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第6章 偽りのアイドル

35、偽りのアイドルは諦める

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ーーあれから約20年。
世間は混沌とし始める。
年々、ギフト所持者による犯罪が増加傾向にあった。
だんだんとギフト所持者は消えるべきだと過激な意見が飛び交ってくる。

私が子供の頃は神様からの贈り物として、誰もが憧れたギフトの力は、差別的な目で見られる様になる。

ギフト所持者はクズ・犯罪者予備軍など色々と非難され始める。

ギフトを所持していない一般人は防衛のためにと拳銃やナイフ、刀などを持ちはじめる。
国としては武器の所持や購入を形として法律で禁じてはいるものの、お飾りな法律になっていく。

そして、ギフト所持者もギフトを持っていない人から身を守るために武器を手に取る。
泥沼な世界になった。

私も、自衛のスタンガンを所持することになる。
子供ですら、1人1つのスタンガンを常備する世の中になる。

半ば、ギフトをめぐる戦争が勃発しているような治安の悪い世界になっていく。
子供の頃のような平和な世界は終演を迎えていた。





私は、年をとっても若くいられる。
ただ、同じキャバクラ内で働いていて、顔が全く変わらないのは致命的だった。
ちょっとずつ肌が衰えていくという設定が効かないのだ。

元の顔に戻れば年相応の顔なのであろう。
しかし、顔が戻らない。

ギフトで作った顔にはセルフで老いたイメージを作らなければならなかった。
そんなことは無理だ。
一気に老けるイメージしか作れない。

だから同じ店では働かず、働く店も転々とした。

気付けば40歳を超した。
しかし、男を喜ばせるためにも20代後半くらいの若作りした美人な女性の顔を使用した。

男に媚びた生き方しか、もう出来ない。

今日もまた出勤のために昼頃に家を出た。















『出たな若作り妖怪のババア』

え?、そう思う頃には後ろから殴られて地面に倒れた。

「な、……なに、を……?」
「何をだぁ?ふざけんじゃねーぞギフト所持者がっ!」
「えっ……?」

ギフト所持者。
その言葉に心臓が悲鳴を上げた。
もはや誰にも打ち明けていなかった真実をどうして……?

「俺たちはギフト狩り」
「ぎ……ギフト狩り集団……?どうして……?」

ギフト狩り集団。
私が子供の時から存在はしていた組織。
しかし、あの頃はまだ植物が芽吹く前の種みたいな小さい組織だった。

年々とギフト所持者による犯罪に巻き込まれた遺族や友人らが結託して、ギフト所持者を殺害していくように進化していったテロリストの集団。

ギフトへの恨み。
その1つのみに全力をかけて国からギフト所持者を排除するために彼らは動く。

私は、ギフト狩りの男3名らに囲まれていた。

「うるさい、黙れギフトババア!俺たち人間を騙して稼いで食った飯は旨かったかよ!?」
「いだ……ぃ……。はなして……」
「最近はギフト持ちかどうか一発で判断するグラサンとかあるんだぜ?知らなかったか?神を騙る者の力を行使する悪魔めっ!」
「お前はずっと俺らにマークされてたんだよ。人殺しの悪魔の親父にギフト至上最低の犯罪者を兄に持つんだってな。サラブレッドじゃねーか。どうせてめぇも3人くらい殺したんだろ!死ね悪魔っ!」

顔面に蹴りを入れられた。
奥歯に異変があり、舌に何か転がった。
歯が折られたのだと理解した。

「してなぃ……。ころしてない……。なにもしてない……。ただ……わた……しはいきたかったの…………」
「なーにが生きたかっただよ偽善者!偽りのアイドル『スターチャイルド』を名乗っていたクズめっ!」
「ぃだっ…………」

スターチャイルドは今や、ギフト狩りの中でも忌むべき象徴となっていた。

なんで……?
アイドルになりたいっていう夢を叶えただけなのに、どうしてみんなそれを嘲笑うように言うの……?

世間では風化されていったアイドルの名前。
しかし、ギフト狩りの間では憎しみの象徴としての旗になっていた。

「見ろよ!俺たちはギフト狩りの間では知らねえ奴はいないスターチャイルドを殺す瞬間に立ち会えるんだ!」
「これほど光栄なことはない!」
「俺はお前たち悪魔のギフトで大事な人を2人殺されたんだ!だから俺はその倍の4人ギフト持ちを殺してやるんだっ!」

殺すと明言された。
私、死ぬんだ……。



『どんなギフトでも『想い』の力には誰も敵わない』
遠い昔、私が達裄さんに言われた言葉だ。

まさに、彼らの恨みの『想い』が私を地に転げさせたんだ……。



「すぐには殺すなよ。たっぷり苦しませて殺してやるんだ」
「ほら、死ねっ!」
「ギフト消えろ!ギフト死ねっ!」

通行人もみんな見て見ぬ振りをする。
だってみんなギフトが憎いから。
ギフト所持者の存在そのものが嫌われるから。

最近は可愛く愛情を注いで育てた自分の子供でも、ギフト所持者とわかっただけで殺す親もいる。

ギフト狩りの勢力は衰えるどころか、勢いを増すばかり。

神が配ったギフトの力は憎しみを生み出し、血で血を洗う悪魔の力となっていた。

浴びせられるリンチにもう生きるのを諦める。
ごめんなさい、達裄さん。
もう顔も覚えていないけど……、私は充分に生きましたよね……?




痛みも既にない。
己が生きているのか死んでいるのかもわからない。


「…………」


人殺し一家か……。
私、生まれた瞬間からこうなる運命だったんだね。


お父さん、どうしてお母さんを殺したの……?


お兄ちゃん、どうして私を褒めてくれなかったの……?





『は?誰だよお前』

お兄ちゃんは、私を認知すらしてくれなかったね……。

『目付きが気にくわねぇ。何?文句あんの?こっち彼女寝取られる直前でイライラしてんだ。犯されたいのか?あぁ!?』

お兄ちゃんは、同じ目をした私を非難したね。





たった一言で良かった。

ユメちゃんのお兄ちゃんみたいに。
リーフチャイルドのお兄ちゃんみたいに。

私を可愛いって褒めてくれるお兄ちゃんだったら良かったのに……。




























ーーズシャ、ズシャ、ズシャ。




突然、私の顔に血が降ってきた。
ギフト狩り3人は私の目の前に倒れて死んでいた。

何が起こったのか、わけがわからなかった。
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