ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

34、佐々木絵美は巻き込まれたい

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喫茶店からも追い出され、俺と絵美は自宅に向かい帰路の道を辿る。
やや薄暗いが日は長いので、歩くことによる恐怖はあまりない。

「まったく……、永遠とデートしててずるいよ秀頼君」
「ご、ごめんって……。ちょっと街の案内を依頼されてね」
「……そうなんじゃないかと疑ってたけど、だいぶ強い相手だったなぁ」
「強いって何が?」
「難聴スキル発動して良いですよ」

絵美はどうやら永遠ちゃんとのデートに不服らしかった。
最近仲良かったみたいだし、永遠ちゃんと一緒に遊びたかったんだなとちょっと申し訳なくなる。
もし、次に同じことがあったら永遠ちゃんに『絵美も誘っていいか?』と聞いた方が良いかも。

「それでさ、絵美に相談があるんだ」
「相談ですか?」

俺はもう、正直行き詰まっていた。
鳥籠問題の解決法がどうしても浮かばない。

「絵美が1番エイエンちゃんと仲が良いから最初に相談するんだけど、彼女はちょっと家庭環境に問題があるんだ」
「家庭環境?」
「彼女がこっちに引っ越して来た理由にも繋がるらしいんだけど……」

今日、俺に相談されたこと。
ゲームで提示されていた、父親の問題。
この2つを絵美に打ち明けた。

ゲームの秀頼に操られた絵美は、罠を張るために色々な悪事に加担していたけど、大丈夫だ。
今の絵美なら普通に、真面目にものを考えられる優しい少女だ。

「別に解決策がないならないで良い。絵美が思い浮かばない時は理沙や津軽とかにも聞いてみるけど」
「……なるほど。永遠は抵抗も出来ず、秀頼君は答えがわからないんだね」
「……うん。俺なんか本当に力になれなくて、無力でさ……、情けないよな……」

俺が永遠ちゃんにしてあげれたことなんか何もない。
1人の人間の悩みすら解決できない……。

「そんなことない。秀頼君は、無力でも情けなくもないよ」
「絵美……」
「もっと、わたしに弱いところをさらけ出して欲しいな。強くて格好良い秀頼君も大好きだし、弱くて格好悪い秀頼君も大好きだから。もっと頼って欲しい」
「でも、そんなの迷惑に……」
「ならないよ」

遮る形で絵美は言葉を書き消す。
一歩、彼女が俺に顔を近付ける。

「わたし、秀頼君に巻き込まれるの大好き。そりゃあ確かに教室の掃除任されたとかそういうのは面倒って思うよ。でも、巻き込んでもらえない方がよっぽど悲しいな……」
「巻き込んで、良いのか……?」
「いいよ」

前世で肩を壊された際に、部活のみんなに迷惑を巻き込ませたくなくてそのまま黙って退部届けを提出した。

『お前が、一言先公にチクるだけで毎日遅くまで練習して努力している奴の努力が水の泡に消えるんだぞ?豊臣の肩は一生治らねぇ。なら事故ってことにして巻き込まない方が賢いよな?巻き込まれた方は迷惑なんだよ。なぁ、豊臣、どうすんの?』

クソ野郎な部長の言葉が脳内に再生される。
巻き込まれることは迷惑じゃないのか……?
俺の選択って間違ってたのかな……?

「わたしなんか秀頼君を巻き込んでばっかりじゃん。はじめて公園で1人だった秀頼君を見掛けて巻き込んで遊んだし。今日も秀頼君を幹事に巻き込んだりしたしね。……逆に秀頼君は人を巻き込まないから不安になる」
「不安……?」
「いつか、わたしを置いて消える。そんなことを考えちゃう。巻き込んでくれた方が凄く安心する。必要とされてるって実感できる」
「っ!?」

巻き込んでくれた方が安心する、か。
考えたこともなかったなそんなこと。

でも、そんな考え方もあるんだな。

「そして、巻き込まれた以上、わたしは絶対に秀頼君の力になる!永遠のことも好きだから、絶対に助ける!」
「絵美……。本当に小さい身体で頼りがいがあるよなお前」

絵美の頭を撫でる。
ガキの頃はほぼ同じ身長だったのに、今では10センチ以上の差になっていた絵美の身体。
でも、本当に頼もしい。

「へへっ、永遠ちゃんの鳥籠かぞく問題をちゃちゃっと解決してプールに行きましょう!」

本当に俺のことをなんでもわかってくれる絵美が好きだ。
こんなに頼もしい仲間が近くにいる。
まだ始まってすらいない原作ゲームの展開を変えられる、そんな都合良い考えが頭に浮かぶくらいに今の俺は絵美に救われた。
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