ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

41、十文字理沙は秀頼と遊びたい

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「中は意外と狭いですねー。それに暗いです」
「そうだね……」

警戒心がないのか、狭い・暗いとわかっていても引き返す素振りのない理沙。
津軽らへんだったら『なんで私が明智君とそんなことしないといけないの?』と普通に拒否される案件だと思う。

「さあ、りましょ、りましょ」
る気満々だな……」

楽しみで仕方ないとばかりに急かしてくる。
お金も入れてないのに、既に銃型のコントローラーを握っている。

早速両替したばかりの100円玉を手に取る。

「5年前の100円玉ね」
「それ気にする?」

細かいことを言う理沙に突っ込みながら5年前の100円玉を2枚投入した。
すると、モニターから映像が始まった。
おどろおどろしいBGMをバックにナレーションの文字がモニターに広がる。

『3XXX年、世界は奴らに支配された。その奴らとは~』、となんかごちゃごちゃ書かれていたが、メッセージの流れが早すぎて読ませる気のないナレーションだなと察する。
よくある演出だ。

「3XXX年ですって。私たち死んでるわね」
「それ気にする?」

ナレーションの説明が5秒くらいで終わり、ステージ選択画面に行く。
研究所、学校、ビルなど色々な場所を指定できるらしいのだが、なんの説明もないので難易度の違いがあるのかもわからない。

「おっ、理沙ステージ決めだって!残り30秒しかない」
「それ気にする?」
「いや、気にするだろ……」

俺のやる気ない『それ気にする?』の突っ込みをやり返された。
実は気にしていたのかもしれない。

「じゃあ処刑場のステージにしましょう!決定しますね明智君」
「やっぱりそれ気になるよな」

妙に浮いた場所なので目を惹く。
理沙が『処刑場』を選択するとすぐにゲームが始まる。

『アアァァ……』
「ゾンビ来てます!来てます!どうしましょ!?どうしましょ!?」
「慌て過ぎだろ!?武器使えよ」
「そうでした」

銃の攻撃範囲が画面に連動されて動く仕組みだ。
ロックオンも容易で中々爽快感があり楽しいゲームだ。
ただ、やっぱりFPSではない。

鉄扉が開くて一気に冷気がくるという表現をするために顔に風がくる。

「おぉ!?凄い!」

理沙がいちいち反応をしている。

「ところで、明智君の銃はなんで連射してるのに私のは1発1発しか出ないの?」
「押しっぱにして!」
「うわ、凄い!連射してる連射!デザートイーグルかな?ソーコムかな?コルトパイソンかな?」
「絶対どれでもない」

コントローラーは拳銃の形をしているのに、機関銃みたいに発砲してるもん。
架空の武器だよ、これ。

FPSや銃の名前は知っていても、圧倒的に知識がない理沙であった。

ちょいちょいダメージを受けながら奥へ行くとボスらしきムカデみたいなボスがやってくる。
ゾンビちゃうやん、クリーチャーやんと突っ込みつつ発砲して対応する。

「さあさあ、ヘッドショットしていくわよ!部位破壊して素材を得るのよ!山ほど経験値稼いでサテライトビームを覚えるのよ!」
「知識がごちゃごちゃし過ぎだろぉぉぉ!?」
「あっ、やられた……」

理沙がムカデの全体攻撃の体当たりで沈む。
俺も体当たりでゴリゴリにHPを削られてすぐに部下のゾンビに殺害された。

「こういうゲームは絶対1回プレイで倒せないからな。コンティニューさせて金取る様にできている」
「なるほど、まぁ楽しかったしいっか。違うゲームもしたいしね。FPSを体感させてもらったわ」
「お、おう」

そのままゾンビゲームを後にして、グルグルとゲーセンの中を見ていく。

「わあ!見て見て!骨折包帯ラビット君のぬいぐるみだぁ!可愛いぃ……」
「お、おう」

理沙がUFOキャッチャー前で立ち止まる。
右腕を骨折させてしまったのか痛々しい怪我をしたウサギさんが包帯で腕を固定していて、黒い眼帯を左目に装着しているキャラクターだ。
可愛いかどうかは別にして痛々しい。

「よし!私やってみます!」

100円を入れて理沙がUFOキャッチャーに挑戦するも、数センチ動いたくらいで取れる気配がない。

「無理じゃない、これ?」
「100円ではまあね。あとアームの緩さがわかったから逆算すればいけるよ。理沙、俺と交代だ」
「明智君……」

理沙から離れてもらい、俺がスイッチで台の目の前に行く。
ようやく俺に前世の知識を活用してチートする場面がきたな!
部活引退して剣道ガチ勢からゲーマーガチ勢に移行した俺の実力が火を噴くぜ。
4回目の挑戦、ようやくぬいぐるみが機械から落ちてきた。

「よっしゃ、ゲットしたぜ!」
「へー、凄いね明智君」
「理沙にあげるよ、ラビット君」
「骨折包帯ラビット君ね。ありがとう、明智君」

そこそこに大きいぬいぐるみをゲットして、店員さんに袋をもらい入れてもらった。

「えへへー、明智君からもらったー」

年相応に嬉しそうな理沙をたくさんゲーセンで見せてもらった。
いつも『兄さん!』とお小言を洩らすイメージしかない子だからギャップがある。

「そういえば兄さん居ませんね」
「今気付いたの!?」
「明智君と夢中になっていて気付きませんでした……」

赤くなり照れ顔を見せる理沙。
兄妹揃って似ている女顔だけど、やっぱり兄貴と違って色気や可愛げのある顔だ。

「……絵美さんや咲夜さんが好きな理由わかるかも。頼もしいじゃない」
「そんなにラビット君って絵美らにも人気なんだ。骨折してまで誰かを守るラビット君は頼もしいよね」
「骨折包帯ラビット君です。イラっとする理由もわかりました」
「?」

プイッと顔を背ける理沙。
なんかこの仕草めっちゃ可愛い。
写メかイベントCGで残したい場面だ。

「あー、見付けたこんなとこにいたよ」
「兄さん!どこ行ってたの?」
「ごめんごめん、ダーツに熱中していてさ。そのラビット君秀頼に取ってもらったのか?」
「骨折包帯ラビット君ね。良いでしょ、兄さんにはあげないわ」
「じゃあ俺も秀頼に同じの取ってもらうよ」
「取るわけねーだろ」

兄妹の仲の良いやり取りが眩しい。
兄妹であると同時に、主人公とヒロインだ。
見慣れたとはいえめっちゃ絵になる!

写メかイベントCGに秀頼を省いた形に誰か加工してくれないかな。
あっ、俺が撮影係になれば余計な竿役が写真に写ることもないのか。

「ありがとうな、親友」
「あー?別になんもしてねーよ」
「何もしてないなんてことありません明智君。ありがとう!」
「あ、あぁ……」

理沙の仕草が可愛い。
ゲームでは血が繋がったどうこうでグダグダ悩んだ葛藤シナリオがあんまり面白くなくて理沙自体にあまり魅力を感じなかったが、至近距離で見るとめっちゃ可愛いじゃないか!

「明智君と……、け、結構趣味合うよね。スターチャイルドとか色々含めて……。兄さんみたいに私ももっと明智君と遊びたいです」
「え?」
「ダメですか……?」

赤い顔をして上目遣いの理沙。
な、なんだこの可愛い生き物は?

「行こう!どこにでも行こう!」
「ありがとう、明智君!」

俺をダシにして兄貴とイチャイチャしたいってわかってても頷く。
もう100回頷きまくるよ!

「俺抜きで理沙と遊ぶのを許可するぜ」
「え?」
「ちょっと兄さん!?」

それは本末転倒じゃない?
理沙がタケルを引きずり俺から離れてゴニョゴニョと説教をしている。

『もう、恥ずかしいからやめて!明智君と二人っきりなんて私喋れない!兄さんバックに居て!』
『いや、めっちゃ会話してたやん』
『ダーツって嘘で尾行してましたね』

何を、会話してるかわからないけど、無理矢理言いくるめてタケルも一緒に居てってお願いしてるんだろうな。

理沙の目的はタケルと付き合うことだし、むしろ俺が邪魔だからな……。
俺に来るなって一言言ってやりたいだろうに、本当に申し訳ない。

永遠ちゃんの家で勉強させられているメンバーの裏で、めっちゃエンジョイしたのは本気で申し訳ない。

「じゃあ、そろそろ帰るか」

理沙と秘密の相談を終えたタケルの一言で解散の流れになった。
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