絶対お兄ちゃん主義!

桜祭

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1章

喧嘩売るボッチ

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「な、何笑ってんですか?」
「い、いや……全然っ」

笑いを堪えていた。
ぷんぷんがツボに入った。
脅しの言葉ではなく単にぷんぷんって怒っているだけなのではないだろうか。

「実は私、物まねが得意なんですお姉ちゃんは完璧マスターしました」
「なにを持って物まねが得意と言うか。姉さんの物まね他にやってみてよ」
「『よーし、新しい趣味に目覚めに行くかー!いざ、見知らぬ誰かをストーキング!』」
「やめて、俺もまだ知らない曝け出されたアブノーマルを見せつけないで」

すごく声と意味のわからない突発的な言葉が完全に姉だった。
恋の顔で言われるのがすごいショックで、本当は記憶を消したい。
まぁ忘れやすい俺の頭ではすぐ忘れるだろうが。

「あれ?どうして目を背けたくなってますか?お姉ちゃんの良いところをお兄ちゃんに知ってもらおうとしたのに」
「なんで?むしろ幻滅したんだけど」
「新しい趣味にはまるのは良い事です。マラソンなりスイミングだったりと何事も始める事が大変なのですから」

ピュア過ぎるよ。
なんで姉さんの妹で姉さんと暮らしていたのにそんなに無垢でいられるんだよぉ。
まずストーキングってアウトな単語入っているでないの。
根本的な話、何故物まねスキルを手にした。
誰かに姉の自慢として言い聞かせているのだろうか。
一家の恥なんだけど。
まぁ俺含め一家の恥は承知だけど。

「じゃあ俺の物まねをしてみてよ」
「急に難易度上げますね」

「あー」と発声練習を始めた。
少し男らしい声になっている。

「『お前らの敗因は俺に手を出した事だったな。はい残念、君達の敗北はこの時点で確定したよ』」
「いや誰だよ!」

なんでそんな悪役の最強の四天王なんて設定の似合いそうな言葉をチョイスしたんだよ。
俺の声は似ていたけど物まねではなく声まねである。
もしかしたら今日見たとかいう夢のお面ライダーみたいな俺の言ったセリフかもしれない。
いや、それはそれで元ネタがおかしい。

「おっ、着いたぞ」

そんな事をして遊びながら歩いていたからかとても早くデパートに辿り着いたような錯覚に見舞われた。
逆に少し遅かったくらいだ。

あ、デパートの中に入った俺の元に1つのことが思い至った。
とてもデパートに来た意味を覆すことだ。

「ところでさここに来てから言うのもなんだけど必要なものってある?」
「あー、……昨日ハンバーグいっぱい作ったからひき肉とかですかね」
「生活必需品ではないんだな」

恋の届く荷物以外にもそろえるのなんかあるだろう。
そんな事言ったが昨日の夜に送られた姉のメールの荷物リストは大概が埋まっていた。

「普通に買い物していくか」

買い物カゴを手に取りカートに乗っけた。
エコバッグは持参していたので、カートにそれを引っ掛けた。

「ちょっとトイレに行ってきます」
「場所わかる?」
「はい、何回か来ているので」

そう言って恋はここから少し距離のあるトイレの方向に歩いて行った。
あまりそういうのには着いて行かなくても良いだろう。
前に光のトイレに着いて行った星丸が文字通り星になった事がある。
流れ星になって戻って来た。
なんだかよくわからない出来事である。
因みに恋と俺は別々に住んでいたといっても徒歩ぐらいの20分ぐらいの距離なので微妙に近所という話。
中に入った事は無いが、たまにマンション前を歩く事はある。
通っている中学校も昔の俺と同じ中学で転校の必要もない。

「あれ、達裄」
「おお、なんか暇つぶしが出来そうだ」
「は?」
「いや、こっちの話」

噂をすればなんとやら。
買い物帰りの光と遭遇した。

「ボッチか」
「喧嘩売ってるボッチ?」

心にくるなぁ。
光は誰にでも気軽に話しかけられる性格なので友達が多いし、先輩にも可愛がられている。
星丸も明るいし行動力あるし話すとウザイ(全体の評価では楽しいだが俺から見たらウザイ)しで多々に渡る人間関係がある。
何故そんな人間に囲まれている俺は友達が少ないのか。
理由はわからないが、しかし理由があるから友達がいないんだろう。
運動出来る、勉強出来るみたいなだけで嫌われるのだろうか?
光は運動出来る、勉強出来ない。
星丸はどっちも出来ない。
そういえば中学の教師からは『優等生の問題児』とか揶揄された事があったか。
なんだろう?学校の奴らからは星丸と光のおまけとか、金で雇った友達とかに見られていたりする?
うーん、なんで俺はこんな奴らと仲良くやっているのだろうか。
学校の七不思議として俺自身が流してやろうか。
流す相手も居ないのだが。
……何故俺はこんなに渡って自虐しているんだろうか?

「全く、自分の言った言葉が跳ね返ってきてダメージを受けるって言葉もないわ」
「ごめんなさい」

力の序列は完全に光が頂点だった。
流石女性優先の社会。
こんなところまで影響を及ぼすなんて。

「達裄もここに来るんだったら誘うんだったなー……」
「誘われたらもう喜んで拒否するよ」
「あ?」
「……冗談です」

まあ実際は喜び過ぎて逆に光から鬱陶しがられて帰れって追い出されそうな気がするが……。
この光には素直になれない自分はなんなんだろうか?
以下、割愛。

「しかしエコバッグとか持って主夫だよねぇ」
「1人暮らしは全部やらなきゃならんから大変だよ。なんなら光が一緒に住んでくれたら俺も少しは楽出来るんだけど」
「え……?そ、そう。まぁもし本気で言われたらしてやっても良いけど、っ」

光はちょっと照れながらしゃべっていたが最後の最後で舌を噛んでちょっと涙目になっていた。
はきはきする光が舌を噛むのは珍しい。
美人がそういう反応を見せるととてもギャップがあり可愛いさがぐっと上がる。

本当に光が一緒に住んでくれたら荷物持ちになってくれそうで助かるのに。
恋には荷物持ちは怖くてあまりお願い出来そうにない。

「うわっ、そういえば格好付けてんねぇ」

話を変える機会だと思ったのか脈絡なく流亜からの誕生日プレゼントのペンダントへ目を向けていた。

「あんた青好きだもんね」
「流石相手の気持ちを汲める光さんはわかるねぇ」
「なに、買ったの?」
「いや、昨日流亜からもらったプレゼントだよ。あいつって話もだけど選ぶセンスも持ってるよなぁ」
「……」

急にぶすっとした表情の光。
二次元なら大好物な反応だがリアルでやられると視線で弓矢を発射された気になる。

「……それは昨日拳をぶつけた私への当て付け?」
「違います。いや、ホント違うんですよ……」
「うん、達裄が年下ばっかり贔屓するのはわかる。うん気持ち悪いぐらい。そして仲良くしてやってる私と星丸ばっかり冷たくあしらうのも知ってる。どうせ達裄から雇われた親友というポジションだからね」
「そんなつもりはありませんでした、ごめんなさい」

流亜や恋の年下に甘いかもしれない。
もしかしたら光の妹の花ちゃんにも。
そして光、星丸、姉さん辺りとは大分違うかもしれない。
もう少し後者3人に対し接し方を変えようと誓った。

「もうそんなに良いから。いや本当に」

それから5回ぐらい頭を下げ続けた。
2回目ぐらいで許してはくれていたのだがそれでも謝り続けた。

「これから言うのはとどめではなく親友だから言うよ」

そして光はちょっと思考と合わせながら言葉を紡いでいっているみたいだった。
どうやら真面目な話になりそうだった。
本当に姉御肌だよな。

「あんたさ、来年になってもし私と星丸、両方とクラスが別れたらどうするつもり?」
「え……」
「人との交流を絶つつもり?学校生活なのに?あんたもうすぐで1年経つけどまともに話すのそれぐらいじゃん。私たちは中学からずっと一緒なのに達裄の周りだけ全然メンバー変わらないんだよ?」
「…………」

考えてみる。
星丸とは幼馴染だけど1回疎遠になったな。
1年の時はクラスが違うんだっけか?
まぁ、小学6年ぐらいから疎遠になったのだけれども。
光とは2年から。
そこから3人の慌ただしい光景が日常になったんだっけか。
そこまで行くのにも時間は掛かったが。
そういや、ずっと1人なんだったか。
家に帰っても、学校でも1人。
俺は星丸との空白の1、2年の時ある子が支えになってたんだっけな。
もし、支えになっていたあの子が居なかったらそれこそ中卒引き籠りになっていたかもしれない。

「他に友達居る?」
「えっと……影太」
「影太ってどっちかというと星丸の友達だよね」

言われてみなくてもそうだったな。
これで男子は、……全滅した。

「雨なら友達だ」
「雨ちゃんは確かに友達だね。でもね彼女は星丸の彼女なの。クラス一緒になったとして授業の合間はともかく昼休みは星丸と一緒に食事に行っちゃってボッチだよ」
「あれ?」

俺ってこんな人数しか友達居ない?
あれ?右手の指で数えても1本余るんだけど……。

「じ、実は描写されてないだけで知り合いは居る、とか?」
「そんな都合の良い話はありません」

積んだ。
光に完全に論破された。
俺はそんな時どうすりゃ良いんだろうか?

「でもうちの学校はクラスでもあまり生徒の入れ替えはしないって話だから大丈夫だと思うけどね。2年と3年はクラス変わらないし。これは知り合いに先輩が居れば普通に聞く話だけど達裄はどうせ知らないでしょ」

全く知らなかった。
万が一の事も考えておいて、光に厳しく忠告された。

「だからもう少し交友関係を広めなさいな」
「はあ、お前がカリスマ性のある奴ってよくわかるわ」

こんな強くて、厳しくて、正しくて、美人で。
俺は光の側に居ると安心するんだ。
どんどん、惹かれていくんだ。

「達裄も十分そのカリスマってやつ持ってるよ」
「ん?」
「人には伝わりにくいカリスマなんだよ。自分で言うのもなんだけどカリスマ抜群な私と星丸があんたには敵わないと思っているんだから」
「そ、そうか?」

光はともかく星丸もなのか。
ちょっと信じられない話だけど。

「あんたはきっかけが作るのが下手。その変わり一度知り合えばすぐにあんたのカリスマ性が見えるって事。普段は100の力を持つカリスマを100の力を持って隠しちゃってる感じ」
「それはほめ過ぎだろ」
「そうかな?私バカだから優等生の意見の方が正しいかもねん」
「問題児だけどなぁ」
「それは達裄が意図して隠してるって事かな?そもそもあんた自身が近寄らないんだよね。まぁその辺は追及しないけど」

含みを持たせているが俺には真意が読み込めなかった。

「以上、親友の忠告を終わります」
「……ありがとうございました」「じゃあ今から言う口座に授業料を支払っておいてね」
「有料!?」

でも彼女の忠告はお金を払う価値があったぐらい有意義だったと自負出来る。
まったく、お節介な親友だな。

「5万ぐらいで足りる?」
「ごめん、その払えそうだし払えなさそうなリアルな金額やめて……」
「光さん、肩もみましょうか?」
「ここでの肩もみってどんな視感プレイよ」

そういえばここはデパートだったな。
よくよく考えたら俺達こんな場所で何言い合ってんだよ!
ハズい。

俺と光は顔を赤くなった。
それくらいヒートアップしていた。

「じゃあね達裄、今度あんたの手料理でも食べさせてくれれば良いから」
「飛びっっっっっっっきりまずい料理ごちそうしてやる」
「あはは、くたばれよ~」

そう言って光は外へ出て行った。
さて、光にごちそうする時はあいつの好物をたくさん作ってやろうかとメニューを思考していた。

「ごめんお兄ちゃん、トイレの場所見つからなくて2階まで行ってたよ」

それから5分くらいして息切れした申し訳なさそうな妹と再会した。
この時は恋のドジっ子に感謝した。
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