ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第6章 偽りのアイドル

25、谷川咲夜は断る

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達裄さんと会話をした次の日。
既に木曜日。
店を借りたいのなら、今日には言っておきたい。

「おーい、咲夜!」
「なんだ貴様?」

教室で1人で読書をしていた咲夜の席に近寄りながら声をかける。
マスターに直接言っても良いのだが、別に寄る気分でもないし、俺が頼むより、娘のおねだりの方が頼みを聞いてくれるだろうし。
スタチャに会えるかどうかである。
店の貸し切りを断られないように細心の注意を払う。

「咲夜に頼みがあるんだ」
「ウチは断る」
「はぇ?」

冷たい声の咲夜は本に視線を落とす。

「待って!待って!話を聞いてくれよ」
「なんでウチが秀頼の頼みを聞かないといけない」
「なんでそんなにご機嫌ナナメさんなの……?」

久し振りにこんなに口の悪い咲夜を見た気がする。
あの日でイライラしてるのかもしれない。
仕方ない、マスターに直接頼みに行くか。

「マスターに頼んだところで、ウチはマスターに『秀頼の頼みを聞くな』と一言添えるぞ」
「本当になんでそんなに不機嫌なんだよ咲夜!?」
「わからないか?」
「……もし今日プールの授業があったら入らない日?」
「1回くたばるべきだな」

ごもっともな意見で申し訳ない。
でもわからない……。
不機嫌な理由が全然わからない。

「ウチは貴様にとって都合の良い女か?」
「……は?」
「ウチは秀頼にとって都合の良い女扱いかと聞いたんだ。最近のお前はなんだ!タケルとか山本とばかり絡んで!頼みがあればウチか?舐めてるのか?」
「ごめん……」

言われてみれば心当たりがある。
タケルや達裄さん、山本など野郎とばかり会話していた気がする。

「さ、咲夜さん?放課後一緒にお出かけしませんか……?」
「行く!秀頼ぃ!」
「ごめんなぁ……、最近寂しい思いさせて……」
「ウチ友達少ない。秀頼を待ってる」
「ぅぅぅ……。そう言ってくれると嬉しい。みんなに嫌われてばかりだから……」
「真逆だが?」
「優しいなぁ、咲夜のフォローが嬉しいよ」
「ひでよりぃぃぃ」

あまり咲夜を異性として見てなかったが、こうギャップが凄いとめっちゃ可愛い。
甘えて、俺の胸に飛び込んでくる咲夜が犬みたいで愛くるしい。


「ところでどこで『都合の良い女』とか覚えてくるの?」
「秀頼に構ってもらいたかったら使えとマスターから」
「あの親父め……」

『あの喫茶店の店長さんのコーヒー全部インスタントなんです!』と噂流してやろうか?

ただでさえ閑古鳥が鳴いている喫茶店にとどめさしてやろうか?

「じゃあ、今日の放課後にな。頼みもその時に聞く」

しかし『都合の良い女』扱いを俺がしていると見られるのはちょっと気分が悪い。
俺は咲夜が好きだし、みんなも好きだ。
口が悪いけど津軽姉妹もまあまあ好きなのだ。

もう少し自分の時間を削ってでも、友情を深めるべきかもな。




ーーーーー



「むふーっ、放課後デート」

鼻息を荒くして、咲夜は俺にベタベタくっついてくるのを何回も引き剥がす。

「貴様、さっきからなんなのだ?」
「熱くて……」
「秀頼が照れてる!照れてる!」
「うっせ……」
「突っ込みにキレがないぞ、秀頼」

最近の咲夜はどんどん身体が女子から女性になっていっているのを日々感じる。
今までは意識しなくても、今からは意識をしない保証がない。

『谷川って明智と付き合ってるらしいよ?』
『えー、可哀想』
『ゴミクズと付き合うとか罰ゲームでしょ』
『谷川さん、かわいそ……』
とか噂をされないためにも咲夜にはしっかりした恋愛をしてもらいたい。

咲夜に限らずだが、いつまで俺が咲夜と一緒に居られるのかはわからないのだから。

「秀頼、クレープ買ってくれ」
「はいはい」
「あの苺のやつが良い!苺!苺!」
「わかった、わかった」

普段マスターからコーヒーをタダ飲みしてるぶんだ。
それに比べたら安いものだ。
ご所望だった苺のクレープを咲夜へ、俺はバナナのクレープを購入した。
クレープを購入した後は、ベンチに腰かけ並んでクレープを食べていく。

「それで頼みというのは?」
「ほっぺにクリーム付いてる」
「おぉ、情けない姿を見せた。食べ慣れなくてな」

親指で咲夜の頬からクリームを取りそのまま舐める。
うん、甘くておいしい。

「……」
「どうした?じろじろ見て?」
「……いや、なんでもない」
「……」

なんでもないってことはないだろう。
なんかちょっと恥ずかしそうにモジモジしている。

「……あー!そういうことか!ごめんごめん」
「ようやく気付いたか」
「クレープのシェアしたかったんだな。こういう提案するの恥ずかしいもんな。俺から提案するよ。苺とバナナ交換しよ?」
「……そんなバナナ」

咲夜から苺のクレープを受け取り、咲夜にバナナクレープを渡す。
うん、甘いバナナも旨いし、甘酸っぱい苺もまたおいしい。

「秀頼……、お前は少し常識を学べ」
「いやいや、咲夜よりは常識あるって!」
「……ウチ、全然ボケてないのに突っ込まれた」

3口ほど苺クレープの味を楽しみ、バナナクレープと交換する。
うん、やっぱり俺はバナナ派だ。

「それで?秀頼はなんの頼みがある」
「あぁ。日曜日にマスターの店を貸し切りたいんだ。お代は達裄さん……こないだの凄い兄ちゃんが出すからそれを伝えて欲しい」
「それは大丈夫だと思うが、何をする気だ?」
「スタチャを達裄さん……変な凄い兄ちゃんが呼んでくるらしい」
「達裄は達裄でウチに通じるから訂正要らん……って、えっ!?」

咲夜が「なんだと!?」と驚いている。
そう、スタチャが店に来るんだよ。

「スタチャが店に……だと……?」
「驚く、よな……」
「スタチャとコヒチャでデュエットできるか!?」
「まだ言ってんの?コーヒーチャイルド……?」

でも、スタチャと並ぶ咲夜とか意外過ぎて逆に見てみたい。
そんな気持ちが沸き上がってくるのであった。

「大体君、スタチャ好きなん?」
「普通だ」
「普通かーい!」

咲夜からスタチャの話題が出たことないのに、1番コーヒーチャイルドに執着があるのも全く意味がわからんが……。
咲夜にロジカルを求めるのが間違いだからスルーしておこう。

「よし、わかった。秀頼の頼みならウチがマスターに言っておくぞ」
「ありがとう」

こうして、喫茶店の確保も済んだ。
あとは誰呼ぶかだよなと考えてつつ、放課後デートを終えるのであった。









偽りのアイドル編に入り、タイトルに名前が出なくて咲夜は拗ねてました。
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