ギャルゲーのヘイトを溜めるクズでゲスな親友役として転生してしまいました。そして主人公が無能すぎて役にたたない……。

桜祭

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第6章 偽りのアイドル

29、偽りのアイドルは兄と出会う

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「明智君……?」

心底嫌。
それが見て取れる。
人を呼ぶ行為そのものが嫌なんだろうと彼女を観察する。
私に対して嫌な目を向ける。

「…………」

そして、その生徒は顔を曇らせた。

「明智君いないよ。ごめんね。…………ウチ、力にななれなくてごめん」

教室の中を確認もしないで謝罪し、そのまま廊下を走り抜けて行った。
酷く怯えてあわただしく消えていく。
礼儀という礼儀が彼女からは感じられなかった。

そして、その反応が異常だった。
明らかにウソを付いている人の顔に見えた。

「最低な先輩だ……」

声を掛ける人を間違えた。
人と会話をするのが苦手なんだと思う。

何人かの生徒が抜けていく。
あの中にお兄ちゃんが混ざっていたらと思うと、明智秀頼の顔がわからないというのがもどかしかった。

少しでも、声をかけやすそうな女性の先輩に声をかけた。
すると「あー、ちょうどさっき出て行っちゃったんだよね」と、自分は何も悪くないのに頭をペコペコ下げてくれた。

「……」

なんだ、居たんじゃん……。
じゃあ、やっぱりさっきの会話するのが苦手そうな先輩が悪いんじゃん。

コーヒーカップのヘアゴムを思いだしながらイライラして外に出る。
今日は打ちきりだ。

また、明日にでも出直すしかないか。
下駄箱を履き替えて校庭を出た。

そのまま歩いて家に向かっていた時だった。
『明智君』と声がする。

「……っ!?どこっ!?どこから声がした?」

多分すぐそこだ。
辺りを見回すと人通りのない裏路地が目に入る。
そこかな?

私は確信を持って走りだす。

何者かがぼそぼそとしゃべっているのが聞こえてくる。
会話が聞こえなくても『明智君』という声は拾う。

そこには5人の人の姿があった。
そして、私の通う男子生徒の制服の集団が居た。

見付けた……。
居るんだ、この5人の中に……。

私のお兄ちゃんが……。
お兄ちゃん、妹の星子だよ?

名字は違うけど、血の繋がった本物の妹です。

ねぇ?
お兄ちゃんはどれだけ素敵な人ですか?




























『お前らよぉ、俺を舐めてんだろ?なぁ?』
『ご、ごめん……明智君……。し、知らなかったんだ……』
『なに山本ごときが『明智君』とか俺と対等な口聞いてんだよ?なぁ、マジでよ!』

『明智君』と呼ばれた男が、同じ制服を着た男子生徒のお腹に蹴りを入れていた。

「……え?」

この中に、私のお兄ちゃんがいる……?
でも、どう考えても……。

『こいつだろ?絵美にナンパしてきたとかいうバカ男は?』
『うん』

ピアスを付けた茶髪の男性は、栗色の短いツインテールにしている女性と会話をしている。

『んで、お前ら2人が唆したんだよな?』
『お、……俺も知らなくて……』
『僕も知らなかったですねぇ……』
『知らないで済ませて彼氏持ちの女に手出して良いんですか?なぁ西山?お前は先月、山下に手を出したんだったなそういや』

男の人の首を掴んでいる。

『あれも俺の女なんだわ?なに、てめーら俺の女寝取り集団かなんかか?』
『ご、ごめん……。ごめん……。悪気とかは一切なくて……』
『おらっ』

首を掴んだまま、地面に放り投げる。
誰?

ーーこのいじめを受けられている人の誰かがお兄ちゃん?

『お前ら、ギフト憧れてるとかなんか言ってたよなぁ?見せてやるか、お前らが羨ましくて羨ましくて仕方ないギフトの力って奴を。【西山とそこのモブ男は山本をボコボコにタコ殴りにしろ】』

男が命令を下すと、2人の男は自分の身体が勝手に動いているという感じに、自分の身体の動きが理解できていないみたいだった。
 
『え?』
『うわっ!?』

そのまま山本と思わしき男性に殴りかかる2人。
これが、彼のギフトの力なのだろう。

『ぐああっ!?やめ、……やめろ……。にし、やま……。あああああぁぁぁぁぁ……!?』

殴らされているのが西山とモブ男。
会話の流れからモブ男がお兄ちゃんとは思えなかった。

ーーこのいじめの主犯がお兄ちゃん……?




「おい」
「……っ!?」

ギフトを使用していたピアスの男が私の目の前に立っていた。
同じ色の茶髪。
怖い目付き。
…………あっ、この人が私のお兄ちゃんなんだ。

「見せもんじゃねぇ、殺すぞガキ」
「ひっ……!?」
「なんの用だ……?」
「…………わ、私……細川星子です……」

お兄ちゃん、私はあなたの妹です。

会いたかった。
私を可愛いって褒めて。
私の頭を撫でて。

ユメちゃんのお兄ちゃんより。
リーフチャイルドのお兄ちゃんより。
素敵な人なんだよ、私のお兄ちゃんは。




























「は?誰だよお前」
「え……?わた、しは……」

あなたの妹です。
世界に残った、たった1人の本当の家族です。

「目付きが気にくわねぇ。何?文句あんの?こっち彼女寝取られる直前でイライラしてんだ。犯されたいのか?あぁ!?」
「……っ!?」

違う……。
この人は私のお兄ちゃんなんかじゃない!

私の足は否定するように路地裏を飛び出した。
男は追わずに反対方向に歩いていく。
路地裏から出るまで男の悲鳴は止まらなかった。















気が付くと自分の部屋の片隅に固まって、私は涙を流していた。


「違う……、あんな人……、あの人がお兄ちゃんなわけないっ……」


私のお兄ちゃんは、可愛いって褒めてくれて……。
妹の私を特別扱いしてくれて……。



ギフトで人を傷付ける様なお父さんみたいな人殺しと同類のクズじゃない!
クラスメートをゴミ扱いする人じゃない!
あんなに人を恐喝する人じゃない!


目付きが悪いってコンプレックスを突き付けてこない!


……違う。





『ヤバくないか?これ葉子がはじめてアイドル衣装を着た写真。こっちはその衣装をはじめて着てピースした写真。これはジャンプした瞬間の写真。こっちは……』

達裄さんの言葉が脳裏に過る。

たくさんの愛を込めて妹を語っていた。



私のお兄ちゃんもね、可愛いって私を褒めてくれるんだよ?







『目付きが気にくわねぇ。何?文句あんの?こっち彼女寝取られる直前でイライラしてんだ。犯されたいのか?あぁ!?』

どうして、同じ目をした私にそんなこと言うの……。
酷いよ……、こんなのあんまりじゃない……。
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