一部始終を語れる範囲で語っておく。

「いや、それかなりヤバイんじゃない?」
「や、やっぱりそうだよな……」
「しかも絵美が原作のことを知っているかのように言ったのが2回目というのが不穏ね……」

1回目に起きた理沙シナリオの言及についてはかなり昔の話なので、津軽にも話すのを忘れていた。
そして、絵美以外にも永遠ちゃんにもその兆候がきている旨も伝える。

「俺もよくゲームキャラクターに会う時、そういった原作の惨劇をリプレイする夢を見ることはあるな……。少なからず、彼女らにも起きている可能性は高い」
「ふーん」
「逆に君はないの!?」
「全然。私、そもそもそんな役割ないし。そういえばはじめて話し合いをした時も夢がどうたら言ってたわね。逆にちょっと津軽円目線の夢とか見てみたいわね」

呑気なことを言う転生者である。
同じ転生者なのに、秀頼と津軽とのフラグの多さと忙しさの差がえぐすぎる……。

「そういえば私もすれ違っただけだけど宮村永遠に会ったわよ」
「おお!?ついに俺の推しを見てしまったのか」
「何よあの子!?ちょっと反則過ぎるくらい可愛いわね!?ゲームではほとんどハイライトのない目でしか出演しないから陰キャみたいな印象しかなかったけどこれはちょっと反則すぎるのではないかって!」
「ついに君も永遠ちゃんの魅力に気付いたか?」
「気付いちゃった!はあああ、可愛い!!」
「尊い……」
「愛でたい……」

後半、お互いに永遠ちゃんを褒め称える会に変更されていたことに気付くのは解散する直前であった。


―――――


津軽と別れて自宅へ向かいながら、色々な思考をしながら歩く。
今後の立ち回り方。
永遠ちゃんの家庭の問題。
絵美と永遠ちゃんの原作の記憶問題。
永遠ちゃん以降のヒロインの問題。
完全に空気で無能役として存在が消えているタケル。

考えなくてはいけないことが多すぎるなと毒づきながら歩いていると、俺の家が見えてきた。
そして……。

「秀頼君、遊びにきちゃった」
「良いよ、中に入れよ」

絵美が俺の家の前で待ち伏せしていた。
多分何かしらの確認したいことがあるのかもしれない。
そのまま流れで、自室まで彼女を案内する。

「どうした?」
「どうしたんだろうね……?」
「え?」

絵美が首を上にして部屋の天井へ視線を移す。
その顔色からは、迷いが見える。

「たまに変な夢とか見ちゃってさ……。わたし、……宮村さんに恨まれても仕方ないみたいなことをしていて……。内容は全然覚えてないんだけど……」
「うん……」
「でも、今日の秀頼君の行動見て、もしかしたら同じ体験してるのかなってなんとなく思っちゃった」
「夢は見るよ……」

この世界は『悲しみの連鎖を断ち切り』というゲームの世界ですとは言えないけど、夢は俺も見ていたから……。

「酷く悲しい、悲劇の夢」
「…………」
「でも夢だろ?気にすんなよ」
「え?」
「大丈夫。……絵美を守るから、みんなを守るから」

そのためには、ギフトだってなんだって活用してやる。
それが、俺が記憶を思い出した意味なんだと思う。

「むしろわたしは……、秀頼君が心配だよ。抱え込まないで教えて欲しい」
「……いや、何も抱えていねぇよ!大丈夫だ」
「…………わかった。そういうことにする」

絵美が立ち上がり、俺に背を向ける。
どうやら会話も終わりのようだ。

「いつか、秀頼君の口から本心を聞きたいな。わたし、秀頼君のこと、す…………大事にしてるんだからね!……じゃあ、またね」
「あぁ……、またな」

扉が閉まる音が耳に届く。
絵美は鋭いな……。
いつか、俺も抱えていること全部バラしてやりてぇよ。

俺が自分が明智秀頼になった際に、ゲームの展開をまとめたノートを取り出す。

「…………母さん、父さん、来栖さん……。俺辛いよ……。1回死んだからこそ、またいつか死ぬかもって恐怖に耐えられなくなりそうだよ」

このノートが俺と前世を繋ぐ大事な情報源。

「来栖さんは強いね。身体が弱くて病弱の身体を引きずってまで学校来てさ、格好良い。輝いて見えた……」

まだ前世の恋を引きずってるとかキモいよな俺……。
早く、吹っ切っていかないといけないのにさ。

「大丈夫、……生きる。大事な人を犠牲にさせないでこのゲームを終わらせるんだ」

ノートを握る力が強くなっているのに気付き離した。
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