5 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる
05:元廃人ゲーマーですが後腐れないように叩き潰します
しおりを挟むそれから村を歩き「ちょっと王都行きますー」と軽い挨拶がてら少し回る。
しんみりした門出にはしたくないのだ。
途中、道具屋さんに寄って、冒険者の初心者に必要なものを買い込んだ。
着替えや大きめの布、ロープに採取用ナイフ、ランタンに初級ポーションとか薬類。保存食などなど。
あとはそれらを入れる背嚢。
背嚢もあまり大きすぎると動きづらくなるし、私のステータス的に敏捷重視なので収納物も含めてなるべく軽く・少なくしてもらった。
登山用とは言わないまでもリュックサックな感じ。
両親からの心付けで渡されたのは金貨五枚。
少ないけどって言われたけど、突然王都行きますって娘に対して、村の食堂がそれだけ出すってのはスゴイ事だと思う。
正直うちにそんな貯蓄あると思わなかったし、貰うのを恐縮するくらい申し訳なく思った。
あ、ちなみに硬貨レートはこんな感じ(私の勝手なイメージ)
銅貨=十円
銀貨=銅貨百枚=千円
金貨=銀貨百枚=十万円
白金貨=金貨百枚=一千万円
つまり五十万円くらい貰ったわけだ。
冒険者になって稼ぐ事ができたら仕送りしようと心に決める。
で、武具屋では結局無料だったし、道具屋でも色々とおまけしてもらって銀貨十枚しか使わなかった。
多分普通に買ったら三倍くらいするんじゃないかと……。
村とかいう心温まるコミュニティありがたい。
でも怖い。優しい人が痛い目を見そうで怖い。がんばれ村。
出立準備が整ったら一度家に戻って、両親と一緒に馬車乗り場へと向かう。
二人ともお見送りしてくれるらしい。
「本当に気を付けるんだぞ? 危険な事はしちゃダメだ。都会には信用させようと近づいてくる悪者だっている。ましてやピーゾンは可愛い女の子なんだ。絶対に変な男に近づくんじゃない。そいつは悪者だ。気を許しちゃダメだ。いいか? 絶対だぞ?」
「辛い事があったらすぐに帰ってくるのよ? 何もなくても手紙は出しなさい。手紙を出すお金もなかったらその事も事前に知らせてね? こっちから送金するから。まずは宿屋とか住まいが決まったら教えて。あ、極端に安い宿屋はダメよ? 安全なところを探しなさい。それと……」
二人ともお別れの挨拶が長い。
いや、いいんだよ? 愛情バシバシ伝わるよ?
十歳の娘を都会に出す両親の思いってのは私には分からないけど、心配でしょうがないんだろーなーって想像はつくよ。
だからうんうんと頷いてハグしておくよ。
そんな事をしていたら、遠くから声が聞こえた。
「おーーい! ピーゾン!」
えっと……アルゴ……アモス……いや、アルスだ。
そんなに慌ててどうした……あ、アルスには何も言ってなかったや。
別にわざわざ村を出るって言う必要ないんじゃないかな。こやつだし。
「聞いたぞ! 冒険者になって王都に行くって、ホントか!」
「うん、そうだけど……」
「ずるい! 俺だって冒険者になるんだ! ピーゾンの勝ち逃げじゃないか!」
ずるいって言われてもねぇ。
アルスが【剣士】になりたかったのって親父さんと一緒に村の衛兵になる為でしょうに。
まぁ冒険者になるのは別にいいんだけど本登録でオーフェンに行くくらいでしょ?
私もとりあえずオーフェンに行くけど、王都に行くのをずるいと言われても困ります。
「どうしても行くって言うなら……行く前にもう一勝負だ!」
そう言って、アルスは左手で木剣を差し出してきた。
自分用のは右手に持っている。
なんとまぁ執念深いと言うか、うざったいと言うか……。
ま、村を出る前にアルスの未練を断ち切っておきますか。
溜息一つ、私は木剣を片手に取り、半身に構えた。
「絶対に俺が勝つからな! 行くぞ!」
「はいはい、掛かって来なさい」
アルスの剣は衛兵のお父さんに毎日しごかれて身につけたものだ。
多分、同年代の男の子からしたら十分に戦える剣筋なんだと思う。
比較対象がないからアレだけど。
上段に振りかぶり、勢いよく迫りつつ、体重を乗せて振り下ろす。
――ビュン――すかっ
「くそぅ! まだまだ!」
――ブンブンブン――すかっすかっすかっ
うん。いくら剣を扱えるって言っても、いくら【剣士】になって<剣術>スキルを覚えたって言っても、所詮は十歳のガキの技量なんだよね。
ぶんぶん振ってるだけじゃ当たるわけがないよ。
私はアルスの動きをよく見て、剣の軌道を予測して、身体をずらすだけ。
『クリーチャーハンター』というゲームは、敵のほとんどが触手持ちの異形だった。
デカくて、気持ち悪くて、何十本もの触手を相手にするもんだから、アバターを後衛キャラに育てる人がかなり多い。
誰も触手がうねる前衛で戦いたくないのだ。
気持ち悪い上に難しいから。遠くから魔法が無難なのです。
そんな中で私は『フリフリドレス装備で回避特化の大剣使い』というキャラにしていた。
最前線で触手攻撃に晒されながら、とにかく避けまくり、大剣の一撃を与えると。
なんでそんな非効率なキャラにしたかって?
そこに浪漫があるからだよ、言わせんな恥ずかしい。
もちろんVRMMOの話だし、私が実際に身体を動かしていたわけじゃない。
でも動きを見る目と、考える脳はその時に鍛えられたのだと思う。
そしてそれはこっちの世界に来ても変わらない。
空町タカコからピーゾンになっても、十歳の少女になっても、目と脳は変わらない。
アルスの剣を見るのなんて、無数の触手に比べれば児戯同然。避けられて当然。
私としてはこの世界で魔物相手に戦うつもりなんてなかったし、無理矢理誘われて何回かはアルスと模擬戦したんだけど、毎日訓練しているアルスと『クリハン』の動きで剣を振った私が戦ったら、私が全勝してしまったのだ。
そんなこんなでこの小僧は「勝ち逃げ」とかほざいているわけなんだけどね。
わざと負けてあげるのも嫌なので叩き潰しておきます。
村を出る前に禍根を残すわけにはいかないんで。
あと、なんとなく叩きたいんで。
「くそっ! はぁっ、はぁっ! なんでっ! 当たらないんだよっ!」
「もう終わりにするよー、攻撃するからねー」
避けながら胴に一発。ズバンと綺麗に入った。
カウンター気味にもらったアルスはそのまま腹を押さえてヨツンヴァインになる。
木剣だからHPのダメージはない。でも衝撃はあるのだ。
だから私は当たりたくないのだよ。
項垂れるアルスに上から目線で声をかける。
「アルスは【剣士】になったんだからこれから強くなるでしょう? 今度帰ってきた時に見せてもらうよ」
「はぁっ、はぁっ、ぜ、絶対だぞ! 今度はピーゾンより強くなってるからな! あと俺も王都行きたい!」
「いや王都に来る意味ないでしょ。アルスはこの村守っててよ」
「うぅぅ……ちくしょう……」
項垂れるアルスは放っておいて、両親と最後の別れを交わす。
【剣士】のアルスに勝った事を持ち上げられながらも、やっぱり冒険者として戦うには不安なようで、最後まで心配された。
とりあえずハグしておく。
そんなこんながあって、私は馬車に乗り込んだ。
村によく来る馴染みの行商人さんにお金を払い、オーフェンまで乗っけてもらうのだ。お待たせして申し訳ない。
馬車はゆっくりと走り出し、私は荷台から後ろに顔を出す。
「元気でなー!」「気を付けてねー!」「すぐ帰ってこいよー!」
そんな声がいつまでも続く中、私はずっと手を振り続けた。
その姿が見えなくなるまで。
7
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる