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第5章 鳥籠の少女
15、明智秀頼は看病を依頼される
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日曜日。
俺は、部屋に閉じ籠っていた。
テレビを付けて、ゲームのコントローラーを握った時であった。
おばさんの声が部屋の外から聞こえてきた。
『秀頼ー、弟から電話だよー』
「えー……」
マスターから俺宛ての電話を受信したようだ。
面倒だったが、コントローラーを置いておばさんから俺に電話を変える。
「秀頼は不在です」
『出てるやん』
「もしもし、何の用っすか?」
『切り替え早いな』と突っ込まれながら、マスターの用事を待つ。
『実はちょっと秀頼君にお願いがあるんだよ』
「俺は無いよ」
『そういうこと言うなよ。ちょっと、マジなお願いなんだよ』
「再婚するとか?」
『それなら君じゃなくて姉貴に言うよ』
マスターの言葉を聞きながら『面倒そうだな……』と、察する。
『咲夜がさ、風邪引いちゃって。看病をお願いしたいんだよ。日曜日だし病院はやってないし、店は日曜日が稼ぎ時だしさ!本当に頼むよ!』
「報酬は?」
『金の要求かよ……。君から1回もコーヒー代もらってないんだしそれくらい勘弁してよ』
「それ言われると耳が痛い」
『報酬というなら咲夜の部屋に入れるのが報酬みたいなもんでしょ!』
「舐めてんのか?」
わけのわからないことを言い出すマスター。
別に咲夜の部屋とかどうでも良いんだが?
『舐めてないよ。僕は1億積まれても男子を可愛い咲夜の部屋に入れないんだから。1億の価値あるでしょ!』
「じゃあ1億くれよ」
『身も蓋もないよね君って……』
「大体可愛いか?マスターの娘?」
『顔は可愛いだろ!』
顔は、って親が言っちゃったよ。
中身がダメなのは認めるらしい。
『お願いだよ。差し入れに力入れるからさ。どうせ暇でしょ?』
「スマブラが……」
『暇だね』
こうして、貴重な日曜日が咲夜の看病という予定が埋まってしまった。
「あら?秀頼出掛けるのかい?」
「マスターから頼みごとをされた」
「あららー、弟も大変ねー。行ってらっしゃい」
おばさんから見送られて、自転車を走らせて喫茶店に向かうのであった。
ーーーーー
「いつもは待ってないけど、今日は待ってました!」
「本気で帰るぞ?」
「まあまあ、そんなカリカリしないの」
「いつもの」
「何くつろぐ気満々なのさ!?」
カウンターの席に座り注文したが、今日は残念ながらコーヒーは出てこないらしい。
「ごめんねぇ、ウチ奥さんいないのが大変でさぁ。娘も看病されるなら秀頼君が良いって聞かなくて」
「ダウト、咲夜がそんな可愛いこと言うかよ」
『おい貴様、呼んでないぞ。帰れ』という言葉を喋る未来しか出てこない。
彼女にとって一応最初の友達が俺らしいが、結構嫌われているのだから仕方ない。
「そんな可愛いこと言うんだよ……。僕は正直言うと秀頼君と咲夜でくっついて欲しいくらいなんだ」
「ダメ男とダメ女のカップルとかロクでもないぞ?てか、普通マスターポジションの人は『娘には手を出させねぇ!』タイプでしょ。何くっつける気でいるのさ」
「孫の顔さえ見れれば妥協だよね」
「妥協って言った?」
「僕は結構秀頼君好きだけどね」
「俺はマスターと再婚しねーよ?」
「させねーよ」
俺の精神年齢とマスターの年齢が近いからか、お互いズバズバ言う人間関係になっていた。
不良な口悪い兄ちゃんくらいの認識をしている。
「2階に上がれば咲夜の部屋あるからさ、よろしくねー」
「はいよーっす」
喫茶店兼自宅であるマスターらの家に上がるのも思えばはじめてであった。
靴を脱いでそのまま歩くと何個かの部屋があったが、『sakuya』と札のある部屋を見付けたのでノックしてから咲夜の部屋に入った。
真っ先に部屋に入り、粗大ゴ……タペストリーが貼られており、そのすぐ近くに彼女はいた。
「ぅぅ……、死にそうたすけてマスター」
「…………」
ベッドで倒れていて、風邪で寝込む咲夜が真っ先に視界に入る。
机に置かれた氷水の張られた桶に入っていたタオルを絞って、咲夜のおでこにあったタオルと交換した。
「つめてっ!?……やさしくしてくれー」
「要求が多いな」
「ひ、秀頼か……?」
「あぁ、そうだよ」
ぬるくなったタオルを氷水に濡らしながら疑問に答えておく。
「会いたかったよぉ、秀頼ぃ……。貴様かマスターしかこんなの頼めるのいないんだよぉー」
「どうしたんだよ急に?」
もしかしてマスターが俺に看病して欲しかったって話は真実なのかなとか思う。
あれは流石に盛った話か。
「ぅぅぅ……、しんじゃうよー、しんじゃうよー」
「大丈夫だよ、ただの風邪だろ?」
「でもただの風邪でも江戸時代では死者が多かったんだぞ?」
「君はいつの時代の子供なんだよ……」
相変わらず面白いけど、脈絡のない話ばかりしてくる子である。
……が、弱って弱気な咲夜はギャップがあって少し可愛げがあるなとか思ってしまう。
俺は、部屋に閉じ籠っていた。
テレビを付けて、ゲームのコントローラーを握った時であった。
おばさんの声が部屋の外から聞こえてきた。
『秀頼ー、弟から電話だよー』
「えー……」
マスターから俺宛ての電話を受信したようだ。
面倒だったが、コントローラーを置いておばさんから俺に電話を変える。
「秀頼は不在です」
『出てるやん』
「もしもし、何の用っすか?」
『切り替え早いな』と突っ込まれながら、マスターの用事を待つ。
『実はちょっと秀頼君にお願いがあるんだよ』
「俺は無いよ」
『そういうこと言うなよ。ちょっと、マジなお願いなんだよ』
「再婚するとか?」
『それなら君じゃなくて姉貴に言うよ』
マスターの言葉を聞きながら『面倒そうだな……』と、察する。
『咲夜がさ、風邪引いちゃって。看病をお願いしたいんだよ。日曜日だし病院はやってないし、店は日曜日が稼ぎ時だしさ!本当に頼むよ!』
「報酬は?」
『金の要求かよ……。君から1回もコーヒー代もらってないんだしそれくらい勘弁してよ』
「それ言われると耳が痛い」
『報酬というなら咲夜の部屋に入れるのが報酬みたいなもんでしょ!』
「舐めてんのか?」
わけのわからないことを言い出すマスター。
別に咲夜の部屋とかどうでも良いんだが?
『舐めてないよ。僕は1億積まれても男子を可愛い咲夜の部屋に入れないんだから。1億の価値あるでしょ!』
「じゃあ1億くれよ」
『身も蓋もないよね君って……』
「大体可愛いか?マスターの娘?」
『顔は可愛いだろ!』
顔は、って親が言っちゃったよ。
中身がダメなのは認めるらしい。
『お願いだよ。差し入れに力入れるからさ。どうせ暇でしょ?』
「スマブラが……」
『暇だね』
こうして、貴重な日曜日が咲夜の看病という予定が埋まってしまった。
「あら?秀頼出掛けるのかい?」
「マスターから頼みごとをされた」
「あららー、弟も大変ねー。行ってらっしゃい」
おばさんから見送られて、自転車を走らせて喫茶店に向かうのであった。
ーーーーー
「いつもは待ってないけど、今日は待ってました!」
「本気で帰るぞ?」
「まあまあ、そんなカリカリしないの」
「いつもの」
「何くつろぐ気満々なのさ!?」
カウンターの席に座り注文したが、今日は残念ながらコーヒーは出てこないらしい。
「ごめんねぇ、ウチ奥さんいないのが大変でさぁ。娘も看病されるなら秀頼君が良いって聞かなくて」
「ダウト、咲夜がそんな可愛いこと言うかよ」
『おい貴様、呼んでないぞ。帰れ』という言葉を喋る未来しか出てこない。
彼女にとって一応最初の友達が俺らしいが、結構嫌われているのだから仕方ない。
「そんな可愛いこと言うんだよ……。僕は正直言うと秀頼君と咲夜でくっついて欲しいくらいなんだ」
「ダメ男とダメ女のカップルとかロクでもないぞ?てか、普通マスターポジションの人は『娘には手を出させねぇ!』タイプでしょ。何くっつける気でいるのさ」
「孫の顔さえ見れれば妥協だよね」
「妥協って言った?」
「僕は結構秀頼君好きだけどね」
「俺はマスターと再婚しねーよ?」
「させねーよ」
俺の精神年齢とマスターの年齢が近いからか、お互いズバズバ言う人間関係になっていた。
不良な口悪い兄ちゃんくらいの認識をしている。
「2階に上がれば咲夜の部屋あるからさ、よろしくねー」
「はいよーっす」
喫茶店兼自宅であるマスターらの家に上がるのも思えばはじめてであった。
靴を脱いでそのまま歩くと何個かの部屋があったが、『sakuya』と札のある部屋を見付けたのでノックしてから咲夜の部屋に入った。
真っ先に部屋に入り、粗大ゴ……タペストリーが貼られており、そのすぐ近くに彼女はいた。
「ぅぅ……、死にそうたすけてマスター」
「…………」
ベッドで倒れていて、風邪で寝込む咲夜が真っ先に視界に入る。
机に置かれた氷水の張られた桶に入っていたタオルを絞って、咲夜のおでこにあったタオルと交換した。
「つめてっ!?……やさしくしてくれー」
「要求が多いな」
「ひ、秀頼か……?」
「あぁ、そうだよ」
ぬるくなったタオルを氷水に濡らしながら疑問に答えておく。
「会いたかったよぉ、秀頼ぃ……。貴様かマスターしかこんなの頼めるのいないんだよぉー」
「どうしたんだよ急に?」
もしかしてマスターが俺に看病して欲しかったって話は真実なのかなとか思う。
あれは流石に盛った話か。
「ぅぅぅ……、しんじゃうよー、しんじゃうよー」
「大丈夫だよ、ただの風邪だろ?」
「でもただの風邪でも江戸時代では死者が多かったんだぞ?」
「君はいつの時代の子供なんだよ……」
相変わらず面白いけど、脈絡のない話ばかりしてくる子である。
……が、弱って弱気な咲夜はギャップがあって少し可愛げがあるなとか思ってしまう。
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