ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
6 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる

閑話1:とある少年の幼馴染

しおりを挟む


■アルフェドアランケリウス(略称アルス) 【剣士】 10歳


 俺が住んでるファストン村ってところは、小さくて退屈な村だ。

 一応、北にある大都市『オーフェン』と南の街とを繋ぐ街道沿いってことで、人の行き来はあるが、小さすぎて滞在する人もまばらって感じだな。
 だから街道沿いのくせして人は少ない。

 ガメオウ山ってのが割と近くにあって、そこ目当てで泊まる冒険者なんかも居る。
 ただ出て来る魔物が強いのか弱いのか、あんまり人気はないみたいだけど。

 俺も出来れば冒険者になりたいっていう憧れはずっとあった。
 やっぱかっこいいからな。冒険して魔物と戦って。
 英雄譚よりも身近なヒーローって感じでさ。
 俺じゃなくても男だったら憧れると思うぜ?


 ただ俺の場合は父ちゃんが村の衛兵だから、やっぱ俺も冒険者じゃなくて衛兵になんのかなーとも思ってた。

 衛兵だって魔物から村を守る立派な役目だと思う。
 父ちゃんもカッコイイと思うよ。
 だから衛兵になるにせよ冒険者になるにせよ、剣は使えた方がいいと思って毎日がんばって訓練してたんだ。


 でもなぁ……。

 いや、俺の幼馴染でピーゾンって女が居るんだよ。
 小さい村だから同年の子供なんか俺とそいつくらいなもんでさ、親同士も仲が良かったから俺たちも子供同士で遊べとか言われてた。


「えっ、私があんたと? 遊ぶの? いやいや、いいです。私食堂のお手伝いしますんで」


 変なヤツなんだよ。
 当時五歳の俺が「あそぼーぜー」って言った途端にコレだぜ?
 それから事あるごとに遊びに誘ってみたが、全く遊んでくれなかった。虫取りとか。砂遊びとか。

 で、俺が父ちゃんから剣を習い始めたってのもあって、ピーゾンも誘ってみたんだよ。
 このご時世、女だからって戦っちゃいけませんとかないしな。
 女で有名な冒険者とかいっぱい居るし。強くなって損ないだろ?


「あー、剣ね。なるほど。まいっか」


 初めての手応え。
 ピーゾンは随分と悩んでから俺の差し出した木剣を手に取った。
 右手に持ち、構えからビュンビュンと素振りをする。
 うんと頷く。何か満足したらしい。切っ先を俺に向けた。

 ……正直、素振りの段階で嫌な予感はしてたんだ。

 ……あれ? なんかすごい堂に入った素振りしてる?

 ……剣なんか握った事ないはずだよな? って思ってた。


 剣を向け、半身になって構える姿勢は、正直父ちゃんより怖く感じた。
 睨みつけるような視線は俺の目を見ているはずなのに、剣と俺の身体全部を見られているような気がした。


「うらああああ!!!」


 無理矢理気合いを入れて突撃。最初から渾身の一撃を出したけど、あっさり避けられた。
 その事に驚きながら、自分でもよく分からない動きで連続して振る。とにかく振る。
 当てたい。何とか一撃当てたい。
 そう思ってとにかく振った。

 でも一発も当てられなかった。
 まるで木の葉みたいにひょいひょい避けて、最後には逆に一撃入れられた。超痛え。


「あー、全然ダメだわ……ブランクがすごい。片手剣ってのもなー」


 なんか悔しがってる。
 俺の方が一億万倍悔しいんだけど!?


 それから毎日の特訓により一層身が入った。
 衛兵とか冒険者とか関係なく、ピーゾンに勝ちたいってそれだけ思って特訓した。
 事あるごとに再戦を申し込み、「お手伝いあるから今度ねー」と軽く返され、それでもめげずに申し込んで、時々は模擬戦した。

 まぁ一回も勝てないどころか、一発も当てられなかったんだけど……。
 なんなんだよこいつ、まじで……。


 何度目かの敗戦で、俺のどこが悪いのか聞いてみた。


「うーん、アラ……アレ……アルスはね、姿勢が悪いし、振りも大きすぎだし、単調だし、分かりやすいし、振ったあとに体勢崩れてるし、防御考えてないし、馬鹿だし、視線でどこ狙うのかもバレバレだし、無駄に力んでるし、馬鹿だし、頭が悪いんだよ」


 し、指摘事項多すぎぃ!?

 しかも途中悪口入ってなかった!?
 バカって言うヤツがバカなんだぞ、バーカバーカ!

 食堂の娘に負ける衛兵とかありえないだろ?
 超悔しくて帰って一人で泣いたよ。
 さすがに女の前じゃ泣けないけど。父ちゃんの前でも。


 そんな事が続いて十歳になった。未だに一度も当てられていない。

 俺はピーゾンと二人、村に迎えに来た馬車に乗ってオーフェンまで行ったんだ。
 そう、『職決め』の日だからな。

 初めて行ったオーフェンはやっぱすごい都会で村とは全然違う。
 祭りみたいに人がいっぱいでさ、建物も人もみんなカッコよく見えた。
 やっぱこういう都会を拠点にしてる冒険者もいいなーと再び憧れたりした。

 冒険者になるにしても衛兵になるにしても『職決め』で戦闘職にならなきゃ意味がない。
 俺はゆっくりしてるピーゾンを連れて神殿へと急いだ。
 こいつは本当に平常心というか、オーフェンに来ても感動とかないみたいだし……相変わらず変なヤツだ。


 で、『職決め』の結果、俺は【剣士】になった。
 本当に嬉しかった。

 今までずっと剣の稽古をしてきて、これで戦闘職じゃなかったらどうしようってすごく不安だった。
 でもこれで<剣術>スキルが付いたはずだし、もっと剣が上手くなるはずだ。
 ピーゾンにも勝てるかもしれない。そう考えるとすごく嬉しかった。


 しかしそのピーゾンは『職決め』を受けた直後から呆然としていた。
 神官さんが「固有職ユニークジョブ」と言うのが聞こえた。
 何それ? そういうジョブ

 ピーゾンは神官さんに別室に連れて行かれ、俺は出て来るのを待った。一人じゃ帰れないからな。
 部屋から出て来てもピーゾンの顔色は悪い。
 何を聞いても小声で「うん……うん……」と言うばかり。

 ホントどうしちゃったんだよ……こんなのピーゾンらしくないじゃないか。
 いつもみたいに太々しくビシビシ言う感じが全然ないじゃないか。
 やっぱ固有職ユニークジョブとかいうのになったのが原因なのか?

 帰りの馬車でもしつこいくらいに聞いてみたら、突然腹パンされた。超痛え。


「アルス、私が固有職ユニークジョブだって事、内緒だからね」

「うぅっ……」

固有職ユニークジョブは国が管理してるらしいから、言い触らしたら騎士さんに捕まっちゃうからね? アルス逮捕されるからね?」


 えっ! 固有職ユニークジョブって言うと捕まっちゃうのか!?
 そんな怖いジョブに就いたのかよお前!

 俺は絶対に口に出すまいと、帰りの馬車では無口になった。


 後から聞けば、固有職ユニークジョブって言うのは『世界に一人しかいない珍しいジョブの事』なんだそうだ。

 なんだよそれ。そんな特別なジョブだったらもっと喜べばいいじゃん。
 何、この世の終わりみたいな顔してんだよ。


 結局ピーゾンが何のジョブに就いたのかは分からなかったけど、世界に一人しか居ないとかスゴイと思う。
 やっぱピーゾンは只者じゃねえ。
 前から変わり者だと思ってたけど、やっぱそうだったと改めて思った。


 村に帰って父ちゃんに【剣士】になったって言ったら喜んでくれた。それもまた嬉しい。
 明日からさっそく特訓メニューを厳しくするそうだ。
 望むところだ! 早く【剣士】としての力を上げて、ピーゾンに勝たないといけないからな!

 ……そう思っていた翌日。
 なぜかピーゾンが村を出るという話を聞く。
 しかも冒険者になって王都に行くと。


 えっ!? うそだろ!? 昨日帰って来たばっかじゃん!
 しかも王都で冒険者!? お前戦闘職だったの!? 確かに腹パン痛かったけど!

 頭の中はぐるぐるしたまま、とにかく木剣を持って村の入口に走った。
 ピーゾンは親御さんと別れを済ませ、馬車に向かうところだった。間に合った!


「どうしても行くって言うなら……行く前にもう一勝負だ!」


 まさか村を出て行くなんて、まさか王都に行っちまうだなんて。
 俺が一回も勝てないどころか、一発も当てられないまま勝ち逃げされてたまるか!
 せっかく【剣士】になれたのに!

 そう思っての最後の一勝負。
 ピーゾンの目付きと構えは、今までのものとは確実に違った。

 今までは食堂の休憩中に暇つぶしのお遊びみたいな雰囲気だったが(それでも全く当てられなかったが)今回はすごく真面目に剣を向けていた。

 多分、冒険者になるって決めた、その決意みたいなものが出てるんだと思う。
 村を出て、冒険者になって、魔物と戦わなきゃいけない。
 だから木剣でも真剣に見えるんだと思った。


 俺は自分のステータスをとっくに確認していた。
 【剣士】になる前より格段に強くなってるし、動き自体も良くなっているという自覚があった。

 ……でも無理だった。

 ……また一発も当てられないまま負けた。


 やっぱりか。悔しい気持ちの中にどこかそんな安心感があった。
 固有職ユニークジョブとか言うのになっても、冒険者になっても、やっぱりピーゾンはピーゾンなんだなって。
 絶対に勝てない壁であると同時に、とてつもなく変な女だ。何も変わってない。


「アルスは【剣士】になったんだからこれから強くなるでしょう? 今度帰ってきた時に見せてもらうよ」


 ピーゾンが冒険者になるんなら俺だってなりたい。
 負けっぱなしは嫌だし、いつか勝ちたいとずっと思ってる。

 でもそう言われたら村で頑張るしかない。
 特訓して父ちゃんみたいな立派な衛兵になってやる。
 そんでピーゾンが帰って来た時には絶対に勝つ。
 見返してやるんだからな!

 ピーゾンが乗り込んだ馬車がだんだんと小さくなっていく。
 それを見ながら、俺は両手の木剣を握りしめ、父ちゃんの下へと走って帰ったんだ。
 父ちゃん! 特訓してくれ!


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...