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第一章 毒娘、冒険者になる
16:か弱い少女ですが変質者に纏わりつかれる事になりました
しおりを挟む「じゃあ貴方は国の役人ってことですか?」
「だからそうだって。証書も見せただろう? いい加減信じてくれよ」
宿の廊下で正座させられている不審者がそう言う。
私とシェラちゃんはその前に仁王立ちしている。
八歳と十歳の少女の前で正座する推定三〇歳オーバー。ヤバイねこれ。
「じゃあ何で無断で宿に入ったです? ちゃんと入口で言えば良かったです」
「そりゃそっちの娘に配慮しただけだ」
「ん? 私?」
そう言って不審者がチョイチョイと私を手招きする。
シェラちゃんに内緒で話したいらしい。
やだ、怖い。
でも話を聞かないと進まなそうだから、シェラちゃんに用心しておいてもらいつつ、耳を近づける。
「俺ぁ職管理局の固有職監視員だ。ほれ、局員証明のカード」
私だけに見せて来たカードには確かに職管理局の所属と、アロークという名前。そしてカードを光らせ魔力認証されているよ、と示している。
魔力認証はその人の魔力にしか反応せず、他人がカードを持っても使う事はできない。
これは冒険者カードも同じだ。どういう原理かは知らん。
「んで、何でコソコソと私に会いに?」
「そりゃお前が変な職に就いたからだろうが」
変とか言うなし。
「職業専門学校に入らない固有職の奴には管理局の人間がたびたび訪問して定期報告する必要がある。こりゃ神殿で聞いただろ?」
「うん」
「ただお前みたいな職の奴には監視員が付くのさ。報告もそうだが、変な事してないか、危険性はないかってな。ついでに固有職の先達としてスキルとかのアドバイスもしてる」
うわお、私見張られてたってこと!?
まだ【毒殺屋】になって十二日とかだよ!?
目ぇ付けられるの早くない!?
「つーわけでお前と二人で話さなきゃならん。お前だって周りに固有職ですよーとか【毒殺屋】ですよーとか知られたくねーだろ?」
「それで無断侵入したと?」
「ホントは国の役人だって事も言うつもりなかったんだぞ? バレる率高まるし。でも言わなきゃ取り次いでもらえないだろうが。だから言わないで会える方法をとったんだよ」
いや、ギルドとか使えよ。
宿の部屋に侵入する方が役人だってバレるより問題だよ。
まぁとりあえずシェラちゃんには大丈夫っぽいから、部屋で二人で話すって言っておいた。
かなり心配してくれたけど、確かに固有職の事をシェラちゃんの前で話すわけにもいかないし、なんとか宥めたよ。
「なにかあったら大声で叫んで下さいよ! すぐにわたし駆けつけるです!」
「ありがとうシェラちゃん……貴女が心の支えだよ」
なんて良い子なんでしょう。妹に欲しい。これで八歳児とか信じられん。
親御さんは一向に駆け付けて来ないんですけど? 相変わらず厨房に籠ってるんですかね?
この宿、シェラちゃんで成り立ってるんじゃないかと不安になる。
ともかくシェラちゃんを一階に戻し、部屋に入ると遠慮もなくおっさんは部屋に一つしかない椅子に座る。
しょうがないので私はベッドに腰かけた。
「あー、足痛ぇ。んじゃ改めて俺ぁ監視員のアロークってもんだ。一応お前の担当ってことになってる。以後ヨロシク」
「担当の変更を希望したいんだけど」
「ひどくね? まぁ諦めてくれ。正直お前の職の危険度が高すぎる。付ける監視員も限られるんだよ」
「うわぁ……」
そんだけ危険視されてるから早く監視員がついちゃったのか……。
【毒殺屋】だもんね。私が国の立場でも危険視するけど。
「ま、学校行かずに冒険者になるっつーのも分かるぜ? お前自身が自分の職を危険視してるんだろ?」
「そりゃそうでしょ」
「国としちゃお前がそう考えてくれてて有り難い限りだよ。これがすぐにスキル使いたがるヤツとか、悪感情があるヤツだったら俺ぁこうして話してもないぜ?」
まー確かになー。アルスみたいな子供が【毒殺屋】だったら村ですぐに<毒弾>使ってるだろうし。
下手すると周りの人間殺してただろうしね。悪感情なくても。
その場合は監視員が話す前に問答無用で連行されてるって事かな。
国的に固有職は希少らしいから殺しはしなさそうだけど。
「だからしばらく様子見してるだけのつもりだったんだよ。ところがワイバーンなんて倒しちゃうもんだから危険性が増してなぁ……報告しないわけにもいかんし」
「えっ! 見てたの!? だったら助けてよ!」
「いやぁ危なかったら助けるつもりだったぜ? だがなぁ結局完封するし……」
「いやいやワイバーンが襲ってきた時点でピンチでしょうが!」
「その前のゴブリンとか見ててもお前の回避が異常だって分かってたからなぁ。さすが『らぐーんのまいひめ』様だなぁ」
「わーわーわー!」
ばっちり聞いてるじゃん!
なんであの時の私、ドヤったし!
思わずおっさんに向けてピストルの右手を向けちゃったよ。
「おい撃つな撃つな! 冗談だって!」
「記憶から消しなさい! 報告なんて絶対しちゃダメよ!」
「わーたって! って言うかそんな意味不明な二つ名なんて報告するか!」
うー、と唸りながら右手を下ろす。
今絶対私の顔赤いわ。もうその仇名は封印しよう。ここで誓う。
「あー、ともかくだ。ワイバーンも倒しちまうお前の事を報告しないわけにはいかないんでな。現状の職の能力を教えてくれっつーわけだ」
「えっ、嫌なんだけど」
「諦めろ。嫌なのは分かるが言わないと調査名目でホントに連行されるぞ? ちゃんと報告してその上で無害だってしといたほうが良い。これ、先達からのアドバイスな」
「あー、おっさんも固有職……」
「おっさんじゃねえよ! まだ三二歳だ!」
「おっさんじゃん! 十分おっさんじゃん!」
しばらく言い争ったけど決着はつかなかった。
そんな事よりさっさと話を進めたかった。
とりあえずおっさんの言い分も一理ある、って言うか連行されたくないので素直に今分かってるスキルとステータスについて話した。
ステータスの数値とかは聞かれない限り明かさないけど、敏捷が高く防御が低いとかそんな感じ。
それとスキルの説明には時間が掛かる。
なんせどれも聞いた事のないスキルで、しかも毒まみれだからね。危険度半端ない。
一通り説明した後のおっさんの台詞がこれだ。
「うわっ、マジ暗殺者じゃん……」
「言うな変質者」
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