4 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる
04:冒険者になるので武器を下さい
しおりを挟む両親と相談した翌日、私はすでに家を出ていた。
今日のうちに出立準備をして、そのまま村を出るつもりだ。
あまり長居すると出て行きづらくなるし、【毒殺屋】が長期滞在するのも風聞が悪いだろう。食堂的に。
当然のように両親はしばらくしてから行けと言っていたが、気持ちが辛くなるだけだし。
固有職としても早くに王都に行く必要があるしね。
第一、王都までは本当に遠いから。馬車で三日掛かるオーフェンはかなり近場の都市なのだ。王都はずっと先にある。
そんなわけで王都に向かうのはもちろんなんだけど、村で出来る事は出来る限りやっておく。
まずは冒険者ギルドだ。
都市や街のように支部はないけど、出張所はある。
「あらピーゾンちゃん、どうしたの?」
「こんにちは。仮登録に来ましたー」
「ええっ! ピーゾンちゃん冒険者になるの!?」
受付のおばちゃんがカウンターに座ってるだけの簡易的な出張所。村のギルドなんてこんなものだ。
おばちゃんも村では顔なじみだ。村なんてみんなご近所さんみたいなもんだし。
私が食堂でお手伝いしているのも知っているので、冒険者になると言ったら驚いていた。
ギルドカードを作る際にどうせ職登録する事になるので、私が【毒殺屋】になった事を説明した。
もちろん秘密にしといてね、とは言ったけど。
【毒殺屋】と聞いて、目玉が飛び出るんじゃないかと思うほどにビックリしていた。
「やっぱ聞いた事ないですか、こんな職……」
「ええ、未知の固有職なのは間違いないわ。斥候系の職で【盗賊】とか【暗殺者】とかはあるから同じような感じかもしれないけど……」
どうあがいても犯罪者ですよね、分かります。
おばちゃんもすごく言いづらそう。
「やっぱ固有職って珍しいんですか」
「この村だと十年に一人くらいかしら。でも国内だと毎年百人くらいは居るはずよ。半分以上は職業専門学校に行くとは思うけど」
「冒険者になる固有職はあんま居ないんですかね」
「そんなことないわ。学校の次に多い進路が冒険者だし、戦闘職だと進んで冒険者になる子も多いって聞くわ。王都の冒険者ギルドには毎年集まるはずだから、きっとピーゾンちゃんと同じような子も居るはずよ」
固有職は誰であっても王都に集まる。
当然、私と同じような冒険者になる子も向かうんだろう。
冒険者になるからにはパーティーを組むんだろうし、そういった同じ境遇の子と仲良くなれればいいなぁ。
「ここでは仮登録しか出来ないから詳しい説明は本登録の時にされるはずよ。オーフェンに向かうんでしょ?」
「はい。オーフェンのギルドで本登録します」
「本当に気を付けてね、ピーゾンちゃん。冒険者は危険な仕事よ。くれぐれも用心して、安易に魔物と戦ったりしちゃダメだからね? お願いよ? 万一の事があったらソルダードもピエットも悲しんじゃうから。もちろん私もよ」
仮にもギルド職員であるのに冒険者批判ともとれる発言。
それくらい親身になってくれている。村という小さいコミュニティは本当に暖かい。
おばちゃんも食堂に時々来るから私が「将来は食堂で働きたい」と言っていたのを知っている。
それでも冒険者となり村を離れなければならない。
そんな気持ちを分かってくれたらしい。若干涙ぐんでたし。
残念そうに励まされながら、冒険者の仮登録証を発行してもらった。
これがないと街に入った時の身分証明にならないので、村で入手する必要があったのだ。
おばちゃんに軽く別れの挨拶をし、再び涙ぐむおばちゃんを後に出張所を出た。
気を取り直して次は武具屋だ。
「らっしゃい! ……ってピーゾンじゃねえか。どした?」
「えっとですね……」
武具屋のおっちゃん――ベルダさんはガタイの良いヒゲマッチョ。こちらも食堂の馴染み。
ここでも冒険者になる事と固有職に就いた事を説明する。
【毒殺屋】とは言わない。
ここでは固有職ですよと言う必要はあっても、職の詳細まで言う必要がないからだ。
でも固有職だって秘密にしといてね、とは言っておく。一応。
「固有職とかまじかぁ……ピーゾンが出て行くなんてなぁ、ソルダードの奴もしんどいだろう。……ぃよし! 俺が立派な冒険者に見えるように装備整えてやんぜ! まかせときな!」
おっちゃん、お父さんと仲良しなんだよね。うちで使ってる包丁とかもおっちゃんの手作りだし。
独身だからか私の事も娘扱いしてて、随分と可愛がってもらったもんだ。
少し気落ちした後に無理矢理笑顔を作ったおっちゃんは、腕まくりして装備の陳列棚に向かう。
装備品は職によって決まる。
【魔法使い】が剣を持てても、装備する事は出来ない。
装備してない武器で攻撃してもかすり傷すら付けられない。ダメージ皆無だ。
もちろん物理的に考えればありえない事だけど、この世界では常識である。
武器とは見なされない木剣とかなら装備出来る。
しかしそれでも武器ではないからダメージは入らない。
結局、人にも魔物にも″攻撃″出来るのは、『戦闘職が専用装備をした場合のみ』という事なのだ。
つまりアルスへの腹パンは痛がってたけどダメージは入っていないという事。
従ってあれはパワハラではない。QED。
閑話休題。
んじゃ【毒殺屋】ってのはどんな武器が扱えるのかって話になるんだけど……
「えっ……まじかよ……剣も杖もナイフもダメ。斧、棍、弓……ダメか」
「えっと他には何かある……?」
「鎌? ワンド? 槍? ダメか……なぁピーゾン。冒険者やめたほうが……」
何も言えない。
武器適性が何もないとは思わなかった。膝を突きたくなる。
あれ? ステータス的には戦闘職だよね?
非戦闘職なら武器持てないのも分かるんだけど……。
もしかして【毒殺屋】って商人系? 屋号みたいだし。毒専門の【商人】的な。
いやいや、そしたらスキルの<毒弾>とか訳わからないし。
あれ多分<火弾>とか<水弾>みたいな攻撃魔法でしょ。それ以外、私には考えられない。
試してないけど。というか村じゃ危険すぎて試せないんだけど。
とりあえず何も武器を持たないってのもアレなので装備出来る刃物の中から鉈をチョイスした。
もちろん『武器』ではない。一般人が薪を割ったりする用の鉈だ。
ただ家で使ってたやつと違って刃渡り四〇センチくらいの大型サイズ。
包丁とノコギリと迷ったんだけど、直剣っぽく見えないかなーと期待して。
見た目で少しでも冒険者っぽくしておきたいのだ。
じゃないとただの『小娘の旅人』になってしまう。危険度が増す。
木剣も非戦闘員用として装備できるんだけどさすがに木じゃなぁ……と。
これで何とか武器っぽく見えないかなーと誤魔化しつつ鉈を腰に下げる。
おっちゃんは白い目で見ているけども。
マシだと思ってるのはどうやら私だけの模様。
気を取り直して防具も見てみるが、やはりと言うか重装備……鎧とか金属系、盾も無理だった。皮鎧もダメっぽい。
でも服やローブ系の軽装備は大丈夫そうだったので、なるべく丈夫な冒険者っぽい服を選んでもらった。
なんとも地味な色合いだ。
この世界の服……まぁ私たち村民が着るような服はどれも「ザ・村人!」という感じなんだよ。茶色ばっか。
せっかくの戦闘用装備だと言うのに、私が『クリハン』で着ていたような白やパステルカラーで、フリフリフワフワって感じのものは存在しない。分かってはいたけどね。
「お代はいいぜ……なんて言うか、せっかくの門出だってのにちゃんとした装備させてやれなくて申し訳ないと言うか……武具屋として恥ずかしいと言うか……」
「あー、気にしないで。大丈夫! 大丈夫だから! 鉈強いから!」
思わずフォローしてしまった。そしてタダにして貰ってこちらが申し訳ない。
とりあえず気まずかったので、元気を装って苦笑いで退散した。
―――――
名前:ピーゾン
職業:毒殺屋Lv1
装備:武器・鉈(攻撃+0)
防具・布の服(防御+5)
皮のブーツ(敏捷+3)
布の外套(防御+5)
HP:21
MP:25
攻撃:13
防御:3(+10=13)
魔力:10
抵抗:4
敏捷:32(+3=35)
器用:20
運 :4
スキル:毒精製Lv1(衰弱毒)、毒弾Lv1、毒感知Lv1
―――――
7
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる