ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~

藤原キリオ

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第二章 毒娘、王都デビューする

閑話10:とあるモブAの目撃Ⅱ

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■モブエイ 【スカウト】 26歳


 俺の名前はモブエイ。オーフェン所属のCランク【スカウト】だ。
 今日は商人の護衛依頼で王都までやって来た。なかなかの道のりだったな。

 ギルドの奴らから「王都に行くならポロリンの様子を見て来てくれ」と頼まれたんだが会えるのか分からん。
 あいつらも本格的に冒険者として活動してるだろうしな。
 ま、俺も気になるところではあるから探りくらいは入れるつもりだ。


 ようやく王都について商人と別れる。
 さぁギルドに向かって報告しようかという所で、後ろから走って来る冒険者パーティーが居た。
 とても慌てていて何やら様子がおかしい。


「どうした! 何かあったのか!」

「あ、あんたら冒険者だよな! 助けてくれ! レ、レイナが!」


 すがりつくように説明してくる冒険者たち。
 聞けば彼らはDランクパーティーで、森でオークの群れに遭遇、集団戦の最中にパーティーの女が連れ去られたと言う。

 それはマズイ! それはつまり群れの住処があるという事だ。
 規模は分からないが、そこで苗床にでもされればオークは益々繁殖する。
 一気に群れの規模が広がるぞ。

 まださほど時間は経ってないと言う。今から急いで向かえば女を救出できるかもしれない。
 本来ならギルドに報告すべき案件だろう。しかし事は一刻を争う。
 俺たちはギルドへと向かう足を逆に、南門から走り出た。





 彼らが襲われた地点から足跡を辿り、森が拓けたところに出る。
 そこはまさしくオークの集落。なんて規模だ。すでに『村』が出来上がっている。
 これは俺たちだけでは対処できないかもしれない。
 少なくともBランクパーティーでなければ……。

 ……そう思ったが何やら様子がおかしい。

 オークが一体も居ないのだ。
 訝し気に遠目で様子を伺うと……居た。
 いや、居たと言うか、とんでもない数のオークが……オークの死体がまとめられている。


 そしてその傍で焚火をしながら、肉を頬張る女子が三人……ん?


「お、おい、あれポロリンじゃ……」
「めちゃめちゃ可愛くなってんぞ……」
「エロイ、いや、何て言うか……エロイ」
「あのウサギ……もしかして毒草鉈娘か?」
「ああ! 確かにあの顔! しかし鉈が巨大化してる……?」


 なんかもう訳が分からなくなった。
 やつらが少し見ないうちにパワーアップしてる。容姿的に。

 そして三人目のパーティーメンバーなのか黒猫も居た。ひたすら食ってる。


 なによりオークの死体が山盛りの中で、焼き肉を食べているという蛮族っぷり。
 こいつら本当にもう、意味分かんない。


 そんな俺たちを余所に、俺たちを連れて来たパーティーは仲間の女性を見つけたらしい。
 ああ、毒草鉈娘たちの近くで寝ているのがそうなのか。
 彼らはすぐさま駆け寄る。俺たちも歩きで後を追った。


「レ、レイナ! 大丈夫か!」
「う、うぅん……こ、ここは……はっ! オークは!?」
「良かった! 無事だったか!」


 声を掛けたそのタイミングで女は目覚めたらしい。
 どうやら無事だったみたいだな。状況を見るに毒草鉈娘……いや鉈ウサギたちが助けたみたいだ。

 抱き合って泣きあうそのパーティーを横目に、鉈ウサギたちは焼き肉を食う手を止めない。蛮族か。


「もぐもぐ、あーその女の人のパーティーの人? 良かった良かった」

「ウ、ウサギ!? あ、いや、すまん。レイナを助けてくれたのか。ありがとう、恩に着る!」

「えっ? あ、貴女たちに助けてもらったの!? えっと、ありがとう」


 あいつらも鉈ウサギの風貌にどう感謝していいのか分からないみたいだ。
 ポロリンはその隣で苦笑いしている。黒猫は食ってる。


「あれ? あなたたちは……ワイバーンの時の? 王都に来たんですか?」

「あ、オーフェンの! うちのお店にも来てくれましたよね?」


 鉈ウサギとポロリンが俺たちに気付いたらしい。
 ポロリンに知られていた事にパーティーメンバーが照れている。
 間近で見るとなんかスゴイな、スゴイエロイ。

 ……本当にチ〇コついてんだよな?

 俺たちはここまでの経緯を説明した。
 それと同時に連れて来たパーティーが「お礼を」と言い出す。
 そりゃそうだろう。レイナって女は死ぬより辛い目にあう所だったんだ。全財産渡したっていいくらいだ。

 しかし鉈ウサギは、お礼はいらないと言う。肉を食いながら。
 しばらくの問答の末……


「んじゃ、解体手伝って下さいよ。あとオーク持って帰るの手伝って下さい。持って帰れなくて処分しようかって考えてたんで」

「あ、ああ、それくらい手伝わせてもらうさ」

「あ、これ食べます? 腕一本分焼いたんですけど量が多すぎてさすがに食べられないんで」

「……腕ってオークのか?」

「いや、多分オークキング。もぐもぐ。超美味いですよ」


 オ、オークキング殺ったのか!
 いや、鉈ウサギならワイバーン殺ってるし不思議じゃないが、この量のオークに加えてオークキングだと!?

 それにお前、オークキングの肉ってすごい高級食材だからな!?
 適当に焼き肉にして食うもんじゃないからな!?
 えっ、いや、もらうけど! 食いたいけど!


 それから総出でオークを解体し、持ってた麻袋に詰め込んだ。全員が大きな袋を背負ってる状態だ。
 それでも入りきらなかったオークも居て、さすがに焼却した。
 黒猫が恨めしそうにその炎を見ていたのが印象的だった。


 そのまま王都へとまっすぐ帰還する。
 歩く中で俺たちはポロリンを少し探ってみた。
 色々とパワーアップしすぎだしな。


 どうやらウサギとか猫とか武術着は、全部魔装具らしい。それにはかなり驚いた。
 俺たちはCランクだが魔装具なんて何も持ってない。新人が持ってていいもんじゃないってな。

 聞けば売れ残りをかなり安くしてもらったのと、ワイバーン資金でどうにかしたらしい。
 あーあのワイバーン無傷だったし高かったんだろうなぁ……。


 それと鉈ウサギの鉈が巨大化してる件については苦笑いで返された。
 どうやら答えられない何かがあったらしい。

 ギルドで荷物を引き渡し、俺たちは早々に別れた。
 助けられた冒険者パーティーは、俺たちにも何かお礼をって言ってきたが……まぁ貰えないよな。
 あいつらの荷運びしかしてないし。礼ならオークキングの肉食わせてもらったし。


 報告窓口や買い取り窓口では相変わらず騒がれている。あいつらオーフェンでもそうだったからな。
 同じオーフェン出身者としては仲間が出世したみたいで嬉しくもあった。


 その後、俺たちパーティーはギルド内の酒場で飲み食いしつつ、近くの冒険者に聞き込みしてみた。
 やつらの事がどの程度知られているのか気になったんだ。

 オーフェンじゃあるまいしこれだけ人の多い王都で有名って事はないだろうとは思ってる。
 いくら目立つ風貌してるって言っても新人なわけだし、まぁダメ元の興味本位だな。


「ああ、あのウサギ達だろ? もちろん知ってるよ、最近じゃ有名人だ」

「【輝く礁域グロウラグーン】だよな。固有職ユニークジョブ三人でみんな美少女とか珍しいよな」

「なんで知ってるのかって? そりゃ【唯一絶対ザ・ワン】が勧誘してたからなぁ。それを喧嘩腰に断っててさ、あいつら大物だぜ」

「ウサギだけでも目立つってのに黒猫まで入ったからな。そりゃ話の種になるってもんさ。でも一番は武術着のコだな! あのコがダントツでかわいい!」

「あいつら毎日毎日とんでもない数を狩ってくるんだ。休むってことを知らねえ」

「新人って嘘だろ。少女に見えるだけでさ、絶対ベテランだって」

「えっ、ポロリンちゃんが男だって? ははははっ! 嘘つくんならもっとマシな嘘つけよ!」


 ……なんかもう王都の冒険者なんだなって。

 認められてると言うか認知されてると言うか……まぁ元気そうで何よりだよ。

 さっさとオーフェンに帰って土産話にしよう。


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