ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
2 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる

02:元村娘ですが職をクーリングオフしたいです

しおりを挟む


 頭の中は真っ白。

 えっ【毒殺屋】? 毒殺? 何それ。
 私が事前に調べたジョブの中にそんな物騒なものはない。
 しかも【毒殺士】とかじゃなく【毒殺屋】? 屋号?


『へいらっしゃい、らっしゃい! 今日はいい毒入ってるよ! おっ、そこのお嬢さん、誰か毒殺してみないかい? 毒殺ならば毒殺屋! どうぞ気軽に見て行ってくんな!』


 ……違う、これじゃない。

 そんな現実逃避をしていると、目の前の神官さんが騒ぎ出す。


「おお! 固有職ユニークジョブ! 君、どうぞこちらへ!」

「ええっ!? ピーゾン何だよ固有職ユニークジョブって!」


 後ろで様子を見ていたらしいアルスとかいう小僧が五月蠅い。
 私は真っ白な頭のまま、神官さんに促され、奥の個室へと入った。
 そこで固有職ユニークジョブに関する様々な事を説明された。

 ……が、途方に暮れていた私は聞けはすれども会話も出来ず。
 頭の中では素晴らしき普通の人生がちゃぶ台をひっくり返したようにドンガラガッシャーンと崩れていくのを感じていたのだ。





 オーフェンから我が村――ファストンまでは行きと同じように冒険者の護衛付き馬車での旅路だ。
 この旅費やら冒険者への依頼料などは国が負担している。
 それほど国は『職決め』の儀を重要視していて、国民のジョブの管理に邁進しているということだ。

 そりゃそうだろう。
 国に何人【農家】がいるか、何人【魔法使い】がいるかで国政も変わって来るはずだし。

 仮に国王が「我が国は武力をもって領土を広げるぞー!」とか言っても実は国民の大多数が非戦闘職でした、なんてこともあるわけで。
 だからこそ国民のジョブ情報は神殿を通じて把握しているのだ。
 そういったわけで毎年都市の神殿に集められ、一気に『職決め』が行われているってわけだね。


「はぁ……」


 まぁ、そんな国の政策などどうでも良いのだよ私は。
 ガタゴト揺れる馬車で何度目かの溜息をついた。お尻も痛いし気分も重い。
 神殿で毒なんちゃらだとか言われてからずっとこんな感じだ。


「なぁ、なぁ! ピーゾン! ピーゾンってば!」


 隣でアルスとかいう小僧が五月蠅い。溜息の理由二つ目だ。
 こいつは私が気分を害しているというのを察知しないのか。

 社会に出るにはエアーリーディングも重要なファクターなのだよ、そう十歳男子に教えてもなぁ。理解しないだろうなぁ。アルスだしなぁ。


「教えてくれよ! お前、ユニ――ブグッ!!」


 とりあえず高速で腹パンかましてみた。
 どうやら【毒なんちゃら】の私でも【剣士】のアルスに対し、腹パンは効果があるらしい。思わぬ収穫である。
 そして腹を抱えるアルスの耳に口を寄せる。


「アルス、私が固有職ユニークジョブだって事、内緒だからね」

「うぅっ……」

固有職ユニークジョブは国が管理してるらしいから、言い触らしたら騎士さんに捕まっちゃうからね? アルス逮捕されるからね?」

「!? あ、あぁ、分かった! 大丈夫! 俺誰にも言わないから!」


 ふっ……子供なんざこんなもんよ。
 悪い事して逮捕されると脅してやれば大人しくなるもんなのだよ。
 これが大人の言いくるめ術なのだよ……!

 ったく、こやつは自分が望んだ【剣士】になったから、それもあって浮かれているのか。
 それとも世間的には″特別視″されているらしい固有職ユニークジョブに単に興味があるだけか。
 それとも単純に馬鹿なだけか。あ、これだな。考えるまでもない。


 ……さて、アルスのおかげとは言え、少しは頭が働くようになってきた。
 いい加減状況を整理しよう。
 見つめ直そう。私のこれからを。

 まず、職決め前の私のステータスがこちら。


―――――
名前:ピーゾン
職業:無職Lv10

HP:8
MP:5
攻撃:6
防御:5
魔力:3
抵抗:3
敏捷:5
器用:6
運 :3

スキル:なし
―――――


 これは誰でも自分だけに見えるステータス。何ともゲームチックでしょう。
 私が『異世界ではなくゲームの中なんじゃないか』と疑った最初の要因である。

 他人のステータスを見たり、紙に転写したりという魔法だかスキルだかもあるらしいが、ステータスを自分で見るというのは魔法ではない。この世界の人間の基本性能みたいなものだ。

 無職のまま十年過ごし、レベルは10になっている。
 が、【無職】の場合、レベルアップによるステータス増加がほとんど起こらないらしい。単純に身体的成長としてステータスが少しずつ伸びる感覚。
 ジョブによってレベルを上げる手段は異なるが、【無職】は年に一回、勝手にレベルが上がるのだ。

 HP以下の値は個人差があって、普段の生活でも多少上がったりする。レベルアップでは上がらないのに。
 と言っても【無職】の上がり幅なんて微々たるもので、敏捷と器用が多少高いのは毎日食堂のお手伝いで皿運びやらお使いやらしていたせいだろう。

 攻撃と防御に関しては謎である。もしかするとこれが十歳の少女の平均なのかもしれない。
 他人のステータスなんて知らないし比べない。お父さんとお母さんのだってジョブしか知らない。
 一応幼馴染ポジションであるアなんとかのも知らない。日常生活で教え合うものでもないのだ。


 ……で、見たくもない私の新しいステータスがこちら。


―――――
名前:ピーゾン
職業:無職Lv10 ⇒ 毒殺屋Lv1

HP:21(+13)
MP:25(+20)
攻撃:13(+7)
防御:3(-2)
魔力:10(+7)
抵抗:4(+1)
敏捷:32(+27)
器用:20(+14)
運 :4(+1)

スキル:毒精製Lv1(衰弱毒)、毒弾Lv1、毒感知Lv1
―――――


 もうね、色々と突っ込みたい。ジョブは別として。
 上がり幅に差があるのは職業補正とか何かあるんだろうけど、まず、なぜ防御が下がるのか。
 無職より紙防御とは何事かと。

 そりゃレベル10からレベル1になったから下がるのかもしれないけど、他は全部上がってるって事は職業補正が【無職】に比べて非常に高いって事でしょう。
 だのに! だのになぜ下がる防御よ! 私に死ねと言うのか!


 そしてスキルには知らない物が並んでいる。
 いや、ジョブ自体が知らないからスキルを知らないのもしょうがないけど、どれもこれも毒まみれ。
 <毒精製>って、私毒作れちゃうの? <衰弱毒>って何よ。毒に種類があるの初めて知ったわ。


 全体的に見れば、これアレだよね。

 ……暗殺者。

 素早く近づき毒で殺す、暗殺者だよね。
 もうステータス見るだけで平和な生活とは縁遠くなるんだよね。
 げんなりします。思わずアレクに無言腹パンしたくなるくらいげんなりしてます。


 ……とは言え現実からいつまでも目を背けるわけにもいかない。
 ジョブとは勝手に決められて、尚且つ変更が出来ないもの。
 派生したり上級職への転職はあっても、基本となる最初のジョブは変えられない。

 すでに決められた運命なのだ。
 戦わなきゃ、現実と。

 まずは帰ってお父さんとお母さんに報告だなぁ。
 あー嫌だ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...