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第三章 毒娘、色々と出会う
58:常連ですがファンシーショップに三度訪れます
しおりを挟むギルドマスター室を出た私たちは一階へと階段を下りながら話す。
「依頼は二日後だから遠征は無理だね。どうしよっか」
「急にぽっかり空いちゃいましたね」
「訓練?」
予定が空いたら訓練とか、ネルトも染まって来たなぁ。正直、先導してる私でも異常だと思うよ。
でも、訓練かぁ……訓練もいいんだけどせっかくだから……。
「今日は訓練とかなしでお休みにしよっか」
「あー、たまにはいいですねぇ」
「ん。食べ歩く」
「食べ歩きね。オッケー。あ、あと私もちょっと行きたいとこあるんだ」
「行きたいとこ?」
「ほら、前から言ってたじゃない? 売りたいものがあるって」
「あぁ、あのゲームですか」
オーフェンから王都セントリオまでの長い馬車旅で、暇すぎたからゲームを作ろうかと一人奮闘していた。
ポロリンにも聞いて、この世界にどんなゲームがあるかってリサーチもした。
そうしたら、どうも『ウォーボード』とかいうチェスのようなものはあるらしい。でもほとんど貴族限定。
庶民に娯楽なんてものはない。音楽とか賭博とかはあるっぽいんだけどね。
んで、結局リバーシだろうと。途中の宿とかでちまちま作って、実際にポロリンと遊んでたんだよね。
意外と好評だったので調子にのって、将棋めいたものや、ダイヤモンドゲームめいたものも作ってみた。
駒はお手製だから紙だったけどね。
で、それを商業ギルドに持って行ってアイデアだけを売るってのは可能なのか。この世界に特許とかライセンスとかあるのか。そこら辺が知りたいんだよ。
ポロリンの実家の道具屋も冒険者向けの卸売だけっぽかったしそこら辺は詳しくない。商会とは違うと。
「だから商業ギルドに行ってみようかなってさ」
「うーん、だったらそこら辺に詳しい商人さんに聞いてみた方がいいんじゃないですか? いきなり商業ギルド行ってもボクらだけじゃ嘗められそうですし」
「あー。でも詳しい商人さんの知り合いなんて……」
「いるじゃないですか。自分のデザインを実際に売り出してる【上級魔装技師】の人が」
「ああ! マリリンさんか!」
「そうですよ。あの人なら相談に乗ってくれるんじゃないですか? ついでに装備を見てもいいですし」
「もふもふ」
「そうだね! じゃあ行ってみようか! あ、宿に行ってゲーム取って来るわ」
いやぁポロリン助かるわ。道具屋の息子(?)とは言え十歳とは思えないよ。
確かにオークキング資金もあるし、装備を見るのもいいかもしれないね。
あ、ついでにマリリンさんに相談したい装備もあるから、その原案も持って来ないと。
♦
そうしてやってきましたファンシーショップ・マリリン。
「あらぁ~、ピーちゃんたちじゃな~い。いらっしゃ~い」
三回目の訪問にしてピーちゃん、ポロちゃん、ネルちゃん扱いになったらしい。
マリリンさんは相変わらず筋骨隆々褐色肌の肉体に羊角をつけた白アフロを乗せ、身体をくねらせている。
もう慣れたけどインパクトのあるオネエだ。
ネルトは店に入るなりモフモフコーナーへ一直線。
じゃあ先に装備を見ようかと見て回る。
「おかげさまで最近はお客さんがチラホラ入るのよ~。ピーちゃんたちのおかげだわ~」
「おっ、やっとファンシーに目が向けられる時代が来ましたか」
「うふふ、すぐそこまで来てるわよ~。まぁ相変わらず、なぜかあたしが声をかけると逃げちゃう娘が多いんだけどね~」
「(それはしょうがないと思います)」
「これもピーちゃんたちの活躍のおかげだわ~」
活躍って……オークキングとかの噂が流れてるんだろうか。まさか昨日の一件も?
商人の情報網ってあなどれないんだよねぇ。
この世界、メディアがないから噂話の勢いが強いんだよ。
ま、これでファンシー人気が出て、なおかつ安くしてもらえるんなら言う事なし。
「それでどんな装備をお探しかしら~?」
「すぐに買うってわけじゃないんですけど――」
と前置きしてから相談する。
装備品で欲しいのは、私の服装備、ポロリンは靴、ネルトは靴と服。
とりあえずはこんなとこかな、と。他にもあるけど優先するのはね。
「ネルトの靴は私みたいなモフモフが良いんでしょうけど、ポロリンの靴はちゃんとしたグリーブって言うか金属の入ったブーツとかが良いんですよね。蹴り技使うんで。あと服はこんな感じのないかなーと」
そう言って私はお絵かきレベルのデッサンをしたメモを見せる。
上は白のブラウス。前留めボタンの脇と襟とかにフリルがついてるやつ。
あとタータンチェックのプリーツスカート。スクール系だね。
私のウサウサケープやネルトのネコネコローブは結局羽織る感じだから、インナーのダサい村人ファッションが丸見えなんだよ。
だからそこを一新してちゃんとした装備にならないもんかと。
どうせだったらファンシー同志であるマリリンさんに相談して可愛いものにしたいと。
んで、私のケープにもネルトのローブにも合いそうな物を色々と描いた結果がスクール系なのです。
ちなみに私のはピンクが基調のタータンチェック、ネルト用のはグレーを基調のタータンチェックにしてます。
デザインは同じだけど配色が違う。というかデザインは統一させた方が作る方が楽だろうと。
プリーツスカートとかこの世界にないと思うしね。
「んなっ! なんなのこれはっ! 素晴らしいっ! 素晴らしいわ~っ!」
「絵が下手だからアレだけど可愛いでしょ。こういう感じの置いてないですかね」
「この一見無駄な装飾とカラーリング……それが見事にマッチしてファンシーさを際立たせているわっ! こんなの絶対売れるわよ! 作るわっ!」
おお、やっぱり食いついたか。さすがマリリンさん。
確かにフリルとか貴族くらいしか使ってなさそうだしね。知らないけど。
庶民レベルだと無駄な装飾と言われても仕方ない。
「こういうのって『装備品』に出来るもんなんですかね? 『一般服』じゃなくて最低限の防御力がある『軽装』で」
「出来るわよ~。素材が限られそうだし性能がいまいちになっちゃいそうだけどね~」
「性能よりも見た目重視で」
「そうよね! 任せてちょうだい!」
創作意欲が爆発したマリリンさんは急ぎで作ってくれるらしい。
ネルトとポロリンの靴もいいのがなかったので、ついでに製作をお願いした。
今の装備に合うようなかわいいヤツね。
八~九日くらいで出来上がるらしい。
一から作って付与までするのに、そんなもんで出来るのかと。さすがマリリンさん。
「そうそう、ピーちゃん達、ベット湿原に行く用事ないかしら~?」
「少ししたら行こうかと思ってたんですよ。ベット湿原かアルフェト山」
「もし行くのなら、そこに居る蜘蛛系の魔物の″魔篩板″を取って来てくれないかしら~。その分安くできるわよ~」
魔篩板ってのは蜘蛛糸を作る器官らしい。
えっ、じゃあここの服って蜘蛛の糸で作ってるの!? うわぁ聞くんじゃなかった。
聞けば魔装具にする関係で魔物素材の方が付与しやすいらしい。なるほどね。
「あ、マリリンさん、ついでに相談なんですけど」
「ん~、なになに~?」
話すついでにゲームの事も相談してみた。
どうやらアイデアだけ出して、作るのと売るのはお任せっていうのは可能らしい。
特許とかはないっぽいけど、商業ギルドで契約するその内容で、売り上げの何割を貰うとか、どこで販売するだとか、決められるとの事。
契約は魔法で行われ一方的に破棄することは出来ないんだとか。すごいな、そんな魔法あるのか。
リバーシを実際にマリリンさんと打ちながら話す。
「ふむふむ、面白そうね~。でも単純だからすぐ真似されちゃうんじゃないかしら~」
「広まるのはむしろ好都合なんですけどね。だからスタートダッシュだけ出来れば稼げるかなと。あと同じようなボードゲームがいくつかあるんでそれで繋いでもいいですし」
「ピーちゃんさすがね~。やっぱあたしが目をつけただけあるわ~」
特許がないって時点で独占販売は諦めた。
だったらむしろ色んなお店で販売してもらえばゲーム自体が広まるだろうからね。それは私的にも嬉しい。
もちろん稼ぐ目的なので最初に大量にばら撒く感じにしたいけど。
「うん、いいわね。じゃああたしが商業ギルドの担当を紹介してあげるわ~」
「おっ、ありがとうございます、マリリンさん」
「うふふ~じゃあ今から行きましょうか~」
「えっ」
まさか今から行くとは思ってなかった。紹介状だけで終わりかと。
マリリンさんはてきぱきと店をクローズにして「ほら早くいきましょ」とくねくねしている。
私たちは戸惑いながらもマリリンさんの後についていくのだった。
♦
商業ギルドは王都の中央区。いろんなギルドが固まる大通り沿いだ。
ほぼ向かいに冒険者ギルドもある。
マリリンさんのお店も中央区なのでほどよく近い。
広く開けられた入口から入ると、カウンターや商談スペースが並び、商人と思われる人たちが大勢いる。
冒険者ギルドとはまた違った活気だ。
マリリンさんの後に続いて進む私たちの耳には、商人さんたちのヒソヒソ声が入ってくる。
「あのウサギと黒猫……近頃評判の――」
「確か南の森でオークキングを――」
「なんだあの娘、ものすごく可愛いぞ――」
「ダンデリーナ様を超えるやも――」
「おい、あの羊頭……【幻想魔装】のゴンザレスじゃ――」
むせそうになった。
えっ、マリリンさんって本名ゴンザレスなの?
【幻想魔装】って何その二つ名?
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