ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

33、佐々木絵美はプールで迷う

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喫茶店での雑談も終わり、ぼちぼちと家の遠い永遠ちゃん、津軽、タケル・理沙と家へと帰って行く。
店から家がやや近い距離の俺と絵美が残された状態になる。
そこで幹事2人は、どこのプールに行くかを打ち合わせしていた。

「プールって室内と屋外どっちにするべきかな!?」
「天気関係ない室内じゃないかな」

こういう場合はニーズで考えるべきだ。
焼けたくない女性が集まると仮定すると、屋外よりも室内の方の方が人気なはず。
つまり、色白美人な水着ギャルを拝めるのは室内という推理である。

「室内ねー。でも、プールって屋外のイメージない?」
「無いね。それは小学生の集まるキッズの話だろ。大人のプールは室内だよ」
「秀頼がウチみたいなこと言ってる……」

絵美の隣に座り黙って見ていた咲夜が口を出してくる。
マスターは店仕舞いをしていてちょっと忙しい。

「でも、わたし達はまだ中学生だし大人向けよりキッズ向けの方が良いのでは?」
「絵美もウチみたいなこと言ってる……」
「いやいやいや、室内の方がキッズが迷子になっても見付かりやすいだろ?キッズだけで行くなら室内でしょ」
「さっきの言い分と矛盾してない?」

優柔不断を発揮する絵美に、俺は室内プールを推しまくった。
色白美人の水着ギャルが狙いという部分は伏せつつ、あくまで天気が雨でも行けるでしょ?というスタンスだ。

「というか、そもそもキッズだけでプール行けるのか?保護者付かないとダメなんじゃ?」
「なーに、心配するなよ咲夜。君のお父さんがいるじゃないか」
「僕も巻き添え!?」

黙って店をモップ掛けしてしていたマスターから大声で反応された。

「え?来ないの?」
「僕店あるから来れないでしょ。引率なら姉貴に頼みなよ」
「でもマスター?水曜日の定休日なら空いてるでしょ?夏休みなら全員と都合合うでしょ?」
「咲夜……、背中から切らないで……」

俺が言いたかったことを娘のアシストで逃げられなくなるマスター。
娘には相変わらず弱い……。

「それに永遠は『このメンバーでプール行きたいです!』って言ってた。マスターも入ってる」
「入ってるわけないでしょ!」
「あ、あはは……」

絵美がマスターの苦労人振りに同情するかの様に笑う。
俺は自分で動かなくても、咲夜が勝手に説得してくれるので黙って見ていた。

「それに僕の車、そんなに人入らないよ」
「個人で電車使うだろ」
「水着持ってないよ」
「買えば良いだろ」
「僕、プール行きたくないよ」
「ウチはマスターとプール行きたい」
「…………」

マスターが娘に次々と論破されていく。
本当に不憫な人だ……。

「お、面白い人ですね……。マスターさん……」
「あぁ。なんたって咲夜の親父だからな。面白いよ」
「そうだね」
「なんの納得?」

マスターが「はぁ……」とため息を付く。
降参の合図だなと察した。
そのままモップ掛けを終えて、自分の手を洗いはじめた。

「で、君が佐々木さんだね」
「はじめまして、佐々木絵美です」

絵美が短いツインテールを揺らしながら頭を下げた。
マスターが値踏みをするみたいに絵美をじっと見ていた。

「いつも秀頼君からマスターさんのこと色々聞いてますよ」
「いつもマスターのこと色々教えてますよ」
「ロクなこと言ってないのわかるわー……」

絵美の声色を真似したけど、マスターからは「可愛くないよ」と不評である。

「いつも話が面白くて、相談に乗ってくれて、価値観も合いやすいし、自分の兄貴みたいだと語ってくれています」
「意外と真面目なこと言ってるね」
「……ただ、親バカな変人だと」
「さっきの評価全部吹っ飛んだよ」

蛇口の水を止めて、タオルで手を拭く彼は余計なお世話だというニュアンスである。

「僕も佐々木さんのこと色々秀頼君に聞いてるよ」
「え?そうなんですか?」
「うん。自分にとって誰よりも1番近くて、愛想もよくて、近くにいると落ち着けるし、楽しい気持ちになれるし、最高に可愛いって」
「や、やだ。秀頼君。わたしをそんな風に思っていたなんて……。本当に素敵」
「……あと、自分にとって妹みたいな存在だと」
「は?」
「え……?」

一瞬で絵美が不機嫌な声になった。
え?マスターの俺が語った絵美の評価に対する怒りポイントがまったくわからなかった。
全部真実だし、褒めたつもりだったのだけど。

「わたし、秀頼君のそういうところがイラっとするの」

しかも、絵美がかなり睨みながらこっちを見ている。
なんで?
なんで俺怒られてるの?
そう思っていると、絵美の隣に座る咲夜も口を開く。

「絵美」
「どうしました、咲夜?」

おっ、咲夜がフォローにまわってくれる。
俺が普段から絵美を褒めていると伝えてくれと心でエールを送る。

「ウチも同感。秀頼のそういうところが殴りたくなる」
「なんで!?」

喫茶店を出るまで、機嫌が悪くなった2人の相手をするのが本当に大変だった。
妹と年下に見られているのがダメなのかもしれない。
『姉と思っている』と伝えた方が女子の反応が良いかもと考えるようになった。
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