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第一章 毒娘、冒険者になる
28:オーフェンを出発しましたがトラブルは勘弁して下さい
しおりを挟む「ポロリン、王都に行ったら手紙欲しいです。元気で頑張って下さいです。おねーさんも次来た時も泊まっていって下さいです」
「しっかりやりなよポロリン。くれぐれも無茶しないように。ピーゾンちゃん、ポロリンのことお願いね」
シェラちゃんと道具屋のおばちゃんと、そんな別れの挨拶をして私とポロリンはオーフェンの街を出た。
行ってきますと大きく手を振りながら、段々と小さくなっていく二人とオーフェンの街を見る。
村を出た時とは少し違うが、それでも感慨深いものがある。
やっぱりここも良い街だったなーと。また来ようと強く思った。
進路は北。目指すはジオボルト王国・王都セントリオ。
馬車で十日の旅路であり、途中の宿場や街に立ち寄りながらの旅となる。
ガタゴトと揺れる乗り合い馬車。お尻が痛い。
本当はふわふわのクッションでも作ろうかと悩んだけど、さすがに荷物が嵩張るので自重した。
今は野営用の毛布を折り畳みクッション代わりにしている。
「うぅぅ……」
隣を見れば旅立ちの日に涙を流す美少女が座っている。
故郷を離れ、親元を離れ、十歳にして独り立ちを強いられた少女は人目をはばかることなく泣いていた。
……まぁポロリンという少年なんだが。
さすがに私も空気読んで「男なのに泣くな」とは言わんよ。つらいのは分かるしね。
ただ私は馬車が少し苦手なんだよね。
前世の乗り物に比べると乗り心地最悪だし、娯楽もなしに座り続けるのも暇だし。
時々休憩ははさむけど、身体バキバキになるんだよね。
振動で変に身体が強張ってるんだと思う。
下手するとムチ打ちになりかねない。
これに慣れてるんだからこの世界の人たちはすごいなぁと感心するよ。
「お嬢ちゃんたちはスーコッドに行くのかい?」
「はい、それから王都まで行きます」
「はぁ~長旅だねぇ。小さいのに大したもんだ」
乗り合い馬車は十人乗り。みんな暇だから自然と会話も増える。
私とポロリンは二人とも軽装で、持ってる武器もトンファーと鉈だから冒険者とは見られないらしい。
ま、冒険者にしても少女二人で遠出する事は少ないんだろうけど。
……ちなみに本人が否定しない限り、ポロリン=少女と言われても流します。
いちいち正すのめんどくさいんで。
今話しているおばちゃんは王都とオーフェンの間の街、スーコッドに帰る途中だと言う。
この馬車は宿場町を経由しつつスーコッドまで。
そこからサルディの街まで別の乗り合い馬車に乗り、さらに王都まで。
計三回の馬車旅だね。案外かかる。
「体力つける為に歩いて行った方が良かったですかね」
「勘弁してよ、無理」
「王都に着く頃には筋肉ムキムキに……」
「時間かかりすぎるから却下」
ようやく元気になったポロリンがアホな事を言い出す。
さすがに馬車で十日の距離を歩く気にはなれないです。
しかし暇だ。村からオーフェンまでは三日だったからまだマシだったけど、こうも長旅になると娯楽が欲しい。
途中で寄る街とかも見るだけで十分新鮮な気持ちにはなるが、それだけに「また馬車に乗るのか」と億劫になる。
やはりゲームを開発せねばなるまい。
今こそ前世知識チートを使うべきではなかろうか。
ちなみに『じゃんけん』めいたものや、『しりとり』『あっちむいてホイ』的なものはすでにある。
何かないかと考えて、まずは手持ちの道具で出来る『あやとり』をやってみた。
……しかし私がよく覚えていなかった。
一人あやとり、どうやるんだっけ? いや二人のも覚えてない。
ならば何か作るか。やっぱトランプ……五三枚も作るの無理でしょ。
となればリバーシか……馬車の中で打てるもんなんだろうか。
とりあえず紙か何かで作ってみようかな。
そんな事をしつつ、馬車旅は続いた。
♦
九日後。
私たちはサルディと王都セントリオの中間にある宿場町までやって来た。
やっとここまで来られたかと感慨深い。
ここまでの旅路、全部乗り合い馬車で来たけど、魔物とは全く戦っていない。
たまに現れる魔物にしても護衛についている冒険者が戦うからだ。
まぁ危なくなったら戦うつもりでいたけど、私たちの戦い方って特殊だからね。あんま見せたくないんだよ。
とは言え休憩時間とかに身体をほぐす目的でポロリンと模擬戦めいた事もしてたんだけど。
護衛の冒険者がちらりと見てヒソヒソ話してたのが気になる。
途中のスーコッドの街もサルディの街も、至って普通の街だった。
もちろんファストン村より立派なんだけど、オーフェンの方がずいぶんと大きいらしい。
あれか、都市と街の違いか。となると王都はどのようなものか気になるところです。
野営も全くしていない。
街と街をつなぐ街道沿い、馬車で行くとちょうどいい位置に宿場町があるからだ。
これが徒歩の旅路だったら野営があったんだろうけど、馬車の場合は宿場町に泊まるのが基本。
宿場町と言っても宿と食堂しかないような場所だ。町とも呼べない。村以下。
それでも泊まる場所がちゃんとしているのは有り難い。
その日も最後の宿場町で寝る。ベッドなんてない。大部屋で毛布に包まって寝るだけだ。
個室なんてリッチな真似はしないよ。
宿場町で個室なんて貴族とか大商人とか高ランク冒険者みたいな人じゃないとムリだよ。街より割高なんだから。
そんなわけで背嚢を抱え、ポロリンの隣で眠る。おやすミルク。
♦
おはようございマンモス。
えー、私今どうなってるんでしょう?
両手は後ろで縛られている。足も。猿轡まで。
んで、麻袋みたいのに入れられてるのかな……?
……拉致られてね?
あれ、これ、ヤバくね?
宿場町の大部屋で寝た → 拉致られた
ありえるの!? まじで!?
いやいや、とりあえず落ち着こう。私多分【毒殺屋】になった時よりテンパってる。
寝かされてるのはゴツゴツした……岩場?
とりあえず宿場町じゃない。どこかに運ばれたんだ。
なんで私を? ……ハッ! かわいい少女だからか! つまり敵はロリコンか!
いかん! 私よりポロリンの方がかわいい! ポロリン貞操の危機!
ロリコンに教えてあげないと! かわいく見えるだろ? そいつ男子なんだぜって!
……全然落ち着いてなかった。もうマジで落ち着いた。
耳を澄ませば離れたところから話し声が聞こえてきた。
「臨時収入だったな。二匹追加だ」
「バカ。あれが固有職かどうかまだ分かんねーだろ」
「いや『職決め』終わったこの時期に王都に向かうガキなんて固有職に違いねえって。保護者付きで旅してるならともかくな」
「はぁ、まあ違ったら売り払えばいいか。とりあえず明日にゃ本隊と合流だ。もうこれ以上増やさねえぞ」
「はいはい」
うわぁ……。固有職狙いか。
という事はポロリンもいるはずだ。それと″追加″って事は他にもいるのか。
そんな希少価値高いのか、固有職。
奴隷商にでも高く売るつもりかねぇ。
さて、どうするべきか……。
猿轡をされたままではスキルが使えない。発声できないからね。
鉈は……腰から消えてるわ。とられたか。
まぁこんな事もあろうかと極小ナイフを隠し持ってたんだけどね。ふっふっふ。
私の安全第一主義に慄くといいわ!
危険な世界で危険な冒険者やるからには必要以上の想定が安全を生むのだよ!
さあまずは手首の紐を切りましょう!
……あれ? 切るの結構むずいな、これ。
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