ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第5章 鳥籠の少女

42、佐々木絵美は叫びたい

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「そんなわけで、永遠のお父さんの説得に成功しましたよ!」

ゲーセンから帰り、宿題をしていると絵美が家に寄って宮村家で起きたことへの一部始終を聞かせてもらった。
絵美の説得の提案と、男への媚び方を教えた俺の案が上手く嚙み合った結果が出た。

「なるほどなー、このまま絵美には男への媚び方をもっと勉強してもらった方が良いかもしれない」
「嫌ですよそんなの、キャバクラで働くくらいしか使い道が無さそうだし」
「いや、案外男を嬉しくさせることにおいては水商売でなくてもどこでも使えるスキルだ。大企業でもどの業種でも媚びる人には優しくしてしまうのが男の性だ。なによりモテる」
「へー、モテるんだ」

絵美が俺の力説に興味を持ち始める。
やっぱり食いついてくれないと会話をしたくないよね。

「この現代社会は貶されてばかりでストレスが溜まるだけの社会。そこに褒めてくれる美人が居たらそれはもう女神、ヴィーナス、モナリザよ」
「うーん、全然ピンと来ないなー」
「そうか?」
「あ、じゃあ秀頼君がわたしを褒めまくってくださいよ。もしかしたら秀頼君の言っていることが通じるかも」
「え?男がやってもキモイだけだと思うけど……?」
「そんなことありません。試しにわたしを褒め殺ししてみてくださいよ」

なんでこんな流れになったのかはわからないが俺が絵美に媚びを売りまくる必要が出てきた。
……うわ、幼馴染を褒めるとかなにそれ恥ずかしい。

「……」
「なに始める前から秀頼君が赤くなっているんですか!ほら、わたしを納得させてくださいよ」
「じゃ、じゃあ……」

こほんとわざと数秒時間を置く。
絵美のことを褒めるを意識してやるとか1分前にはそんなことになるとは思ってなかったぞ。

「さ、流石絵美だな。俺の指示したことを実践してエイエンちゃんのお父さんを説得できるなんて」
「はい」

で?、みたいに真顔であった。
どんどん俺の言っていたことが信ぴょう性を失っているみたいで、もっとアクセルを全開にさせなければいけないかとこちらも本気を出す。

「絵美は素敵だな」
「え!?」
「俺の期待通りに動いてくれるし、俺にはもったいないよ。それにとても真面目だから、俺も信頼できるよ」
「……」
「見た目も可愛いに全振りしてるよな!ちょっと幼い見た目だけどそこが凄く愛おしいし可愛い!結ってる髪型も絵美って感じで似合うし、最近ちょっと化粧覚えて色気も出てきているし、俺の茶髪と似た栗色の髪もお揃いみたいで嬉しいし、声も素敵!声だけで食べていけるくらい良い声しているし、青っぽい目もサファイアみたいでキレイ!目元の黒子もとってもキュートだよね!男と比較して小さい手もハムスターみたいで愛おしい!こんな何もできないし悪人顔の俺にも毎日毎日接してくれて明るくなるし、もったいない!引っ越して来てくれてありがとう!生まれてきてくれてありがとう!めっちゃ大事にしてる!それから……」
「ストップ!ストップです秀頼君!!」

絵美が俺の顔を見ないで静止させた。
もう聞くに絶えないからやめろというのが伝わる。
やっぱり俺みたいなクズゲスな悪役親友では絵美の心を動かせそうにない。

「む、無理です!今日は帰ります!さようなら秀頼君!」
「あ、ちょ!絵美さん!?」

ドン引きとばかりに俺を見ないで走って部屋から出て行った。
よっぽど気持ち悪かったようだ……。

そりゃあ俺みたいなクズの茶髪と絵美の栗色の髪がお揃いみたいとか鳥肌が立つよな……。
生まれてきてくれてありがとうってなんやねん……。
俺みたいな男に大事にされるとかホラーでしかない……。

死んだ……、俺のゴミクズレベルの好感度がマイナスレベルに地に落ちたはずだ……。
明日から口をきいてもらえない……。





―――――






無理無理無理!!??

「ッ!?」

まともに秀頼君の顔が見れなくて思いっきり部屋を飛び出してしまう。

絶対、いまのわたしの顔はリンゴみたいに真っ赤な筈だ。
こんな顔恥ずかしくて秀頼君に見せられないよおおおおお!!

素敵とか可愛いとか愛おしいとか嬉しいという表現では生ぬるいほどに嬉しい!
怖かったからそんな風に秀頼君からダイレクトにわたしの評価を聞けなかったけど、蓋を開けば褒め殺しをされて物理的に死にそう。

この髪型を見てわたしらしいと思っていたり、髪の色を見てお揃いと思っていたとか、もうなんて表現したら良いのおおお!?

「ムリィ……、秀頼君が素敵過ぎて表現できない……」

『ただいま』も言えずに家へ帰り、ベッドに飛び込む。
そして枕にうずくまる。

「好きいいいいいい!大好きいいいいいいいいい!秀頼君大好きいいいいいいいいい!愛してるううううううう!」
『ちょっと絵美ー!?恥ずかしいからやめて!』
「……はい」

別の部屋に居たお母さんの突っ込みで冷静になる。
やばい、またやってしまった。
お母さんはわたしの気持ちを知っているとはいえ、こういうのを聞かれると恥ずかしくなる。

「付き合いたいよおおおおおおおおお」
『いや、付き合えば良いでしょ?』
「でも振られたら生きていけないいいいいいいいいいい」
『難儀ね、あんた……』
「結婚したいよおおおおおおお、秀頼君の子供つくりたいよおおおおおおおおおお」
『あの、壁薄いから隣の家まで聞こえるかもよ?』
「困るううううううううううう」
『叫びたい年頃か……』

顔を合わせない親子の会話が始まっていた。

「秀頼君、大好きいいいいいいいいいいい」
『あの……、本当……お母さんも同じことやってた過去思い出すからやめて』
「遺伝んんんんんんんんん」

10分近く叫ばないとやってられなかった……。






―――――





「うわあああああああ、恥ずかしくて死にてえええええええええ」
『秀頼、うるさくすると隣の家に聴こえるから……』

ベッドでさなっていると、別の部屋に居るであろうおばさんの声がした。

「俺を……俺を殺してくれえええええええええええ」
『重症だね、君も……』

この時ばかりは、早く誰か俺を殺しに来て欲しいと思ってしまうくらいに後悔してしまう出来事であった……。
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