50 / 171
第二章 毒娘、王都デビューする
42:色々と言いたい事はありますが三人目に決まりました
しおりを挟む「あ、生活魔法! やったねピーゾンさん! パーティーに一人居ると助かるよ!」
「うん……そうだね」
「ん? どうしたの、ピーゾンさん。そんな険しい顔して……」
「いや……おっさん、この<空間魔法>って……」
「おっさんじゃねーけど、その<空間魔法>ってのが未知の魔法属性なんだよ。これが『ニート』ってやつと関係するのか、どんな属性なのかも分からねえ。<念力>の方も未知のスキルだしな。だから危険度が測れねえんだ」
まずはネルトに色々と聞いて、スキルの詳細を知ろう。
私的には驚きと興奮がある一方で、限りなく嫌な予感しかしないのだが……。
<念力>も気になるけど、やはり<空間魔法>が異質。しかもおっさんが知らないと言う。
じゃあ『魔法の鞄』は<空間魔法>を使っていないのか、という話だ。
あれ絶対『空間拡張』でしょう。それとも別の魔法かスキルなのか?
あとで聞いてみたけどどうやら秘匿情報らしくて答えは出ないんだけど。
ともかく<空間魔法>というのが私の想像するような魔法属性だとすると厄介極まりない。
確認と検証をしつつ調べていったほうがいいだろう。
もちろん使い方を間違えなければ私たちにとって有意義なのは確かなんだし。
メインディッシュの前に前菜から。この前菜も怪しいけど。
「ネルト、ちょっと教えて欲しいんだけどさ、まず<念力>ってどんなの?」
「んー、遠くのものが取れる」
「こっちで確かめた限り『手の届かない所にあるものを動かせる』スキルらしい。武器くらいなら動かせるが、家具くらいだと無理だったな。それと視認してないと無理っぽい」
本人も管理局もそれくらいしか把握できてないって事か。
動かずに物をとれるってのは確かにNEETっぽいとも思う。
これに加えて<空間魔法>となると、もうほぼ【NEETの魔女】で確定だろう。
<生活魔法>とかも言ってみれば『働かずに生活できる魔法』なわけだし。
ただ私は怪しんでる。この<念力>というスキルもヤバイと。
「じゃあ立てかけた私の魔剣を私の手元に持ってこれる? ……なるほど。今どんなイメージしてた? 魔剣に動けって命令したの? それとも魔剣を操作する感じ? それとも自分で持つような感じ? 重さは感じる? 消費魔力は?」
「お前、聞き方が……管理局とか学校の専属教師が調べるよりプロっぽいぞ」
「ピーゾンさん、ボクの時もああでしたよ、アハハ……」
なるほど。<念力>については大体分かった。
要は『ネルトが持てる・動かせると判断したもの』しか動かせず、それは『不可視の魔力の大きな手』で行われている。
その手で魔剣を持ち上げ、私の所まで運んだわけだ。
これはネルトの『動かす』イメージが具現化したからだろう。『手で持って動かす』と。
だから見えない所にあるものや、ネルトが一人じゃ動かせないような家具は<念力>の対象外となる。イメージができないから。
……じゃあイメージできたら?
人が持てないような物を持てるイメージができてしまったら?
イメージによるスキルや魔法の変化というのは少なからず存在する。
分かりやすいのは魔力消費量に対する魔法威力の個人差だ。
あれも自分の意思で魔法を弄っているのと同じでしょう。
おっさんは「スキルに変化を加える事は出来ない」みたいな事を言ってたけど私は少し違うと思っている。
スキルに関しても細かい所ではあるが、例えば私の場合<毒弾>で作るボールの形状を多少変える事が出来たり、ポロリンの<呼び込み>を特定方向に指定したりといった事が確認出来ている。
まぁ私が色々と実験した結果であって、それが出来たからすごく便利になるというわけでもないんだが。
ともかくそういう事も考えられる以上、やっぱりこのスキルは、ただ『手の届かない所にあるものを動かせる』スキルではないと思う。
おっさんも管理局も検証が甘い。
過去の固有職の実例に基づいて検証しているんだと思うけど頭が固い。
……いや、前世知識を持っている私が柔らかすぎるんだとも思うけどね。
ま、ともかくそれは実際に試してみるしかない。明日にでも外で実験してみましょう。
<念力>はそれでいいとして本題は次だ。メインディッシュ。
「んじゃ次に<空間魔法>の<グリッド>だけど、今この場で使える? 使ったらどんな感じ?」
「んー……四角が出る」
「それは布みたいな平面? それとも箱みたいな立体?」
「箱」
「大きさは? その大きさ変えられる? その時の消費魔力は? 箱を動かせる? 複数の箱は出せる? 隣の部屋に出せる? その様子は?」
「ピーゾンさん……」
「おい、お前のパーティーリーダーだろ、なんとかしろ」
「無理ですよぉ、検証モードに入ってるし……」
「はぁ、<グリッド>って俺らが調べた限り、何の意味もない魔法だったんだよなぁ。ネルトが透明の箱を作ってそれで終わりっていう」
「そうなんですか? でもピーゾンさん、納得してないっぽいですね」
ふぅ、なるほど。大体分かった。
最初に「箱が出る」と聞いた時は、<グリッド>って『格子状の空間指定』だと思ってたけど違うらしい。
正しくは『指定した格子空間の認識』だね。想像よりだいぶ上だ。
ネルトは<グリッド>を使う事で最大2m四方の格子空間が見えるらしい。それは透明の箱。
肝心なポイントは二つ。
一つは『透過する』という事。壁を無視して、その箱を移動できる。
つまり『視認できない空間を指定できる』ということ。
もう一つは『その空間にあるものを認識できる』ということ。これはスゴイ。
距離的制限はあるものの、認識外の空間を五感認識できる能力だってわけだ。
隣の部屋の人がどんな風貌でどんな事をしているのか分かる。匂いや温度も分かる。ヤバイ。逮捕案件だ。
ついでに言えば<念力>と併用できるんじゃないか。
そうなると<念力>が『視界外の物も動かせる』となる。ますますヤバイ。
鍵付きの扉も内鍵があればそれを開けて入れるという窃盗御用達スキルになる。
<グリッド>だけでもヤバイんだが、これ<空間魔法>だからね。
今後覚えるであろう魔法がこれ以上にヤバイ気がしてしょうがない。
まぁ私の想像通りにいけばの話で、仮にそうなったらパーティーメンバーである私たち的にはとても美味しいんだが。
とりあえずおっさんに相談しようか。
「……は? 何それ<念力>と<グリッド>ってそんなんなのか!? 俺とか管理局の考えとだいぶ違うんだが!?」
「私の予想も入ってるから実践検証してみての様子だけどね。ただ<念力>はともかく<空間魔法>はヤバイ。レベル1の<グリッド>でさえ本職の【斥候職】顔負けの感知能力だよ。まぁ距離とか燃費とかの問題はあるけど」
「ああ、それがホントなら報告し直しだなぁ……ただ危険度は変わらないか。お前みたいに殺すような能力じゃないし」
「いやいや、私以上に危険な可能性があるよ。私が思うに<空間魔法>って――」
これ私に前世知識があるから<空間魔法>のイメージが出来るってだけなんだけど、この世界の人には想像できないだろうしなぁ。
言いたくはないんだけど、言っておかないと本当に危険な事態になるからね。
少なくとも管理局のおっさんには把握しておいてもらわないと。
……<無限収納>と<転移>の可能性を。
これがもし発現してネルトが悪者に利用されたら国なんて終わるでしょ。
もしくはその能力が魔装具に付与されようものなら、誰でも<転移>出来てしまう。
「…………お前、何の物語読んだらそんな想像力豊かになんの?」
「茶化すんじゃないよ。私は真面目に言ってんの」
「はぁ……まぁ分かったよ、お前の言い分は。真偽はともかく確かにそう言われれば<空間魔法>だもんな。可能性もなくはない。レベルアップ次第だけどな」
「本当に分かってる? 私以上にネルトを守りなさいって事だよ? 監視・警戒は任せるからね」
「四六時中は無理だっての。あああー俺の仕事が増えるじゃねーかよー」
本当なら冒険者なんかにせず、それこそ管理局で籠の鳥にするのが一番安全なんだろうけどね。私もそれは嫌だし。
おっさんもそれは分かってるんだろうけど、なんだかんだで自由にさせてくれているんだろう。
ま、その分おっさんの仕事は増えるんだろうけど……変質者だからいっか。
当のネルト本人は事態の深刻さを理解していない様子で、未だに私のウサミミをモフっている。よく飽きないね。
「じゃあネルト、改めて私たちとパーティー組んで冒険者になるってことでいいかな?」
「ん。よろしく」
「よろしくね、ネルトさん!」
「よし、じゃあ三人部屋を取り直して、少し遅くなったけど夕食はいっぱい食べますか」
「ん!」
「おお、歓迎会ですね!」
そうしてネルトを正式に仲間に加えた私たちは、荷物を持って部屋を出た。
扉のところで振り向き
「おっさん、さっさと帰りなよ。二度と部屋に来るんじゃないわよ」
「おっさんじゃねーし、酷くね? 一緒に歓迎会しようだとか、仕事増やしてごめんねとか、またよろしくねオヤスミ的な――
……パタン
――こう、ほら……扱いがさぁ……」
6
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる