ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第6章 偽りのアイドル

28、偽りのアイドルの『想い』

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「ギフトの所持者ねぇ……」

真面目な話に戻り、巫女さんが達裄さんへ相談していた(遠野さんでは姉弟のどっちかがわからないために名前呼びになる)。

「顔が変わるし、身長も変わる、声も変わる。うん、とても危険なギフトだね」
「え?」

遠野さんはさらっと言ってのけた。
危険?
お父さんの『相手を自殺させる』ギフトが危険なのはよくわかる。

でも私のギフトが危険?
だってただ姿を変えるだけだよ?
何が怖いんだろ?

「高校生か大学生みたいな姿してるけど、まだ小学生だって?誰が小学生を捕まえろとか言ったんだよ!若すぎるだろ!姉さんも厄介者を連れて来る……」 
「だってドストライクなんだもん!今週中に絶対良い子見付けろって上がウザイし」
「後者が本音だろ」
「星子ちゃんアイドルなりたいってやる気あったし」
「あのなぁ……」
「あ、あの!?私のギフトがどこが危険なんですか……?」

おばあちゃんもお母さんも厄介者を見るギフトの存在。
だって、便利で憧れの力だってテレビでも言ってるし、友達も先生もみんな言っていた。

私の声に驚いたのか姉弟で顔を見合わせた。
そしてため息を吐きながら達裄さんが口を開く。

「小学生にはわからないか。仕方ないね。……じゃあ例えばここで星子ちゃんが巫女を殺したとする」
「え!?」
「ちょっと!?勝手に殺すなや」
「例え話だよ」

達裄さんは巫女さんをあしらいながら私の目を見て語り出す。

「監視カメラにも当然写っているわけだよね?君と巫女が入店したのが」
「はい」
「で、巫女を殺して逃げ出した君は警察に追われることになる」

わかりやすい例え話に頷きながら先を促す。
説明がわかりやすいので、彼は頭の良い人な印象を持った。

「でも君は店から離れてどこか人目がなく、監視カメラのないところで元の姿に戻ればどうなる?」
「……」
「もはや監視カメラなんて証拠はあてにならない。それどころか頼もしいアリバイ工作になる。他人の姿を使って殺人をすれば罪を擦り付けることも可能だ。身体を自由に変化できるなら指紋も変わるのかな?それはわからないけど、そういうことが出来ちゃうんだよ君のギフトは
人殺しをしても完璧に隠蔽できる。
それに女性なら憧れの的だ。小学生の君が大学生みたいな見た目をしているんだ
君が老婆になっても20代の美貌を約束されたものじゃないか
世間では神様の力だのギフトを凄い力みたいに語るけどバカだよ。バカ。悪魔の力そのものだよ」
「悪魔……」

『星子、あなたの本当のお母さんは悪魔……、お父さんにギフトで殺害されたのよ』
おばあちゃんの言葉を思い出す。

私、本当のお母さんを殺したお父さんと同じなんだ……。

「俺はギフトなんか使えないけどそういう道徳的なことは教えた方が良いかもね。もし、本気で星子ちゃんがアイドルになりたいなら俺と姉さんは徹底的に君をアイドルにさせる。
その変わりギフトについて色々と俺から指導を入れる。それが条件だ」
「……なって良いんですか?」
「ん?」
「達裄さん……、ギフト持ちの私がアイドルになって良いんですか?」
「良いよ、なれば良い。ギフトだって正しい使い方をすれば便利な力だからね。
ちゃんと親御さんに許可は必要だから、親がダメって言ったらダメだけどね」

説得が必要か。
でも、それだけならなんとかしなくちゃ。

「星子ちゃん、ギフトを解いてみてよ」
「え?」
「別に何も非難しないよ。嘘偽りない君の姿を俺と巫女に見せるんだ」
「わかりました」

元の姿に戻りたいと念じると身体が小さくなる。
靴も服もブカブカになる。

「ほー、これは凄いギフトだ。多分かなり希少価値の高いギフトだ。…………危険だねぇ」
「目付きが怖いからアイドルになれないって友達に言われました……」
「俺は結構悪くはないとは思うけど。1つ、星子ちゃんに教えてあげよう」
「ん?」

達裄さんは真面目な声をして私に向き合う。

「どれだけ可愛くて、歌が上手でも『想い』がないと誰も見向きもしないんだ。
逆にどれだけ醜くて、歌が下手でも『想い』があれば濃いファンは付くもんだ
そうやってまわっていくものなんだ。
1億人に褒められることを考えるな、1人を根強いファンに仕立てあげろ
それができるのが『想い』の力だ
どんなギフトでも『想い』の力には誰も敵わない。絶対に忘れるな」
「わかりました。『想い』を持ってアイドルになります。『想い』を持ってお母さんを説得させます」

家に帰り、すぐにお母さんを説得にかかる。
アイドルになりたいこと。
ギフトを正しい力に使うこと。
『想い』をお母さんに伝えた。

最初はずっとダメの一言だった。
ただ1週間を過ぎると熱意に負けたと承諾してくれた。
何年経っても売れない場合は、すぐに辞めるという条件を飲んで。

それから、巫女さんと達裄さんとは直に連絡を取り合うようになる。
歌のレッスンやダンスの練習などを打ち込むようになる。
姿はスカウトされた時より少し若い姿でデビューをしようと打ち合わせで決まる。

偽りだらけのアイドルだけど、声だけは細川星子だけで加工はしなかった。
元の声でも可愛いと達裄さんが褒めてくれたからだ。

年齢よりも少し大人びた小・中学生が憧れるアイドルというコンセプトの元、アイドル『スターチャイルド』はデビューを果たす。

「スターチャイルドは俺が育てる!」と、おちゃらけた達裄さんが公式ファンクラブを設立し、会員ナンバー1番として達裄さんの名前が登録された。

「スターチャイルドってあなたよね?」
「えっ!?うそっ!?」
「ユキ兄から話は聞いています。リーフチャイルドの遠野葉子です」
「凄い……。生のリーフチャイルド……」

私のギフトを使った偽りの姿よりも、本物のリーフチャイルドは本物の可愛いさだった。
達裄さんがシスコンになるのもわかる可愛さだった。

「遠野達裄の実の妹です。因みにユキ兄、私含めて5人妹いますから」
「え、えぇ!?」
「とはいっても実の兄妹なのは私とユキ兄だけ。巫女さんとユキ兄は実は従姉弟なのです。ちょっと複雑な家庭なんだ」
「えぇ……」

遠野家の複雑な裏事情の触りが見えてきた。
でも確かに、達裄さんとリーフチャイルドの雰囲気がとても良く似ていた。

「お互い頑張ろうねっ!」
「ありがとうございます!」

私もリーフチャイルドに近付けるように頑張った。
アイドル活動を続けて、地道に私のファンも増えていく。
公式ファンクラブのメンバーが10人になって喜ぶし、100人になったらもっと喜んだ。

ちょっとずつ売れていくスターチャイルドの実績にお母さんもおばあちゃんも喜びの顔が増えていく。

小学校に通い、レッスン、アイドル活動。

自由時間なんかほとんどなかったけど、楽しかった。
達裄さんに語られた『想い』の力を忘れずに私は徐々に知名度を上げていく。
デビューして1年くらいには、バズったりもして世間の注目を浴びていく。
スターチャイルドが世間に認められていく。



























あっという間に私は中学校に入学した。
周りにスターチャイルドをしているとも公言せずに地道で普通な女子中学生をしている。

そして、1つ上の先輩のクラスメートの名簿を見ていく。

…………あった!
出席番号が1番だからすぐに見付かった。
それに明智の姓は全校生徒含めて1人だけだったので決定であろう。

『明智秀頼』。
私のお兄ちゃんの名前。
彼はどんな人なんだろう……?

名前を見ただけで顔が赤くなる。

ユメちゃんのお兄ちゃんは素敵だった。
リーフチャイルドのお兄ちゃんである達裄さんはもっと素敵だった。

私のお兄ちゃんはどんな素敵な人なんだろう?
どれだけ人に自慢できる人なのだろう?

会いたくて、会いたくて、仕方ない。

中学を入学して落ち着いた頃……。
今日、私はお兄ちゃんに会いに、上級生の廊下を歩いていた。


心臓がドキドキと鳴っていて、気持ちが高ぶる。
もうすぐ、お兄ちゃんに会える。
何年も待ちわびたこの日。
私は走りたい衝動をぐっと抑えて廊下をゆっくりと歩いていた。

「2年1組、ここだ……」

ちょうど私は出てきた女の生徒を引き留めて声を出したのであった。

「すいません、ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい?ウチに何か用ですか?」

頭にコーヒーカップのヘアゴムを付けた女性は自分が呼ばれたことがわかっていない感じであったが、もう私は止められなかった。

「このクラスの明智秀頼さんという人を呼んできてくれませんか!?」
「…………え?」

女性は私の顔を見てとても嫌そうな顔を向ける。
露骨に変わる顔色に、ちょっとムカムカした気持ちをグッと堪える。
落ち着いて星子、もうちょっとでお兄ちゃんと会えるんだからと心を落ち着かせた。
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