ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

文字の大きさ
21 / 171
第一章 毒娘、冒険者になる

18:ワイバーンがくれたものはお金だけじゃないんです

しおりを挟む


 ワイバーンと変質者に会った翌日。
 いつものように出掛けようと宿の入口に行くと、受付で座っていたシェラちゃんの表情が曇っていた。


「おはよーシェラちゃん、どうしたの?」

「あ、おねーさんおはよーです。あーえーっと、何でもないです」


 そんないかにも「何かあります」って顔されてもなぁ。
 お母さんにでも怒られたのかな?
 しっかり者のシェラちゃんが怒られるイメージないけど。

 ……もしかしてもう月のモノ!?
 八歳でもシェラちゃんならばありうる……!


「……やっぱ、帰ってきたらおねーさんに相談あるです。ちょっと聞いてほしいです」

「ん? まぁ分かったよ。とりあえず行ってくるね」

「はい、いってらっしゃいです!」


 少し元気になったシェラちゃんに見送られ宿を出た。
 私に相談するくらいで解決するんならまぁいいか。聞くだけ聞きましょう。
 月のモノに関するアドバイスも前世知識でサポート出来るだろう。


 その後、いつもの道具屋でおばちゃんから抗麻痺薬を買う。
 五個で銀貨三枚(約三千円)。高いのか安いのか……。


「まぁた初心者らしからぬ物を……」

「念の為です」


 適当に濁しつつ、冒険者ギルドへ。
 いつものようにウサギと毒草採取の依頼を受け、いざ街外。





「あー、<毒感知>の反応が全然違うわー」


 森へと向かう時から使い始めた<毒感知>が昨日までの反応とは違う。
 ワイバーンを倒した後は疲れてたし、他の人とかも居たからね。試せなかったんだよ。

 Lv1からLv2に上がった時は感知距離が10mから20mに変わっただけだけど、Lv3の今は多分30mの距離に加えて、いくつか違う反応も混じってる。

 行って確かめるしかあるまい。


「……ん? いつもの毒草と違う? これも毒草なのかな?」


 近づいてみると、いつも採取している毒草の他にも何種類かの草花が反応していた。
 感知に色がついてるわけじゃないけど、反応する色が違うというか、感知の感覚が違うというか、とにかく何種類かの草花が別々に感知できる。

 これ、もしかするとポットさんが教えてくれた『毒感知できない毒草』かもしれない。
 こんな見た目だったか覚えてないけど。名前も知らないし。


「とりあえず一種類ずつ持って帰って受付で見て貰おうかな。で、いつもの毒草の反応はっと……」


 ああ、採取ばっかしてるわけにいかないんだ。
 戦闘の前に確かめておかないと。
 まずはLv2になった<毒弾>から……


「うわっ、何これ……あ、選べるのかな?」


 右手のピストルの先に出すボール。それを作る前に一作業入る感覚がある。
 どうやら<毒精製Lv2>で追加された<麻痺毒>と従来の<衰弱毒>が選べるようだ。

 【毒の種類を選ぶ → スキル発声 → ボールを作って発射】って感じかな?

 まずは<麻痺毒>で行ってみましょ。
 <毒弾>だったら今さら自爆はないだろうし、<麻痺毒>がどんなものか見てみたい。


「麻痺で……<毒弾>!……はやっ!」


 出たのは黄色の野球ボール大の<麻痺毒>。ただ速度が今までと全然違う。
 これまでが150km/hの剛速球だとすると、多分200km/hくらいじゃないかと。
 シュン! って感じ。これ近くで撃たれたら私でも避けられないわ。
 これでLv2とか……先が怖くなるね。

 一応、<衰弱毒>の方でも試してみたけど速度は同じ。
 ただ衰弱毒の<毒弾>が消費MP2だったのに対し、麻痺毒の<毒弾>は5だった。
 随分上がるなぁ。まぁ今はMP100以上あるから問題ないけど。
 あ、<毒感知>はLv3になっても消費MP1のままです。使い放題。


「あとは麻痺の効果の検証と……<毒霧>かぁ」


 なんか嫌な予感がするんだよね。<毒霧>って。

 一応、左手に初級解毒ポーションを持ち、右手を前に出す。ピストルではなく手のひらを前に出す感じで。


「<衰弱毒>の……<毒霧>! ……おおおお」


 ブシュウウウウ! って音はしないけど、そんな感じで右手から霧が出る。
 紫色の殺虫剤を噴射してるみたいだ。

 ……三秒くらいかな? 噴射し続けて止まった。
 紫の霧もそれで消えるっぽい。良かった。
 ホントの霧みたいにその場でしばらく残るとか、風下に飛んでくるとか考えてたよ。
 消費MPは……これも5か。


「これ、噴射したまま薙ぎ払えるのかな?」


 <毒弾>が単体攻撃だから<毒霧>は範囲攻撃かも。
 うまくすれば何体かの敵に一発で毒らせるかもね。消費MP考えると三体同時なら<毒霧>のほうがお得なのかな?
 まぁ相手の抵抗値もあるだろうから考えるだけ無駄か。
 高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処しよう。フォ〇ク理論。


「<麻痺毒>バージョンの消費MPも調べたいけど……<麻痺毒>の検証してからにしよう」


 さすがに怖い。万一自分が麻痺ったらマジで終わりそうだ。





 それからゴブリン相手に<麻痺毒>の<毒弾>で何回か試してみた。
 結果、全てのゴブリンが一発で麻痺った。
 やはり抵抗値が低いのか、私の魔力値が上がったせいなのか。

 <衰弱毒>も試したけど100%毒った。
 ワイバーン戦の前だとここまでじゃなかったんだけどね。
 やっぱ魔力値か……運の可能性も微レ存。今『運:24』だし。


 で、麻痺ったゴブリンを放置してみた。

 放置している間に別のゴブリン相手に敏捷アジャスト名目の回避練習を行い、毒草を採取し、お土産用にウサギを狩り、新反応の草花を採取し、またゴブリンを毒殺し、解毒ポーションで<麻痺毒>が治らない事も確認し、麻痺ったゴブリンの口に抗麻痺薬を嫌々つっこんで麻痺が治る事を確認し、ゴブリン相手に<毒霧>の練習をし……

 ……まだ麻痺ってた。

 やっぱ永続なのかもしれん。このゴブリンは放置して明日また見に来よう。


 となると、やっぱ<麻痺毒>の<毒霧>を試すのが怖い。
 誰かそばに居る状態じゃないと使いづらいなぁ。

 ……あっ、おっさん監視してるじゃん!


「おっさーん! 居るー?」


 静かな森には木々のさざめきと風の音が……。

 って、居ないのかよ! 監視はどうした!
 いや、居ても滅多に顔を出しちゃいけない監視員ルールなのか?
 まぁ考えてみれば報告もあるのに四六時中見張るわけないのか。
 はぁ、肝心な時に使えない変質者だ。


「とりあえず今日はこんなもんかな。帰るか」





「これはペルロン草、こちらはツリート草とセセランの花。どれも錬金素材ですね」

「あーこれが……」

「いつもの毒草はネネリ草と言って解毒ポーションの材料になります。こちらは麻痺草や痺れ草、抗麻痺薬や様々な薬の材料になりますね」


 どれもFランクやEランクの依頼ボードで見た名前だ。現物は知らなかったけど。
 そっか、麻痺草とか言われてるのがこの草花だったのか。

 ということは<麻痺毒>が使えるようになったから、その薬に対応した毒草が分かるようになったって事かな?
 まぁギルド的には毒草じゃなくて麻痺草とかなんだろうけど。

 ……つーか、毒草で解毒ポーションが出来てたのか。錬金恐るべし。


 束で持ってきたわけではないので納品して依頼報酬……というわけにはいかず。
 まぁ依頼自体受けてないんですけど。とりあえず持ち帰る事にした。
 明日正式に依頼を受けてその時一緒に納品しよう。


 さて、宿に帰りますか。

 ……あ、そう言えばシェラちゃんがなんか相談がどーのこーの言ってたな。

 ……私未だに月のモノ来てないんだが、ちゃんとアドバイス出来るだろうか。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...