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第一章 毒娘、冒険者になる
17:変質者による面談がやっと終わりました
しおりを挟む私の職に関する説明は一応終わったわけだが、アロークのおっさんは渋い顔をして「うーん」と唸っている。
どうした? 老後の備えの事でも考えているのか? 老い先短い人生だし。
と思っていたらそうじゃないらしい。顔を上げて私に問いかける。
「お前これスキル全部? ホントに?」
「ホントだけど何か?」
「回避系のスキルないの? なくってアレとかありえなくね? 敏捷高いだけじゃ済まされないんだけど」
あー、ただの敏捷高いだけの十歳女子じゃ無理な回避に見えたって事か。遠目で監視してたらしいし。
そこはPSだから説明しようがないんだよなぁ。
「天才的な回避能力とでも報告しといてよ」
「えぇー」
「だって見てたら分かるでしょ? スキル使うのに発声とかしてないじゃん」
「常時発動型かもしれんだろうが」
「常時発動の回避スキルとか……そういう普通のが欲しかったのに……」
私のスキルはどれもこれも毒まみれなのだ……。
回避系のスキルとか攻撃スキルとか、それをこそ求めていたんだけど。
いや、本当に求めていたのはスローライフ用の【村人】関係なんだけど。料理とか。
「いや全然普通じゃないんだけど……あー、まぁいいや。ともかくその反応見るにホントに持ってなさそうだ。お前の回避能力は天性のものってしとくわ」
「実際そうだしね」
「で、スキルについては自分である程度把握してて調べながら慎重に使ってると。無暗に使わないでくれて助かるよ」
「怖いからね」
「そうだ。職の力ってのは怖い。十歳でそう思えるヤツが少ないんだよなー。ま、お前は大丈夫そうだが」
アルスだけってわけじゃないけど、やっぱ十歳ってガキっぽいのが多いんだよね。神殿で見てたら結構いたよ。
普通の【剣士】とかになっても「剣使えるぜー」って魔物に特攻とかしそうなんだよね。
力に溺れるって言うか、驕るって言うか。
ポットさんも言ってたけど、そのせいで新人の死亡率が高いって話だし。
まぁ冒険者に憧れてて急に戦えるってなれば、イキるのも分かる気がするが。
「一応言っておくけどお前のスキルは絶対に街中で使うなよ? 緊急時には<麻痺毒>だけにしとけ」
「いや、<麻痺毒>もまだ使った事ないから、どんなもんか分からないんだけど」
「<麻痺毒>ってくらいだから錬金薬の麻痺薬とか、マタンゴの麻痺胞子とかと同じじゃねーか? どっちにしろ相手が死ぬような代物じゃねえよ」
「麻痺+<衰弱毒>かもしれないよ?」
「その時はお前の持ってる解毒ポーション飲ませればいいだろ。そうすりゃ<衰弱毒>ってのは消えるだろうし」
「それで麻痺まで解けたら? 一応<麻痺毒>って名前になってるくらいだし、解毒が効くかもしれないじゃん」
「…………」
無言になる。私も無言で考える。
スキル考察が二人で出来る今の環境は地味にありがたい。相手が変質者だけど。
でもこうして未知の職、未知のスキルに関する助言なんかをするのも、職管理局の仕事らしいからね。
利用出来るところは存分に利用しましょう。
とは言え、二人で考えても答えなんて出ないもんは出ない。
「まぁどっちにしろ街中でスキルは使うつもりないから。明日にでもゴブリンで試してみるよ」
「……だな」
「で、おっさん毒に詳しいの? どんな毒があるのか教えてくれない?」
「おっさんじゃねーし。それはアレか? 自分が今後どんな毒を使うようになるのか、って話か?」
「そうそう」
私が持ってる『毒』のイメージはまんま<衰弱毒>の事なんだよね。
その<衰弱毒>も若干イメージと違ったんだけど。時間経過で解けないとか。
ところが<麻痺毒>なるものが出て来た。という事は『麻痺』も毒扱いだと。
こうなると今後スキルを上げたら何が出て来るのか分からないんだよ。
状態異常系がまとめて『毒』扱いになってるかもしれないし、それこそ即死級の『毒』があるかもしれない。
今後の私の危険度が増すばかりなんです。
「うーん、アドバイスするのは俺の務めなんだけど、正直お前の使う『毒』が未知すぎるんだよなぁ」
おっさんは頭をボリボリ掻きながら、それでも役人らしくアドバイスするつもりはあるらしい。
「俺の知ってる既存の『毒』ってのは大きく三つあってさ、【錬金術による錬金薬の毒薬】【蛇系の魔物とかが使う魔物毒】【自然界にある毒草とかの自然毒】の三つだ」
「うんうん」
「で、お前はそのどれもが使える可能性があるし、どれでもない毒を使う可能性もある」
「あー」
「ちなみに<衰弱毒>ってのは錬金薬の『毒薬』と似てるな。ただあれもランクによって効果が違う。お前のは10の固定ダメージが一定間隔で入るっつったろ? それが20とか30とかになる感じだな。ただし時間経過で毒は消えるが」
時間で毒が消えるのはともかく、いいなーそれ。私の<衰弱毒>も強力になったりするんだろうか。
そうすればワイバーンであんなに時間かけなくても済んだのに。
「レベルが上がればいけるのかな? それとも魔法扱いなら魔力をたくさん込めれば威力が上がるとか?」
「多分無理だぞ。<毒弾>って【スキル】だろ? 【魔法】じゃなくて」
「そうだけど?」
「これが例えば<毒魔法>ってスキルの<毒弾>って魔法なら可能性はある。でもスキルとしての<毒弾>であれば魔力量による威力の変化は考えづらいな」
例を挙げると、【魔法使い】の持ってる<火魔法>ってスキルの中に<火弾>って魔法がある。
<火弾>の威力は使用者の魔力によって変わるらしい。
でも魔力を籠めようがスキルである<火魔法>自体は何も変わらない。
同じように【剣士】の持ってる<剣術>ってスキルの中に<スラッシュ>ってアーツがあるけど、これも個人差で<スラッシュ>の威力に差があっても<剣術>自体が上手くなるわけじゃない。
<剣術>レベルが低くても技量や経験があれば職業レベルが上の人にも勝てるかもしれない、って事らしい。
それは<剣術>は『剣が扱えるようになるスキル』であって技量を上げるものではないから。
レベルを上げても技量が上がるわけじゃなくアーツが増えるのみ。<剣術>自体に個人差は出ない。
つまり【スキル】に差は出ないけど、その中の【魔法】【アーツ】に個人差は出ると。うーん難しい。
「錬金薬とか自然毒にも即死系の毒がある。『麻痺』が毒扱いだってんなら『石化』や『精神異常』系の状態異常とかもな。お前がそれを覚えるのか知らんが、だからこそお前が危険視される要因でもある。スキルを試すにしても場所を考えるんだな。生物に効くって話だったから魔物だけじゃなくて人にも効くんだろ?」
「うん、私が毒った」
「ブフーッ! アハハハ!」
「笑い事じゃないよ! 死ぬとこだったんだから!」
どうやら見張りについたのは最近らしく、六日前の自爆の件は知らなかったらしい。
私が「<衰弱毒>は生物のみ効くらしい」って説明したから人にも効くって思っただけか。
【毒殺屋】の私が自分の毒で死にそうになったのを腹抱えて笑ってやがる、このおっさん。
「あー面白え。だからあんなに初級解毒ポーション持ってたのか」
「うー」
「でも麻痺は解毒ポーションじゃ治らないと思うぞ? 抗麻痺薬持ってたほうがいいんじゃねーか?」
「そうなの?」
おっさんが言うには麻痺はそもそも世間的に『毒』とは見なしておらず、治すには麻痺専用の薬『抗麻痺薬』ってのが必要らしい。買いましょう。
ただ麻痺った状態で飲むのは不可能なので、普通はパーティーメンバーに飲ませてもらうものなのだとか。
えっ、私ソロなんだけど?
「そもそもお前の<麻痺毒>が俺らの言うところの『麻痺』と同じかどうかも分からねえ。毒って付くならホントに解毒ポーションで治るのかもしれねえ」
「どっちにしろ検証するつもりだよ」
「冗談じゃなく自分で試すのはやめとけよ? <麻痺毒>が<衰弱毒>と同じように永続効果ならマジで動けなくて死ぬぞ?」
そう言われると試しづらいんだよなぁ。
口に薬を含んだまま試すってのは?
……麻痺ったら飲みこむ事すら出来ないかもしれない。危険だ。
「ま、そんなわけで俺はちょくちょく調査っつーか聞き取りっつーか、報告のために会いにくるからよ。承知しといてくれ」
「えー」
「いや、俺だってめんどいよ? お前が物騒な職なのが悪い。これで『私、暗殺者になります!』とか言ってくれると逆に有り難いんだが」
「絶対イヤ」
「だよなー。だからまぁ諦めろ」
こうしてアロークとか言う変質者のおっさんは部屋を出て行った。
あー、なんか疲れたなー。ワイバーンと戦った直後に来なくてもいいのに。
……とりあえず抗麻痺薬だけ買いに行っとこう。
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(7/15追記
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