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第三章 毒娘、色々と出会う
57:新人パーティーですがギルドマスターから呼び出しくらいました
しおりを挟むいかれたメンバーを紹介するぜ!
【毒殺屋】!
【セクシーギャル】!
【ニート(の魔女)】!
以上だ!
はい、ということで私、【毒殺屋】のピーゾンです。
白ウサギ装備に身を包み、魔剣の大鉈を担いだ十歳の美少女。Dランク冒険者です。
「じゃあ候補は南のアルフェト山か、東のベット湿地ですね。ボクは賛成ですよ、ピーゾンさん」
かわいい仕草でそう言うのは【セクシーギャル】のポロリン。
ピンクのノースリーブミニスカチャイナにトンファーという武術スタイル。
超絶美少女の外見を持った十歳の男子。同じくDランク冒険者。
「もぐもぐ」
肯定も否定もせず無表情で食べ続けているのは【ニートの魔女】ネルト。
黒猫のローブと杖を装備した黒髪日本人形のような美少女。こちらはEランク。
以上、我らDランクパーティー【輝く礁域】です。どうぞヨロシク。
昨日は王都セントリオからすこし離れた狩場に遠征しようかという話になり、その情報収集をした。
ついでに【唯一絶対】とかいう固有職ばっかの大手クランと、隣国である帝国の固有職狩りに襲われたりして散々な一日だった。
さらに言えばポロリンには『男湯禁止』という世間からの厳しい洗礼があり、私とネルト以上に散々な一日となった。
もうこれはパーティーホームを手に入れ、風呂を付けるしかあるまい。
最初から私は狙っていたわけだけども。
そして翌日の今日、こうして宿の朝食の席で話し合っているわけだ。
遠征に行くのはいいけどもう少し情報が欲しいところ。
今のところ候補としては幾分か難易度が低そうな南の山と東の湿地。
西の砂漠と北の鉱山はちょっと怖い。こちとら初遠征の新人ですから。
だからギルドの依頼とか受付嬢さんの意見とか聞いてから判断しようとなった。
んじゃ行こうか。ん? あ、ネルトまだ食べるの? おかわり? うん、いつものことだね。
♦
「【輝く礁域】の皆さーん! ちょっと来て下さーい!」
ギルドに入って早々、受付嬢さんから声を掛けられた。
これだけ冒険者が賑わう朝のギルドで、なぜすぐ見つけたし。
……ええ、言わなくても分かりますよ、ウサミミですよね。私の。目立ちますもんね。
私たちは呼ばれるまま依頼ボードも見ずに受付へ。
すると三階のギルドマスター室に行ってくれとの事。
おいおい、ギルドマスターから呼び出しですか?
私とポロリンに緊張が走る。ネルトは無表情のままです。
ともかくトップからの命令とあらば従わざるを得まい。我ら新人冒険者なり。
初めて上がるギルドの三階。どうやらほぼ職員専用のフロアらしい。
私は後ろに二人を引き連れ、ギルドマスター室の扉をノックする。
――トントントン
「【輝く礁域】の三名ですがギルドマスターはいらっしゃいますか」
「おお来たか、入っていいぞ」
と、おばさんのような声がしたので「失礼します」と入る。
中は広めの執務室といった感じで、手前にはローテーブルを挟むようにソファーがある。
奥の執務机にはデスクワークをする男性二人と、立ち上がってこちらに向かう女性。
婚期を逃したキビキビ系キャリアウーマンのような人だ。
温和そうにも見えるが眼鏡越しの目つきは鋭い。
「ハハッ! 本当にウサギとネコだな! 噂通りだ! まぁ座れ」
そう言われて女性の向かいに並んで座る。ポロリンはガチガチだ。
しかし噂って何ですかね。聞きたくないけど気になります。とりあえずウサミミをピコらせておこう。
「じゃあ改めてギルドマスターのリムリラだ」
「Dランクのピーゾンです」
「お、同じくポロリンですっ」
「ん。ネルト。Eランク」
「うむ、【毒殺屋】と【セクシーギャル】と【ニートの魔女】だな。いやはやなんとも奇妙な面子だ」
奇妙言うなし。
「お前らを呼び出したのは二つ……いや三つあってな。まずは昨日の一件だ」
朗らかな印象だったリムリラさんの顔が一気に険しくなる。
あー、それもあって呼び出されたのか。わざわざギルマスから説明とはね。
「【唯一絶対】の幹部の一人、Bランクのベルバトス。それとクランメンバーのCランク、ギャレオ。この二名がお前らを襲った。すでに裏はとれているが相違ないな?」
「はい、でも他に六人……いや、斥候含めて七人いましたよ?」
「そいつらはお前らの報告の通り、帝国の密偵だった。王国の冒険者として登録はないので今は省いておく。そいつらは取り調べ後に国の牢屋行きだろう。管理局にも情報は行っているはずだ」
「じゃあ問題ないです」
固有職狩りの連中は冒険者っぽい恰好をしていたけど、偽装して冒険者ギルドに登録していたという事もないらしい。
単に筋肉ダルマに協力して私たちを狙っていたからギルドに居たって事かな。
まぁ偽装で登録とか出来るのか知らんけど。バレるのかもしれないね。
ともかく今回の報告に、そいつらは無関係だと。
と言うか、筋肉ダルマは幹部でBランクだったのか。
そんな強くはなかったと思うんだけど、やっぱ固有職って優遇されるんだろうか。はたまたクランの力か。
オーフェンの戦闘講習で戦った教官が元Bランクって聞いたけど、あの人より全然戦闘技術ないと思う。
クラマスのミルローゼさんがAランクって言ってたから幹部でBランクというのは妥当なのかもしれないけど。
「うむ、それでその二人に関しては冒険者ギルドから除名。これはすでにクランマスターであるミルローゼにも伝えてある。やった事は重罪なのだが固有職である以上、極刑や犯罪奴隷のようにはならないだろう。が……おそらくもう日の目を見ることはあるまい」
「「うわぁ……」」
スキル研究の実験材料ですね分かります。
牢屋か研究施設か……ろくでもない未来しか見えません。ご愁傷さまです。
「とまぁ、その報告が一つだな。当事者であるお前らは知る権利があるし、一応伝えておく」
「ありがとうございます」
「それで二つ目だがな、お前らに指名依頼をしたいと思う」
「「はっ?」」「?」
指名依頼? なんか急に変な話になったぞ?
あれ、Dランクで指名依頼って受けられるんだっけ?
リムリラさんが言う依頼とはこんな感じだ。
毎年、この時期に『国立職業専門学校』の郊外演習があるらしい。私たちも勧められた学校だね。
入学して一年経った成果を魔物相手にぶつけよう的な目的とか、遠足気分の目的とかあるらしいけど、要は新二学年の生徒たちが王都の外で戦うわけだ。
で、そこの護衛をして欲しいというのが依頼内容。
私たち以外にも何組かが指名を受け、各クラス・各グループの護衛につくらしい。
私たちはその中のSクラスの一部、つまり固有職のグループのうち一つを担当してもらいたいのだとか。
「固有職の生徒に対して固有職の冒険者を当てるのは、アドバイスの側面が強い。生徒に比べ冒険者のほうがスキル成長が早いのだからな。年中魔物と戦っているから当然だが」
アドバイスねぇ。生徒相手に冒険者が。
「生徒にしてみれば誰しも自分の職が不透明な中で、今後の成長の目安や指針になったりするわけだ。他にも職について相談しやすいだとか、万が一自分たちの固有スキルを見られても問題ないとか、理由としては色々とある」
「それを私たちに? 私たちまだ新人ですし、二学年ってことは年上ですよね?」
「そ、そうですよ! それこそ【唯一絶対】の人たちとか……」
「もちろん【唯一絶対】からも出すぞ? と言うかここ数年は【唯一絶対】に任せていた案件でもある。ただここへ来てなぁ……」
あー、幹部を含めた逮捕者が出たと。クランが不安定な状態だと。
クラマスのミルローゼさんも慌ただしいと。数が足りないと。
私は謝りませんよ? 悪いのは向こうだし。
おまけにいきなりこんな依頼まで回されて困ってますし。
「護衛って私たちも戦ったりするんですか? 生徒さんが固有職でも私たちの職は教えたくありませんし、出来れば戦闘方法とかも見せたくないんですけど」
「基本的には生徒たちが魔物の相手をする。危ない場面があればお前らが助けに入る、という事だな」
「生徒の皆さんって魔物と戦った事はあるんですか?」
「すでに都内のダンジョンに演習には行っているから魔物と戦った事がないという生徒はいない。ただ屋外の魔物と戦った者は少ないだろう。だからこそ勝手が違うし、万が一を考える必要があるという事だ」
なるほど。護衛と言うより″お守り″って感じなのかな?
「ん? Sクラスって非戦闘職の固有職も居るんじゃないんですか?」
「居るな。そういう生徒は当然不参加だ。今回の演習に来る生徒は全員が戦闘職だと思っていてくれ」
じゃあとりあえず戦えないって事はないんだね。一安心。
ポロリンとネルトの顔を見て反応を見つつ頷く。
まぁギルマスからの指名依頼だしね。元から断るという選択肢はない。
報酬もいいし、貢献ポイント的にも美味しい。
ただ二日後だっていうから、遠征は出来なさそうだなぁ。
「で、三つ目の要件ってのは何なんです?」
「ああ、これは実際に会ってみての個人的な疑問なんだが……」
そう言ってリムリラさんは一層険しい表情になった。
これまで以上に緊張感のあるお話なんだろうか……。
「その……ポロリンは資料で″男″となっているが、本当なのか? いや、実際見てみて本当かと一層疑問が……どう見ても……」
「本当ですよっ! ボクは男ですっ!」
ポロリンは両手をグーにして胸前に持って行き、立ち上がって顔を真っ赤にして叫ぶ。
もうソレが女の子なんだけどなぁ。せめて内股やめい。
「まじで? チ〇コついてんのか?」
「チ〇コついてるらしいですよ」
「<グリッド>……ん。ちゃんとチ〇コついてる」
「ちょっとおおお!! 何言ってんですか!! ネルトさん覗かないで!!」
リムリラさんは「まじか……」と頭を抱えていた。よほどショックだったのだろう。
「ウサギと猫以上に珍妙生物じゃないか……」そう呟くリムリラさんを後目に私たちは退室した。
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